「さようなら 一話」

作:しんご







  



  

「へえーこれがいまのわたしとはね。」
肩まで癖もなく伸びる黒い髪。
小さな顔にパッチリとした二重の目。
少し長めの黒のスカートに白い半そでのセーラー服。
細くて長い脚に黒いハイソックスを履いて靴は茶色の革靴。
有名なお嬢様学校の制服と、見るからに真面目そうな顔立ちが良く似合っている。
少し小さな背も、この女の可愛さを引き立たせている。
まるで私とは偉い違いだ。
私といえば、髪は茶髪で耳にはピアスをして肌は茶色に焼けて
制服のスカートはパンツがぎりぎり見えないくらいに短い。
いや、前の私のことか。
そう今の私は、鏡に映るこの女。
だって私がこの女の顔を触ろうとすると、伸びる手はこの女の右手が動く。
喋ろうとすると、この女の唇が動く。
声も顔も背も何もかも、私と違うのに動かしているは私。
まったくの別人が、トイレの鏡は一人だけ写っている。
「これがわたしか・・・ふふ・・・・」
この女のちょっと高めの声で私は一人つぶやいた。
数時間前までは、全く知らない他人の体で。













もう、何もかも嫌だった。

家に帰っても楽しくもない。

学校に行ってもつまらない。

自分も他人も、何もかも嫌だった。

なぜ生きなければいけないのだろう。

どうして生きなければならないの。

誰も私を必要としていない。

誰も私を見ていない。

私を見てほしい。

私にかまってほしい。

私に声をかけてほしい。

だから私は彼女たちと同じ事をした。

髪を染めて、勉強もしないで、心にうそをついて恋をして。

でも、心も体も汚れるだけで・・・・・

それでも、気づいてくれた人がいた。

母も父も、私に気づいてくれた。

嬉しかった。

とても嬉しかった。

私がいる理由が見えたから。

でも、そんな両親は私を置いて消えてしまった。













片手に新聞を持つサラリーマン。

ケイタイをいじっているOL。

私と同世代の学生。

いつもと同じ駅のホームの風景。

そして時間通りに入り込んでくる電車。
        :
        :
        :
     どこかに行きたい。

     私の、私を必要としている所に行きたい。



 

「きゃあー!」

「女の子が飛び込んだ!!」









ざわめき声が聞こえる。

目を開けて眼下に広がったのは見たことのある情景だった。

目の前は髪の長いOLがいて、隣には白髪交じりのおじさん。

まるで電車の中のような。

私は何かを持っていた。

「かばん?」

私のカバンではない、茶色の革鞄。

いや、それどころか私の着ている服も違っている。

私は、白いブラウスに赤いリボン、紺のスカートの学校の制服を着ていた。

それが今、私が着ているのは黒いスカーフに白の校章の入った、黒い胸当てのセーラー服。

少し丈の長い黒のスカートから伸びる細い脚に白いソックスに革靴を履いている。

お嬢様学校で知られている高校の制服を私は着ていた。

いやそうじゃない。

肌だって、こんなに白くない。

背もこんなに低くない。

「私じゃない」

そう呟いた声も、私のハスキー声とは違っている。

私の乗った電車は、私がいつも降りる駅のホームへと入りこんでいく。

私の姿を見たい。

どうなっているの。

持っていた他人のカバンをもって私は降りた。

自分の姿を見たくてトイレに行くまで、私は思っていた。



「あの老婆の言ったことは、本当だった。」と。



私があの老婆に知り合ったのは、ほんの数日前のことだった。

私は、その日知り合った男と遊んでいた。

好きでもない。

恋をしたわけでもない。

今日だけでも、数時間だけでもこの男は私を見てくれる。

この世界でたった一人。

例えこの男が私をただのセックスするためだけの道具としかみてなくても・・・・

私はそれで良かった。

一時でも心も体も救われる気がするから。

でも男は、鳴ったケイタイをとるなり私の目の前から去っていった。

涙が頬を濡らす。

あてもなく、ただ歩いた。

前も何も見ないで、何も考えないで私は歩いた。

そして私は出会った。

あの不思議な老婆に。

老婆は言った。


「いいのかい?」

私は言った。

「いい。だから、おねがい。」

老婆は最後にこう聞いた。

「あんたは帰る家族を失うことになるんだよ。それでもいいのかい?」

「家族はもういない。
 あんなの家族でもない。
 両親の保険金目当てだけのハイエナ達。
 あいつらに私と両親の保険金が行くのは嫌だけど・・・・
 でも、あいつらならすぐになくなっちゃう」

