リトルガールフレンド

作:夏目彩香(2004年6月1日初公開)


 


彼:「心の準備はできてるかい?」

そう言うと彼女は意を決したような目を彼に向けていた。そして、彼女が先にベッドの中に入っていくと、彼も彼女の横に並ぶようにして入っていった。

彼:「じゃあ、電気消すよ」

彼がリモコンで電気を落とすと、暗くなった部屋の中で二人の緊張感が増していた。どうやらこれから夜のお務めがはじまるらしい。彼は彼女のぬくもりを求めてゆっくりと動いて行く。そして、彼の肌が彼女の肌に触れあうと、瞬間的に電気が通っていくような感覚を覚えたようだ。どうやら二人が一緒に寝るのははじめてのことのようだ。

ここはホテルの一室のようにも思えるが、ここは正真正銘の彼の寝室。独身貴族とはよく言ったもので、都心の高層マンションの最上階が彼の家だった。もちろん数億はくだらない代物なので、彼の正体がどんなものかは想像できるか知らない。こんなにも豪華な部屋に住んでいるにも関わらず、基本的に彼がつきあっている女性はいない。だからこそなのか、今日の女性はきっと特別な人に違いないのだ。

暗くてよく見えないが、お互いの顔が目の前にあるのを感じる。彼がゆっくりと彼女の着ているものをはがしていくが、彼女はそれに抵抗すること無くしっかりと受け取っている。彼女のプルンとしたつやのある肌をさすっていくと、ちょっと伸びた手の爪で傷つけてしまわないか心配になるくらいだ。

彼は慎重に彼女が着ているキャミソールワンピースを脱がしていった。これで彼女が身につけているもの残り2つ。彼はすでに上半身は裸だったのため、トランクスを一枚穿いているだけ。さっきよりも肌の密着度が高くなったところで、お互いの体が更にきつく抱き合って行く。

彼の大きなものが隠されたトランクスと彼女の秘部が隠されているフェミニンナショーツが押し合わされ、ぶつかり合いながら生地が濡れはじめていた。一方の、上半身では彼女のボリューム感のある胸が彼の鉄板のような胸にぶつかり合っていた。そして、お互いの顔を更に近づけて柔らかい唇と堅い唇が一つに結ばれていたのだ。歯の間から下を絡めてのディープキスが二人の興奮を更に高めて行ったのだ。

彼女が彼の家にやって来たのはちょうど二時間前のこと、高級イタリアンで食事を済ませたあと、ここで飲み直しをするためにやって来た。軽くビールで乾杯を済ませると彼女はシャワーを浴びて今のような状況になったのだ。彼女の名前は水梨清花(みずなしさやか)、彼とはつい一週間前に出会ったばかりだ。

とあるパーティー会場で知り合ってから今日が初めてのデートだった。容姿端麗だがおとなしめの性格からパーティーではあまり落ち着くことができなかった。そんな中で優しく接してくれたのが彼こと明野輝久(あけのてるひさ)だった。パーティー会場では特別に好意を持ったというわけでは無いが、1度くらいはと誘いに乗ることにしたのだ。

初めてのデートで初めて結ばれるというのは、ちょっと早すぎるような気もする。お互いにその気になっているのだからそれはそれでよいことだろう。今日のデートのために清花は胸元がちょっと大きめに開いた白いワンピースを着ていた。

輝久と待ち合わせ場所で会った時には、9cmはあろうかと思うピンクのヒールは150cmほどの彼女をスラリと見せ彼を魅了していた。白いワンピースには彼女の肩を少し越えるくらいまで伸びている黒髪が鮮やかに映っていた。もちろん高級イタリアンでもこの二人が注目を浴びていて、特に清花の方にはスポットライトが浴びているかのようなオーラを発していた。デートの前には無かったが、高級イタリアンに来る途中で彼にせがんで買ってもらった銀のネックレスが胸元に揺れていた。
輝久が常連の店だけに店員も初めて連れてくる美しいお客さんにちょっと戸惑っていたようだ。普段は会社の用事を済ませるために利用してもらうので、まさに相手が違っていた。そして、清花は常に微笑みを常に称えながら、輝久と食事を楽しんでいたようだ。

