「誕生日の前日」

作:しんご








明日で、もう何年になるのだろう?
私はあと、どれくらい生きなければ行けないのだろう?

真っ白い部屋で私は毎日毎日、白い天井を見ているだけ。
私と同じ年の子は、学校で勉強をする時間に私はただ寝ているだけ。
名前もしらない人たちに、一歩でも外に出れば見ることが出来るのに
私が見た人は白衣をきた人と家族だけ。
そう、この5年間私が見た人物はみんな知っている人。
毎日毎日ただ漠然と生きているだけだった。
明日も分からない日に私が考えることは自分の死のことだけ。

死んだらみんな泣いてくれるのだろうかな?

もうずいぶん前、私が小学生の頃大好きだったおばあちゃんが亡くなった。
私も一つ上のお姉ちゃんも、泣いていた。
でも、お母さんは涙を見せてはいなかった。
それだけじゃなく他の大人たちも頬に涙が落ちることも無かった。
あの時は、なぜだろうと感じた。

「みんなは、悲しくないの?」と。

でも、今ならわかる気がする。
きっと大人たちは、もう悲しみが込み上げては来なかったのだろう。
もしも、昨日まで元気だったおばあちゃんが突然死んだらきっとみんな悲しみに
くれていたに違いない。
でも、おばあちゃんは癌と宣告されてずっと闘病生活だった。
おばあちゃんは医者の宣言した期日よりもはるかに長く生きた。
きっと医者の宣告を聞いたときは悲しんだのだろう。
でも、決して口には出さなくても、みんな思っていたに違いない。

いつ死ぬのかと。

だからこそ、おばあちゃんのお葬式に涙を見せる親族はいなかった。
私も、おばあちゃんと同じ。

私も、あと何日生きられるのかもわからない。
みんなは涙を流してくれるだろうか?
それとも、もうおばあちゃんのときと同じで流す涙はもうないのかな。

明日は、私の誕生日。
もう、最後の誕生日になる。
もう、私には来年は誕生日が来ない。
もう、私はこの部屋から出ることはない。
だって分かる。
自分の体だから。

それに、急に頻繁に来るようになった家族や親戚。
誰だって分かるじゃないか。
もう、私には残された時間は少ないんだって。

それでも私は生きたい。
まだ生きていたい。
だってまだ死ねないよ。
やりたい事がいっぱいあるのに。

学校にいって友達と笑って楽しく喋りたい。
それに恋もしたこともない。
それなのに・・・・・
なんで私なの。
なんで私が死ななければいけないの。
私がそんなに悪いことをした?
私の何がいけないの?
他の誰と違うと言うの?



今日、小学校の頃仲のよかった友達が来てくれた。
それも、二年ぶりに。
たぶん、いや絶対に母が頼んだのだろう。
みんな学校帰りに寄ったため高校の制服を着ていた。
私は高校に進学できないので制服を着ているみんなが羨ましかった。
来てくれた友達の中に、ともちゃんがいた。
ともちゃん、藤井智美。
仲のよかった友達の一人で家が近所ということで一緒に登校していた。


「ともちゃん、その制服って前渋高校だよね」

「うん、そうだよ」


白いブラウスに、胸に赤いリボン。
紺に白いチェックのプリーツスカート。
紺のブレザーに学校の校章のバッチ。
スカートからすらりと伸びる脚。
茶色の革靴に、紺色の校章が入ったソックス。
背中には学校指定の四角い茶色の革鞄。


「私もいきたかったな。でも、私じゃ無理か。ともちゃん頭いいんだね」

「えっ、そんなことないよ。普通だよ」


ともちゃんは、首を横に振る。


「智美は、頭よかったよ。中学で一番を争ってたもんね。秋山君と」

他に来ていた友達の一人が言った。


「えっ秋山君って、小学校いっしょだったあの秋山君?」

「そう、あの秋山君。それに、智美と秋山君は今、付き合っているんだよね」

「えっ、そうなの、智美ちゃん?」

「・・・・・うん」

「だって、智美いつも学校も一緒に秋山君と通っているもんね。秋山くんの家に朝迎えに行って」

「・・・・・そうなんだ」



でも、頭にはともちゃんのことしか考えていなかった。
ともちゃんと、秋山君が付き合っている。
秋山君。
私の初恋の人。
初恋というか、今まで秋山君しか好きになったことがない。
小学校の五年で入院生活になった私は、それから同世代の男の子に出会ってない。

こんなにも、みんな楽しんで生きているのに。
どうして私だけが・・・・・・
私だってまだ生きたいのに。
私だってともちゃんのように、楽しみたいのに。
明日は、私の最後の誕生日





目が覚めたら、私は病室ではない部屋にいた。








あとがき

これで終わりじゃないですよ。
だから、怒らないで下さいね。
なぜ分けたのか?
それは、二つのエンディングを書きたかったからです。
一つは、普通のエンディング。
もう一つは、ダークもの。
ストーリー的に大体みなさんもご想像できると思いますが、ぜひ見てください。
では、最後までこんな作品に付き合ってもらってありがとうございました。
お分かりになると思いますが、これはODものです。