ゼリージュースがある日常(その2)

作:月より




私は、鷲沢 萌(わしざわ もえ)。中学1年生。お父さんとお母さん、そして妹の唯(ゆい・小学1年生)の4人家族のとある日の出来事です。



萌:ただいま。はぁー・・、なんか今日は宿題がたくさん出されたよぉー。

唯:おかえり、お姉ちゃん!

萌:ただいま。唯はいいね、いつも元気で悩み事がなくて。

唯:唯も悩み事あるよー。お姉ちゃんといっしょで胸がペッタンコなの。はやくお母さんみたいに大きくならないかなぁー・・・。

萌:そうだね、私もペッタンコで・・・って、ほっといてよ!・・・あれ、お母さんは?

唯:いま、ベランダで洗濯物を取り込んでいるよ。

萌:そうなんだぁー。それじゃ、私も手伝おうかな。その前に、何か冷たい飲み物・・・。

萌は冷蔵庫から2Lのウーロン茶を取り出し、コップに移し一気に飲み干した。

唯:ゼリージュースの方が、美味しいのに・・・。

萌:夕食前にゼリージュース飲んじゃ駄目って、この前、お母さんに言われたでしょ。

唯:うーーん・・・。つまんなぁーい。

萌:私はお母さんの洗濯物取り込むの手伝うから、唯はおとなしくしてるのよ。

唯:はぁーい。

萌:お母さん、ただいまー。洗濯物取り込むの、手伝うよ♪

お母さん:あら、萌ちゃん、おかえり。もうちょっとでこっち終わるから、先にお風呂に入ってくれない?

萌:そう?じゃあ、先にお風呂に入るね。

お母さん:あっ、萌ちゃん。あと、お願いがあるのだけど・・・

萌:何?お母さん。

お母さんは、変な笑顔を作りながら、申し訳なさそうに萌に話し始めた。

お母さん:・・・・・ということなの。萌ちゃん、今日だけだから、お願い!ねっ!ねっ!

萌:(少し悩みながら)お母さん、今日だけだからね。ほんと、仕方ないんだから。

萌は、ため息をつきながら、バスルームへ向かった。

お母さん:ごめんね、萌ちゃん。今度の日曜日には、家族みんなでレストランに行くからね!



お母さんは、洗濯物の取り込みが終えると、唯のいるリビングに向かった。

お母さん:唯ちゃん、晩御飯できるまでに、先にお風呂に入ってちょうだい。萌ちゃんも今入ってるから。

唯:うん♪

お母さん:あと、お風呂に入る前にこれ飲みたい?

そう話すと、お母さんは冷蔵庫から中身が青色のペットボトルを手渡した。

唯:お母さん、いいの?ゼリージュース、晩御飯前に飲んじゃいけないんでしょ?

お母さん:今日はいいのよ。唯ちゃんが、いつもお母さんの言いつけを守るから、お母さんがゆるしちゃう。

唯:わーいい!ほんとに?

そう答えると、勢いよく飲みはじめた。

ごきゅ、ごきゅ!

唯:んー、やっぱりおいしいね♪ でも、あんまり冷たくなかったよ。

お母さん:冷蔵庫がもう古いからかしら、最近、冷えなくなってきているみたい。ごめんね。飲み終えたら、お風呂に入ってね。

唯:はーい。

唯が服を脱ぎバスルームに入ると、萌が椅子に腰掛け身体を洗っているところだった。

唯:唯、お母さんにゼリージュースもらっちゃった♪

萌:お母さんから聞いてるよ。唯、体が消えてきているよ。

唯:わっ!ほんとだ。

唯、慌ててお姉ちゃんに駆け寄ってくる。

★☆ ゴツ ☆★ ・・・萌と唯のおでこがぶつかった。

萌&唯:い、いったぁーい!

萌:ゆ、唯、ちゃんと体が消えてからじゃないと駄目だよ。それに慌てなくてもいいから。ほら、泣いてないで、体も消えたみたいだから、お姉ちゃんに入っておいで。ゆっくりだよ。

唯:うん。

唯は泣きながらも、改めて、おでことおでこを重ねた。すると、ジワーっと萌の中に溶け込み出し、首・胴・脚と入っていく。

萌:唯、ゆっくり入ってね。急ぐと気分悪くなるから・・・

唯:(唯は、気持ちいいよぉー)

萌:私が気分悪くなるの!それに唯は特別なんだから。ほら、もう全部溶け込んだみたいだから、唯が数えるんでしょ。

唯:(うん。じゃあ、数えるよぉー! いーち、にぃー、さーん・・・)

萌:(うーん、眠たくなってきた・・・)

萌(唯):・・・ろーく、しぃーち、はぁーち・・・あれ?

唯が「10」数え終える前に・・・すでに10秒経っていた。萌の身体に唯の意識が入った。

萌(唯):まっ、いいか。わーいい、お姉ちゃんのかっらだ、かっらだ♪

萌(唯)は、わくわくしながら身体を洗い流し、湯船に浸かった。

萌(唯):どっきどきの入浴シーンだよぉー♪

・・・と、誰に向かって言ってるのか分からない独り言をしゃべりながら、5分ほどしてお風呂をあがった。

萌(唯):お母さん、唯、お姉ちゃんになったよ!

お母さん:唯ちゃん、お風呂上がってくるの早かったけど、ちゃんと身体洗った?