暗い中で二人の世界に入ってしまうと、周囲のものが気にならなくなっていた。輝久は普段なら落ち着いた行動を取るのだが、唇から始まったキスも今は清花の体を嘗め回している。すっかり落ち着きが無くなっていた輝久がそこにいた。清花も輝久の行為を受け入れ、自分が感じたことの無いくらいに気持ちの良さを手に入れていたようだ。輝久はトランクスを脱ぎ捨て、清花は自ら肌を守るブラとショーツを脱いでしまった。もちろん輝久の舌は清花の大事な部分まで直に触れていった。

そして、輝久が大きくなった自分のものを清花の中に入れていくと、清花の動きは一層落ち着かないものとなっていた。清花は自分の中に入ってくる輝久を拒むわけでも無く、徐々に奥へ奥へと迫ってきていることもわかる。

清花:「あん。や・さ・し・く」

輝久の入れ方が清花にとってちょっと痛かったようだ。輝久はゆっくりと揺すりながら挿入していく。ここまで来たら最後までという思いが二人にはあるのだろう。輝久は腰を振りながら大きくなったものを奥まで入れて行く。奥の方にしっかりと収まると清花が中から押しつけてくるような感覚を輝久は覚えていた。前後に揺らすたびに清花は喘ぎ声をあげていた。

清花:「んっ……んんっ……ん、ん、んっ……気持ちいいんっ……」

輝久:「うん……僕も……気持ちいいよ……じゃあ、そろそろいいかな?」

清花:「えっ……もっと……気持ちよくさせてから……」

輝久:「……じゃあ……」

清花:「ひんっ!……んっ……ん……もう駄目」

輝久:「……じゃあ、行くよ……」

そう言うと、輝久の中に溜めこんであったものが清花の中へと放出された。全て出し切ると二人は全身の力が一気に抜けてぐったりとしてしまった。そして、そのまま二人は深い眠りに陥っていった。

カーテンを開くと太陽の光が部屋の中へと注がれる。輝久は窓の外を眺めながら体を伸ばしていた。寝室のベッドの上では清花がまだ静かに眠っている。輝久の方が目覚めが早かったため隣の部屋で大きく深呼吸をしながら、軽く体を動かしていた。いつに無くすがすがしい朝を迎えて気持ちのよい目覚めとなっているようだ。

朝日を浴びた後、清花が眠る寝室に戻ると、ベッドの中に再び潜り込んだ。さっきまで自分が寝ていたぬくもりが少し残っていて、清花の体を抱えるようにしてみせる。輝久の体の中に清花がちょうどくるまれているような感じになっていた。

輝久:「おい清花。そろそろ起きないか」

輝久は優しい声を出しながら、清花を揺り動かしている。清花の体を隠す物は上から掛けている毛布と輝久の体だけだった。清花の目がゆっくりと開いてくる。まだ意識がはっきりしていないのか、輝久が抱きついていることにまだ気づいていないのかも知れない。

清花:「あっ、輝久」

清花の脳波が輝久の表情をとらえること数十秒。じっと見つめて来る輝久の表情はとてもさわやかだった。さらっとした髪を手でかき上げると、二人の朝がやって来たことを感じた。

輝久:「ようやく起きたな。まだ寝ぼけている表情も可愛いよな」

そういうと輝久は清花の鼻を軽くつねって手を離した。目の前にいる清花を見つめながら、さっとベッドの中から出て行き窓の方へと歩いて行った。取り残された清花は毛布を使って無防備になった体をさっと隠した。

輝久:「そんなに照れなくてもいいだろ。恥ずかしがる関係でも無いんだから」

清花:「だって、カーテン開けたら見られるでしょ」

毛布にくるまった清花がそういうと輝久は軽く笑いながら言った。

輝久:「おい、ここは高層マンションだよ。誰も見えやしないって」

そういいながら輝久が寝室のカーテンを開けると清花には眩しいばかりの光が注がれて来た。まるで映画でよく見る天国からの光のようだった。

輝久は寝室の隅にある清花の白いショルダーバックを手に取り、中から携帯用の化粧ポーチを出した。そして、その中から細長い小瓶を取り出すと、指の間に挟んで小瓶を太陽の光に浴びさせて見せた。

輝久:「おはようございます。清花さん」

清花がベッドの中にいるにも関わらず輝久は小瓶に向かって話掛けていた。小瓶をよくみると小さくなった人の姿、それも裸の姿が納められているようだ。まるで人形のように見えるがよく見ると人間のようにも見える。

