流行前線(その3)
作:夏目彩香(2003年4月13日初公開)
一方、グレーのパンプスを響かせながら美野の家に向かうの方の美野は順調に家の前まで到着しました。閑静な住宅街に建つ一軒家。家の門を開けると玄関に着きます。インターホンを鳴らすと美野の母親が応対しました。 机には美野の高校時代の写真が飾ってあって、本棚にはまだ高校の教科書が残っていました。さっそくクローゼットを開けると、そこには高校の時の制服が残っていたのです。美野はこの制服を取り出すとベッドの上に置きました。グレーのセーラー服。襟と袖には2本のホワイトラインが引いてありました。これを着れば写真の中にいる美野のようになるのは当然のこと。高校を卒業したばかりのあどけなさが残る美野にはセーラー服の方が似合っている気がします。 美野は自分の着ているものを一つ一つ脱いで行きます。そして、下着姿のままベッドの上に置いておいたセーラー服を着始めました。まずはスカートを履いて、腰の位置でホックを留めます。さっき履いていたスカートよりも丈の短いミニスカート。次に上着を着ることに、横についているファスナーを引くと、頭からかぶるようにして上着を身につけました。最後に、スカートのポケットの中にあったスカーフを結んで完成です。 美野の部屋にある大きな姿見を見てみると紛れもなく、高校生の美野が立っていました。すると、美野はカバンの中に入れておいたデジタルカメラを机の上に置きました。このデジカメは美野の物では無くて、美野に変身した彼のもの。セルフ撮影でこの姿を何枚か納めると、次は動画撮影に切り替えました。 「この制服を着ると高校時代のことを思い出すわ。そう、初恋の人と出会った時もこの制服を着てたのよね」 美野はセーラー服を脱ぐと、クローゼットの中から新しい服を取り出しました。白のノースリーブワンピースです。背中のファスナーをゆっくりと下ろして、足を入れると後ろに手を回して背中にあるファスナーを上まで閉めました。クローゼットに置いてある乾燥剤の匂いが少し残っているこのワンピースはどうやら今年になって始めて着たようです。 裾は膝丈でさっきの服よりもより大人の雰囲気を醸し出しています。このワンピースの上から黄色のカーディガンをかけると、また新しい美野が完成しました。やっぱりこの姿になってもデジカメでセルフ撮影をします。そして、大きな鏡の前でニコッと微笑む美野に引き込まれてしまいました。思わず鏡の向こうにいる美野に唇をつけました。しかし、鏡のひんやりとした感覚が伝わってくるだけで、実際にキスをしているわけでは無いのです。 ボストンバッグの中にさっき持っていたカバンの中から財布と携帯電話、それに化粧セットを移し入れると玄関へ行きました。これまたさっきまで履いていたグレーのパンプスを靴袋に入れるとボストンバックの中に仕舞い入れました。 美野は下駄箱の中から黄色いハイヒールを取り出して、黄色いストッキングを履いた足を入れました。 |
本作品の著作権等について
・本作品はフィクションであり、登場人物・団体名等はすべて架空のものです
・本作品についての、あらゆる著作権は、すべて作者が有するものとします
・よって、本作品を無断で転載、公開することは御遠慮願います
・感想はメールフォーム掲示板でお待ちしています
copyright 2003 Ayaka Natsume.