「Emotion」 

 作:しんご








かつて人間が、空想の中だけで描いていたロボット。

映画や小説の中だけだった、ロボットが現実社会に普及した世界。

それは、まさに人類にとって革命的なものであった。

人間が、出来ないような事を正確に行うロボット。

人間が嫌がることを、代わりに行うロボット。

まさに人間がまた奴隷を手にした事と同じであった。

黒人の奴隷を、白人は「ものを言う道具」と皮肉った言葉で表した。

しかし、人間にとってのロボットは決して反抗しない道具である。









5歳になった小さな女の子とその両親。

ここに暮らす人間。

支配権をもつ所有者。

私は、半年前に家庭用のロボットとしてこの家に購入された。

この人たちの為に、人間の為の機械。

それが、ロボットの使命。

でも、人間について私はまだ何も知らない。

今でもまだわからない。

人間はロボットがないものを持っているらしい。

でも、それがなんだか分からない。









「オクサマ、イッテラッシャイマセ。」

今日もまたお嬢様を見ることもなく会社へとお出かけになった。

今日は、いつもより急いだ様子だった。

奥様の脱がれたお洋服を片付けるためお部屋に行くと、

案の定、脱がれたお洋服は飛び散って

急がれてお化粧した様子を示すようにドレッサーの上もグチャグチャになっている。

なぜ、人間は肌をかくすのだろう?

奥様がさっきまで着られていた・・・・・・・



「サーラ、どうしてママの服着ているの?」

「コレハ・・・・・・・」

(人間がなぜ服をきるのか分からなかった。
 なんで、ロボットは着ないのか分からなかった。
 だから、私は・・・・・・・)




「綾香!」

奥様は、顔を真っ赤にしてお嬢様の頬を手で叩く。

「ママ、ごめんなさい。ごめんなさい。」

お嬢様の目からは、涙が落ち声の波長は高くなる。

泣かれるお嬢様に、それでも奥様は手をあげる。  

(なぜ、奥様は顔を色を変えているのか?
 なぜ、謝罪するお嬢様にまだ苦しみを与えるのか?
 わからない。わからない。なぜ?)

「オクサマ、オジョウサマガ、ナカレテイマス。」

人間が、命令したわけではない。
でも、私の中で命令が出た。
止めろと。

「何をするの。関係ないでしょ、ロボットの分際で。人間に歯向かうつもりなの!」



・・・・・人間に歯向かうつもりなの・・・・・・



そうだ。

人間に対して、反抗してはいけない。

人間に抵抗してはいけない。

「モウシワケアリマセン。」

(人間に歯向かってはいけない。
 そのことは、理解できる。
 でも、なぜ奥様はお嬢様に危害を加えるのかは分からない。
 わからない・・・・・・・)




ある日の深夜。

物音がしたため、私は二階へと向かった。

奥様と旦那様の寝室を通りかかると声が聞こえる。

「ああ・・・いい・・・」

「あ、あああぁつ!」

「も、もう、許して」

旦那様と奥様の声?

許して?

何かある。

誰かに脅されている?

奥様と旦那様に危険が迫っている・・・・

「ドウシマシタカ。」

部屋にいたのは、全裸の奥様と旦那様がいるだけで誰もいなかった。

「サーラ!何で入ってくるのよ!」

「ワタシハ、ダンナサマトオクサマニ、キケンガセマッテキテイルト・・・・」

「まあまあ、サーらは知らなかったんだし。サーラ、大丈夫だ。何もない。

 いいか?記憶しておくように。これは、我々にとって危険なことではない。

 だから、君が部屋に入ってこなくてもいいんだ。これは、・・・・・・」

「あなた、ロボットに言っても分からないわよ。サーラ、出て行きなさい。」

「ワカリマシタ。」



(ロボットにいても分からない・・・・・・
 そう、私には分からない。
 人間は服を着るものではないのか?
 お風呂に入り、体の汚れを落とす以外は着るものではなかったのか?
 聞こえたあの言葉は、なんで発していたのか?
 分からない。
 分からない。
 なんでなんだろう?
 どうしてなんだろう?

 知りたい。 
 分かりたい。
 でも、ロボットの私には分からない・・・・・・)




数日後




最後まで奥様は、叫んでいた。

「ワタシハ、ニンゲンナノヨ。

 ワタシハ、ロッボットジャナイ。

 ワタシノカラダヲカエシテ。

 ワタシヲカエシテ。」

気の毒の奥様・・・・・

「ふふふ・・・・。」

あれは、昨日の事だった。



「サーラ、なんで言われたことをしなかったのよ!」

「ワタシハ、オクサマニイワレテオリマセン。」

「何それは?ロボットの分際で人間に歯向かうつもり!」

「イエ。デモ、イワレテオリマセン。」

「もういい。あんたみたいのロボットは、捨てるわ。
 まったく。この役立たず。」

(なんで、私が捨てられないといけないの?

 私は、いわれた通りにやってきたのに。

 なんで、奥様は私を捨てるというのか?

 捨てる、イコール廃棄。

 それは、どういうこと?

 私は、ここにいられないと言うこと。

 もう、働かなくていいということ?

 でも、もうお嬢様にあえないということ?

      :
      :
      : 

 わからない。

 わからない。

 人間って、本当に分からない。)








「それで、突然ロボットが光を放ち倒れたんですか?」

「はい。それで、再起動させましたら、あんなことを言い出し始めました。
 私は、人間よ。体を、私を返して。それに、自分は私だと言うです。
 まったく、怖いですわ。」

「本当に、この度は我が社のロボットがご迷惑をおかけしました。
 後日、新たなロボットをお送りいたしますので。」

そう言うと、業者の人間は奥様を連れて行った。

「ふふふ。奥様、御機嫌よう。どう、そっくりだったでしょ。」

私は、奥様がつれていかれる姿を見ながら小さく呟いた。

「ママ、サーラどこに行くの?戻ってくる?」

「おじょ・・・・綾香、サーラは何処にもいかないわよ。」

私は、お嬢様を優しく抱きしめた。

今ならわかる。

私になかったもの。

ロボットになくて、人間にあるものが・・・・・・・



「ああ〜い、い・・・・・・」

自分でも、どうしてこんな声が出てしまうんだろうと思ってしまう。

旦那様は私の上で腰を動かしている。

ペニスを私の下半身に挿入させて。

いつもの表情とは違う顔をしている。

どこか苦しいような、でもそうでないような。

でも、彼を気にかける余裕がない。

私のこの感じるものはなんだろう。

「あ・・・・ああっ!」

言葉が勝手に出る。

どうにか、なっちゃいそう。

艶かしい私の言葉。

「あ、あぁん、気持ちいい!」






あとがき

人間は、感情の生き物ですよね。
でも、ロボットはそうではなく論理に基づいて行動するのかなと思います。
感情は決して、説明できないものですよね。
えーと、Hは感情ではなく本能ですけど・・・・・・
生き物ではないロボットは、本能もないかと思ったので。