輝久:「こんな小瓶ができるとは僕も知りませんでしたよ。清花さんのような人に実験台になってもらえるなんて、僕は運にも恵まれていたのかな」

輝久は後ろを振り返り小瓶をベッドの中にいる清花に向かって軽くトスをするような感じで投げた。清花がその小瓶を受け止めると、今度は清花は輝久に向かって一言口に出した。

清花:「あの。もういいですか」

清花にそう聞かれた輝久はすぐに応えた。

輝久:「あっ、いいよ。楽にしてよ」

そういうと清花はニヤリとした表情で小瓶の中を見始めた。さっきとは違ってなんだかだらしない格好になった。

清花:「先輩。この小瓶ってすごいもんですねぇ。未だに清花さんの体になってるなんて信じられません」

輝久:「でも、すっかり清花になりきっちゃったよね。昨日はなるべくそのことを考えないようにしていたから、清花と一緒にデートしていた気分にさせてくれたよ。もちろん、夜のお務めもしっかりできたし、ありがとうな」

清花:「いいえ、こちらこそ。ついさっきまで自分はすっかり大原清花だって完全になりきってました。先輩に自分の意識出さないように止められてましたからね。これはこれでいい体験でした」

にやついた表情で話をする清花は起きるまでとは全くの別人のようだった。それに清花が輝久のことを先輩と言うのもおかしな話で、これには何かがあるらしい。輝久は清花の持っている小瓶に近づきながら、中に向かって更に話しをかけ始めた。

輝久:「いやぁ。こんなに小さなところに閉じこめられちゃって、気分はどうですか?ここにもう一人清花さんがいるんですが、本当に区別がつかないでしょう。小瓶の中にいる人に変身できるという不思議な小瓶、括弧試作品です。小瓶の中って快適なんですか?」

薄笑いを浮かべながら輝久は中にいる小さな人影に話しかけている。中にいる小さな人はどうやら本物の清花のようだ。中にいる清花は抵抗する力も無いのか、じっと二人を睨んで見ているだけだった。その表情には疲れが浮かんでいるのが目に取るようにわかった。輝久が言葉を続ける。

輝久:「かなりお疲れのようですね。この小瓶の中に閉じこめられている間は、何も食べていないのと同じ状態ですからね。同期を取らないと生命維持もできないんだからひ弱なものです。ちゃんと生きていて欲しいので今から同期の実験をしてみますね」

小瓶の中にいる清花は目を見開きながら何かを訴えてきているかのようだった。

輝久:「じゃあ、これから同期してあげます。同期をすると外にいる清花さんと同じ体の状態になります。つまり小瓶の外にいる方が生きるってことに優先されるわけです」

そこまで話したところで輝久は、さっきの化粧ポーチの中からヴィヴィッドワインのリップスティックを取り出した。それを手にした清花は自分の唇にゆっくりと線を描き始めた。きれいに紅い線が唇に入った。これでどうやら準備は完了したようだ。

輝久:「どういうことかわかりにくいから、リップスティックを塗っておくからね。小瓶の中の君はスッピンのままだからリップなんて塗ってないだろう。まだ試したことは無いけれど大丈夫なはずさ、じゃあ同期始めてみてよ」

輝久がそう言うと清花は小瓶を左手で包み込みながら、頭の中で「同期」をするように念じた。清花がゆっくりと左手を開くと小瓶の中には唇が紅く塗られた清花の姿が現れた。そして、さっきよりも顔つきもよく元気になっているようだった。

清花:「先輩。成功しましたね。試作品の段階でこんなに使えるとは僕も正直信じていませんでした」

清花の可愛らしい手のひらに載せられている小瓶。その小瓶を見つめながら、輝久はなんだか嬉しそうな表情を浮かべていた。輝久が小瓶を手に取り、ニヤッとした表情で話をしてみせる。

輝久:「清花さん。元気になってくれたようですね。僕としてもこれからの実験もありますので、嬉しい限りです。左手で小瓶を包み込みながら同期の念を入れるだけで同期ができるようにプログラムされてることが確認されました。これでとりあえずの実験項目は変身解除を残すのみ、それはシャワーを浴びてから実験してみることにしますね。ちょっとここでお待ち下さい」