「そうかい。じゃあ、あんたは明日死ぬ。そしてあんたは違う人間になる」

老婆は、そう最後言うと姿を消した。









駅の女子トイレに入り、備え付けの鏡に映る私の顔。

「へえーこれがいまのわたしとはね。」

肩まで癖もなく伸びる黒い髪。

小さな顔にパッチリとした二重の目。

少し長めの黒のスカートに白い半そでのセーラー服。

細くて長い脚に黒いハイソックスを履いて靴は茶色の革靴。

有名なお嬢様学校の制服と、見るからに真面目そうな顔立ちが良く似合っている。

少し小さな背も、この女の可愛さを引き立たせている。

まるで私とは偉い違いだ。

私といえば、髪は茶髪で耳にはピアスをして肌は茶色に焼けて

制服のスカートはパンツがぎりぎり見えないくらいに短い。

いや、前の私のことか。

そう今の私は、鏡に映るこの女。

だって私がこの女の顔を触ろうとすると、伸びる手はこの女の右手が動く。

喋ろうとすると、この女の唇が動く。

声も顔も背も何もかも、私と違うのに動かしているは私。

まったくの別人が、トイレの鏡は一人だけ写っている。

「これがわたしか・・・ふふ・・・・」

この女のちょっと高めの声で私は一人つぶやいた。

数時間前までは、全く知らない他人の体で。




 ―これって

自分以外の体で排泄なんて、当然したことがない。

個室に入るとなんだか羞恥心さえ感じる。

「もうこの体は私のものなんだ」

深呼吸して、制服のスカートのフックを外しチャックを下ろす。

白い下着が目に入る。

私とこの女は、容姿も全て違うけど一つだけ共通点があった。

それは、私もこの女も女ということだ。

下着を下ろして、私と同じように排泄する。

この体の女と私が女ということだけしか同じじゃないということが分かった。

排泄し終わりガバッと脚を開いて股間を覗き込んでみる。

「うわぁ・・・・」

とうの昔に失われたシェルピンクがそこには存在している。

私は自分のアソコを思い返す。

サーモンピンクはいやらしく染まり、花びらはひくつかせて快感をせがむ

女芯は、たくさんの男の精液にまみれて成熟していた。

オナニーに欠かせないクリトリスも、まだ薄い皮に覆われていて、たいした膨らみもない。

私はそっと皮をめくり、女豆をむき出しにした。

小さな粒が外気の刺激で、ひくん、と息づいた。

きっとこの女はオナニーなどはしていないのだろう。

ちょっと触れただけでもクリトリスは激しく収縮を繰り返し恐ろしく敏感だ。

私は、いたわるように二本の指で挟みながら優しく揉んでいく。

いつも自分にやっているようにゴシゴシとやったらあまりにも刺激が強い。

「はぁ・・・・ん・・・」

反応が早く、すぐにでもイッてしまいそう。

ふと、セーラー服の膨らみが目に入る。

服越しから片手で掴んでみる。

私よりも大きい・・・

軽くつまむだけで快感がジンジンと下半身に伝わってくる。

自分とさほど変わらない、いやもしかしたら同じ年かもしれないのに若い肉体になったようだ。

この若さと容姿を武器にして多くの男と遊ぶのもいいかもしれない。

自分は今、透き通るような白い肌に知的な美貌とヴァージンピンクのアソコを持っていると思うと、

私は妙に興奮してきてしまい、

「あ・・・・・ん・・・イイ・・」

         :
         :
         :
         :