萌(唯):お姉ちゃんがちゃんと洗ってたよー。あっ、カレーライス♪

お母さん:今日の晩御飯はカレーだよ。レトルトだけどごめんね。

萌(唯):お母さん、お姉ちゃんは食べなくていいの?

お母さん:唯ちゃんが、今、お姉ちゃんでしょ。

萌(唯):あっ、そっか。じゃあ、いただきまーす♪ あれ、お母さんは食べないの?

お母さん:お父さん、今日は帰りが遅くなるんだって。帰ってきてから一緒にたべるから、今日は唯ちゃん一人で食べてね。

萌(唯):うん。

萌(唯)は、20分ほどでカレーライスを食べ終わると、すぐにお姉ちゃんの部屋に向かい、テレビゲームなどして遊んでいたようだが、一人でつまんなかったのか、すぐ寝たようだった。


---------- 3時間後 -----------


お父さん:ただいまー。

お母さん:おかえり。今日は、先にお風呂に入ってくれない? あと、晩御飯なのだけど、カレーでいい? レトルトなのだけど。

お父さん:レトルトって・・・。たしかこの前、スーパーで安かったからたくさん買いだめして、お金余ったとか言ってなかったか?

お母さん:そうなの。買いだめして給料日まで十分だと思ったのだけど、今日、冷蔵庫の中のもの見たら、全部傷んでいたの・・・。

お父さん:冷蔵庫に詰め込み過ぎるからだよ(怒)

お母さん;あの冷蔵庫、萌が生まれてすぐに買ったものだから、もう10年以上経ってるのよ。あの頃は私たちだけの食料分だけでよかったけど、今は家族4人分だから、冷蔵庫の容量が足りないのよ。それにもう寿命ですよ。すぐにでも新しいのに買いなおしたほうがいいのでありません?

お父さん:ま、まあ、傷んでしまったものは仕方がないとしても、お金余っていたのなら、すぐに買いに行けばいいじゃないか。

お母さん:それが・・・

といいながら、手に真新しい洋服を手にして、

お母さん:これ、買っちゃったの。ごめんなさい。

お父さん:・・・わかった。萌と唯はもう寝たのか?

お母さん:この時間だし、寝たみたい。

お父さん:そうか・・・。明日は給料日だし今度の日曜日、電気街に冷蔵庫見に行こうか。
萌と唯も一緒に連れていって・・。最近、どこも連れて行ってないし、あの辺りなら、色々、食べるところもあるだろうし。ところでお前は御飯食べたのか?

お母さん:まだだけど、カレー、一人分しか残ってないから晩御飯抜こうかなと思っているの。こうなったのも私の責任だし、一晩だけだから。

お父さん:うーん、でもなぁー・・・。そうだ、それじゃ、俺と一緒に食べるか。

お母さん:えっ!?・・・ブルーハワイは、まだ残っているけど、いいの?

お父さん:構わないよ。久しぶりに一緒になるのもいいじゃないか。

お母さん:そうね、あなたがそう言うなら。

お父さん:それじゃ、俺は先に風呂は入ってるから。

お父さんはそう言い残すと、バスルームに向かった。

お母さんは、冷蔵庫から青色のペットボトルを取り出すと、そのままバスルームに向かい、服を脱ぐと、中に入っていった。
・・・そして、お父さんの目の前でゼリージュースを飲み干した。

お父さん:こんな事するなんて、何年ぶりだろうか。

お母さん:唯がお腹に出来た頃から、してなかったですね。



二人は少し含み笑いすると、キスをして・・・5分間楽しみながら「一緒」になった。



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唯:お姉ちゃん、お母さんとお父さん、何をして楽しんだの?

萌:今、出演する番じゃないでしょ!いいの、そういう事は目の前のお兄ちゃんが想像してくれるからっ。

唯:わかったぁー。水鉄砲であそんだんだぁー♪

萌:そ、そんなわけないでしょ。

唯:お姉ちゃん、よく「象さんのジョウロ」にお湯をいれて、唯の顔にかけてくれたりして、楽しかったね♪

萌は、唯の手を引っ張ると光速の速さで、どこかに連れて行かれた。

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次の日の朝、萌の通う中学校、1限目前。

萌:・・・というわけで、晩御飯、妹と一緒になって食べたんだよ。朝御飯は、パンとコーヒーでよかったけど。

友達:萌のお母さん、面白いね♪ 私の家で、ブルーハワイのジュースってあまり飲まないけど、「一緒になって食べる」なんてことに使わないよ。

萌:そうだよね。私以外、お父さんもお母さんも、特に妹もみんな変わり者だから。

とため息をついた。

友達:あっ、先生だ。

先生:皆さん、おはようございます。今日は、全員出席してますね。それでは授業を始める前に、昨日出した宿題を集めますので、後ろから前に渡していって下さい。

萌:えっ?宿題なんてあった?

友達:あったよ。萌、自分で言ってるじゃない。1行目に♪

すると、萌は台本?を見直した。

萌:・・・や、やられた。詐欺だよ、これは!!

先生:鷲沢さん、どうしたの?宿題忘れたの?

萌:えっ、あの・・・昨日、ゼリージュースで妹が私になって、晩御飯がなくて・・・。

先生:ゼリージュースを飲んで妹と遊んでいたから、忘れていたのですね。わかりました、放課後に補習を行いますので、忘れないで下さいね。

萌:わ、私は悪くないもん!・・・

友達:そうだよね、萌は悪くないよね。補習忘れないでね♪

萌:ふにゅーーーん。



(終わり)