そういうと小瓶をぬくもりが残るベッドの上に置きざりにしたまま、二人は寝室から出て行った。

寝室に残された小瓶の中にも周りの音は聞こえてくる。小さくされた本物の清花はシャワーの音が聞こえているのに気づいた。そして、そこから聞こえる男と女が絡み合っている声も聞こえてしまう。寝室のドアは開きっぱなしにされているので、そんな音も聞こえてしまうのだ。清花にとっては悪夢のような時間が過ぎて行く、そうは言っても小瓶の中から抜け出すことは絶対にできなかった。

そして、シャワーを浴びて来た二人が戻って来た。本物の清花はシャワーを浴びた偽の清花を見て、本当の自分としか言いようが無いことに愕然としていた。この小瓶の中にいる以上、誰にもこのことを伝えることができない。しかも、小瓶の中の自分物に変身してしまえば本物の自分が助かることなんて皆無に等しかった。二人で一緒にシャワーを浴びていたらしく、偽の清花はまた清花らしく振る舞っていた。

寝室に戻って来た時には二人とも白いバスローブに身を包ませていた。清花は水分が蓄えられた長い髪を振り乱していた。輝久の短い髪は軽くドライしただけですっかり乾いているようだ。寝室に置かれている時計はさっきから長針の数字を1つだけ進めていたところ。シャワーだけでも1時間とは優雅な時間を過ごしていた。この優雅な時間は本物の清花にとっては地獄のような長さだったが、二人は全然気にしていないようだ。

輝久:「じゃあ、これから変身解除の実験を始めますね。さっきは左手でしたが、今度は右手で包み込んで、頭の中で「解除」って念じるだけです。簡単でしょ」

小瓶の中ではどうやら本物の清花が何かをしゃべっているようだが、聞こえて来ない。

清花:「清花さん、何かしゃべってるみたいだけど、こっちには聞こえないのよ。残念ねぇ。聞こえるなら聞いてあげたっていいのに」

不敵な笑みを浮かべるのは偽の清花、お姉様のような迫力に圧倒させられてしまいそうだった。

輝久:「小瓶の中からはどんなに大声を出しても聞こえないけど、中には外の声は全て聞こえるようになってるはずだよ。それを実感してるんだろうね。あとで入れてもらおうかな。はっ、ははは」
輝久は小瓶の中の清花に対してあざ笑っていた。

清花:「それにしても残念だなぁ。せっかく私ったらこんな美貌をもてたのに、元に戻らなくちゃいけないなんて。まぁ、良いわ。大好きな先輩のために元に戻るんだもの。戻る前に一つだけ」

そういうと清花は輝久の不意をつくかのように唇をさっと奪った。小瓶を目の前で見せびらかすかのようにキスをする二人。小瓶の中では目を手で隠している清花がいた。最後の口づけが終わると二人は少し距離をおいた。

輝久:「じゃあ、解除の実験はじめよっか」

清花:「少し残念だけど、実験のためには仕方ないや。先輩、はじめますね」

そういうと清花は右手で小瓶を包み込んでいた。頭の中で念を入れると、白いバスローブに包まれている清花の体がだんだんと変化を見せていた。身長が伸び、髪が短くなり、肩幅はがっちりとした感じに広がり、お尻や胸は小さく引き締まっていった。そして、1分もすればバスローブに包まれている青年の姿へと変わっていったのだ。そして、さっきよりもゴツゴツとした右手をゆっくりと開と小瓶の中には清花がすこやかに眠っていた。

輝久:「正樹に戻ったな。それに清花はちゃんと寝てるよな、成功だ」

バスローブに包まれている二人の男はまるで勝利の余韻に浸っているかのようだった。

正樹:「小瓶の中の人物に変身をしていない時には、中に入ってる人は寝ている上、周りのことには一切気づかないってことですよね、先輩」

輝久:「よくわかってるなぁ。そこまでわかってくれたなんて僕は嬉しいよ。この小瓶をつくるのにどれだけ苦労したことか、まだこれ一本しかないけれど、これを作るのに億を超えるお金を使ってしまったけど、苦労した甲斐があるってもんだよ」

正樹:「本当ですね、先輩。それはそうと早く次のお楽しみに行きましょうよ」

輝久:「あぁ。そうだったな。今日は正樹においしい思いをさせてやるよ」

こうして寝室の中は二人の男の欲望で満ちあふれ、もうすでに終わったとは思われるが、次の実験に向けて既に動いていたのだ。






 

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