Ubiquitous Fantasy

作:夏目彩香(2003年3月21日初公開)




時間があったらなんて、またすぐに書き始めちゃいました。隆くんが萌ちゃんに取り憑いていることがわかって、萌ちゃんになりきってもらう実験(私が勝手にそう決めたんです)を始めることにしました。隆くんに頑張って萌ちゃんの記憶を読み取れるようにしてもらおうと思ったのですが、これが大変でした。

私「じゃあ、契約成立。まずは萌ちゃんになりきる訓練をしましょうね」
どうやったらいいのかも知らないけれど、とりあえず言ってみました。
三枝萌(by杉本隆)「わかったぜ」
こんなんだと先が思いやられます。
私「わかったぜじゃないでしょ」
そう言われた彼女は目を細めて集中してから口を開きました。
三枝萌(by杉本隆)「わかったわ。彩香」
ちょと色っぽいポーズをとりながらからかうようにして萌が言いました。
私「そうそう。その調子よ。まずは、もっとそれらしくしてもらうために、隆ってことは当分忘れてくれる?」
私の唐突な言葉に戸惑ったような表情をしましたが……
三枝萌(by杉本隆)「そんなことできるかよ。やっぱ俺は俺なんだからさぁ」
自信のなさそうな彼女に、私はちょっと怒ったように言ってあげました。
私「駄目よ、そんな弱気になっちゃ。あなたならできるって。自信持ちなさいよ」
彼女はわかったのか、私の目を見ながら言いました。
三枝萌(by杉本隆)「わかったよ。彩香の言葉を聞いているとできそうな気がしてきたよ」
私「そうでしょ。まずは言葉遣い、それに仕草に慣れなくちゃね」
三枝萌(by杉本隆)「で、言葉なんだけど。萌の話し方って知ってるのか?」
そう言えば、私は萌ちゃんの普通の姿を知らなかったのに気づきました。
私「私が知ってるわけないでしょ。その体が覚えているんじゃないの?集中しなさいよ。あなたは三枝萌、萌なんだって思いこんでみなさいって。」
私はそう言いながら背中を軽く叩きました。

まぁ、言葉遣いはそのうちなんとかなるとして、まずは女性的な仕草に慣れさせることにしました。萌ちゃんに私の部屋にある椅子に座るよう命令しました。ベッドの上から腰を起こして、椅子に座ったのですが、その座り方のだらしないことったら見てられなくなるくらいでした。

私「ちゃんと座りなさいって。腰を背もたれの置くまで持ってきて、背筋をぴっと伸ばすの」
三枝萌(by杉本隆)「あぁ。こうか?」
そう言うと彼女は背筋を伸ばし始めました。
私「そうそう。でね。こうか?じゃないでしょ。こう?でいいの」
三枝萌(by杉本隆)「わかったよ。うるさいんだから彩香は……」
そこまでいいかけると私が反論にでました。
私「馴れ馴れしいわね。萌ちゃんなら馴れ馴れしくても構わないけれど、隆だったら嫌だからね。ちゃんとやってちょうだい!」
三枝萌(by杉本隆)「わかったわ。彩香。これからは失敗しないように頑張ります」
ようやくわかったみたいで、たぶん萌ちゃんのような口調をようやく使ってくれました。
私「そうだよ。萌の記憶をよ〜く思い出すのよ」
わけのわからない私の注文に戸惑うことも無く、これからはやってくれるものと思いました。
三枝萌(by杉本隆)「わかってるって。こうやって話すのも恥ずかしくてしょうがないんだから。彩香にはわからないでしょうけど」
私「じゃあ、椅子の上にちゃんと座ってちょうだい。手をしっかり揃えて」
三枝萌(by杉本隆)「うん、彩香。こうかしら?」
きれいな両手を重ねてだんだんと姿が整ってきました。
私「そうよ。その調子。だんだんそれらしくなってきたわね」
三枝萌(by杉本隆)「当たり前じゃないの。萌なんだから当然でしょ」
彼女はようやく軌道に乗ってきたよう。
私「それじゃ、そのまま集中して。萌ちゃんの記憶を引き出して来て。言葉遣いから立ち振る舞いのしかた、趣味から友達のこと。全部思い出すのよ」
三枝萌(by杉本隆)「今やってるところよ。彩香、私をこの部屋で一人にしてくれる?準備ができたら呼ぶから」
ようやく素直になってくれたよう。もうすぐ萌ちゃんになりきった隆が見られるのでしょう。
私「わかった。頑張ってね。私は居間でテレビでも見てるから。部屋の中にあるものは自由に使ってね」
そう言って私は私の部屋に彼女を一人残して居間へ行きました。

居間でテレビを見はじめてから時計の針がすでに1時間ぐらい経ちました。私の部屋の中では萌ちゃんなりきり実験のために隆くんが集中して頑張っていることでしょう。私はまだかまだかと待っているのですが、彼女はなかなか出てきません。まだ萌ちゃんの体に慣れていないということもあるだろうけど、記憶を取り出すのにも慣れていないのでしょう。

それにしても、世の中には不思議な技術があるものです。TSアプリだなんて、もうすでに開発されているんですね。それを使って自由に人に取り憑くことができたたら世の中おかしなことになりそうだもの。悪い人に使われない限りはいいんだろうけどね。今ままでに起こった出来事を考えるだけでも数々の疑問と期待感を感じずにはいられませんでした。

そんなことを考えている時に私の部屋からノックする音が聞こえてきました。どうやら私の前に出てくる準備ができたようです。私が部屋のドアを開けるとそこにはさっきまでとは違って私の服を着た萌ちゃんが立っていました。

ピンクのワンピースに着替えて、さっきよりも大人っぽい雰囲気のメイク。薄いピンクのマニキュアをつけて、足下には縞模様のストッキングが見えます。茶色い長い髪を振り上げて私の方にお辞儀をしてくる姿は女の子の姿そのものでした。

三枝萌「彩香。この服借りちゃったけど、いいかな?」
すっかりと落ち着いた声の出し方、萌の記憶を全て引き出せたようです。
私「いいわよ。自由に使っていいから」
三枝萌「よかった。それに、実は下着も借りちゃったんだけど……ゴメンね」
顔を少しだけうつむきながら、萌は申し訳なさそうに私の方を見て言いました。
私「下着まで?ん〜。しょうがないんだから。萌ったら」
本当はちょっと嫌なんだけれど、この際仕方のないことでした。
三枝萌「怒ってない?」
私「別に?怒ってないって。」
三枝萌「そっか。実は下着を濡らしちゃってね」
まさかですが、萌ちゃんの快感でも感じていたということなのかな?そんなことがわからないように、私は冷静に言いました。
私「えっ? じゃあ、洗わなくちゃ」
萌は濡れた下着を私に差し出しながら言いました。
三枝萌「女の子ってきもちいいね」
私「……」
私は呆れて声をかけることができなくなりました。

とりあえず、気を取り直すことにしました。萌ちゃんになりきるための過程で起きたことだから仕方のないことだって割り切って考えるようにしました。この後はいよいよ萌の友達に会うことにします。萌の携帯電話には都合がいいことに顔写真付きの電話番号があったので、友達の名前もすぐに判明しました。

私を紹介するってことにして野宮優子(のみやゆうこ)を誘ってでかけることにしたのです。携帯電話にメールを送るとすぐに返事が返ってきて、午後6時に駅で待ち合わせをすることになりました。野宮優子に会ってからのひとときは更に楽しいものになったんです。その話は時間があるときにまた書きますね。







 

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