「ちょっとやばかったかな」

私は自分がした場所に、後悔していた。

でも、運良く声を聞いたものはいなかったらしい。

「汚れてはいないよね」

私は制服を見渡しながら、鏡に自分の姿を写す。

まだ、ドキッとする。

自分ではない女が立っている。

肩まで伸びるストレートロングのつやつやヘアー。

背的にはアンバランスでもいやらしくないくらいの大きめな胸。

おとなしげで黒く澄んだ瞳もおしとやかそうな顔も、清楚そのものだ。

「こんな子が、さっきここの個室で・・・・・なんて誰が思う・・・ふふ・・・だって私が」




私は駅構内の店へと入った。

適当にドーナツを数個、注文しこの女の財布からお金を払う。

他人の財布を勝手に使うことに一瞬、罪悪感を感じたが誰が気がつくのかと

思ったら馬鹿馬鹿しくなる。

この財布はこの女のものだけど、でももうこれは私のよ。

「さあて、調べようかな」

カバンの中は、まるでこの女の真面目さを確認しているようだった。

教科書にノートに筆箱に。

なにも分かるものがない。

と思ったが、カバンの奥にあった生徒手帳は探しているものに他ならなかった。

増川佳枝

この名前がこの女の名前ね。

そして今日から私の名前。

「これから、よろしくね。」

私は、手帳の佳枝の写真に向かってそう言った。

「えーと、住所は・・・・六つ先の駅か」



電車に乗りながら佳枝のケイタイを見ていた。

佳枝とやりとりしている友達とか、それに佳枝自身のメールとか。

これから、私が送ることになるもんね。

急に文字とか変えちゃったりすると不思議がられるし。

でも、なんだか佳枝はおとなしいと言うよりも友達が少ないようだ。

メールの数だってあまりやっていない。

そっちのほうが楽だけどね。

「・・・・・・・」

さっきから、妙な視線が痛いくらい感じる。

反対側に座る三十台半ばあたりのサラリーマンなんかさっきからチラチラと視線を私に向ける。

それもそうね。

今の私は、前の私とは違う。

なんだか、可憐という言葉が実体化したようなもんだし。

なんといっても、この制服を着ているだけでも普通の女の子でも

お嬢様に見えるしまうようなもんだしね。

でも、そんな可憐な女の子が脚を閉じないで座っているんですもんね。

そうだ。

ちょっと遊んであげようかな。

私は立ち上がって、サラリーマンの隣に座る。

一瞬、サラリーマンがこちらを見て驚く表情が目に入った。

どこにでもいるようなそんな男。

私は、横に首を向き

「・・・好きになっちゃいました・・・・」

ちいさなささやく声で言った。

「えっ・・・・」

男は、こっちを向く。

・・・ふふ・・・・

「好きなんです。・・・・私じゃダメですか?」

首をちょっと傾けながら、ちょっと泣き声のような声で喋る。

目的の駅へ電車が入っていく。

男が赤い顔をして何かを言おうと口を開けたその時、

電車のドアが開いた。

「バカ。嘘にきまってるでしょ」

そう言いすてながら私は降りて行った。

増川佳枝と名前の入ったスイカで駅の改札を出る。

一度も降りたこともない駅に、定期で降りることに私は妙な感覚を感じていた。










あとがき

絶対、絶対にこの続きを書きますから^^;
いつも書く書くとか述べて書かない私ですが
この話だけは任せてください。
えーとですね。
次回は、佳枝になった主人公は近親相姦を・・・・
みたいなやばい事を考えております。
待っていてください。
すぐに見せますから。
えーと、実施中アンケートのどの項目に当てはまるのかと言いいますと
考えていません。
と言いますと、この話はアンケートをする以前に書いていた話なので。
なんだか、修正しているときに思ったんですが、これ以前にかいた話に似ていますね。
ごめんなさい。
序章ということでご勘弁願います。