なつめの誕生日

作:夏目彩香(2001年1月1日初公開)


 


ここは、初詣に賑わうとある神社です。新しい年の1月1日を迎え、さまざまな形で希望や夢を抱えた人たちがここで願いごとをかけている様子。ここにまた新しい人たちがやってきました。どうやら友達同士の様子、女の子2人と男の子1人がグループでここにやってきたようです。ちょっと彼らの話を盗み聞きしてみましょう。

女の子A:この神社ってよく来る人、この中にいるかな?

男の子:はい、俺はよく来るぞ。初詣のたびにここに来ることにしてるから。

女の子B:私は初詣すら久しぶり^^; なつめは一体どうなの?

なつめ(女の子A):私もほとんど来ないよね。こんな機会しか来ることないよ。早香はいつ以来ここに来てないのよ。

早香(女の子B):う〜んとね。私が小学校低学年の頃だから……かれこれ10年近くなるかな?なつめに誘われなかったら一生来なかったかも^^; なわけわないよね。

男の子:ところで、ここの境内って一体どこまで歩けばいいんだ?妙に遠くないか、俺の足がもう折れそうだぜ。ちょっと休もうって。

なつめ:大輔ったら何を言うのよ、いまさら。あんなにはりきっていた体力はどこいったの?私だって、疲れてるんだから。それに、私たちはこんなに歩きにくい格好なのよ?

大輔(男の子):ん……それはそれはどうも、俺が悪うござんした。なつめパンティ見えてるぞ!

なつめ:えっ!何言うのよ。そんなはずないじゃない。

なつめはそう言うと大輔のことを軽く睨みつけた。

大輔:冗談、冗談。なつめったら本気にしたな。俺の冗談もわからないようじゃまだまだ青いぜ。

早香:何偉そうなこと言ってるのよ。なつめったら相当気にしてるみたいよ。新年が明けて今日はなつめの誕生日でもあるんだから、おとなしくしたらどう?

大輔:そうだったな。それにしてもめでてぇ誕生日だよなぁ。一年の一番初めに生まれたんだぜ。俺だってその日に埋まれりゃ、もっとチヤホヤされたんだろうな。

なつめ:それって……人の誕生日だからって適当なこと言ってるだけじゃないの?

大輔:そうそう。俺は平凡な日に生まれたからな。なつめはお年玉ふんだくっていたんだろうし……あぁ、うらやまし〜うらやまし〜

するとなつめは歩く速度を早めて先に歩いて言ってしまいました。

早香:あぁ、あ。大輔ったらいけないこと言っちゃったね。なつめの気持も何も考えないで……あの子怒ったらなかなか機嫌直さないわよ。私とだって昔すごいことがあったんだから。早く謝ってきなさいって。

大輔:そう言ったって、何がどうして俺が悪くなったって言うんだよ。なつめが勝手に決めつけたことなんじゃないのか?

早香:そこが、わかってないって言うの。歩きながら反省しなさいって。私もなつめと一緒に先に行っちゃうからね。またね^^;

大輔:そりゃないって。

大輔の声むなしく早香も歩く速度を早めなつめのところへ向かって行った。

大輔:一体何がどうだっていうんだよ。悪いのは、悪いのは?一体。

ということで、大輔は二人の後姿を追うような形で神社の境内を歩いていた。

大輔のひとり言:前に二人で行きやがって!二人とも正月早々、スカート短すぎるって。なつめはセミロングをちょっと赤く染めちゃたし、早香のショートボブも青くないか?二人でおそろいのような白いタートルネックのセーターと腰から足が出ているようなミニの皮スカート。あれが高校生の格好かって?足にはロングブーツを履いていて、歩きにくいの我慢してるみたいだぜ。ここって、コンクリートやアスファルトの上と違うからよ。でも、スタイル見ているとやっぱり俺が悪かったのかなって思っちゃうな。

そう大輔はぶつぶつ言いながら、なつめと早香が楽しく話をしてるのを追いかけながら、いよいよ神社の建物が見えてきたのでした。

早香:ねぇ、なつめ。今日は一体どんなお願いするつもり、こういうところって。お願い事をするもんなんだよね。聞かせて?

なつめ:いやだなぁ。早香だって言えないんでしょ。

早香:私は、すてきな人に出会えますようにって願うつもりなんだけど。

なつめ:(^^?) えっ、それって結構普通っぽくない?それに、無理やり言わせようとして言ってるだけじゃないの?私のお願い聞こうとして。

早香:へへへ、やっぱり言ってくれないか。なつめって口堅いからな。入学してから卒業まで一緒のクラスになる私にだって言えないことってあるの?大学受験とかの話は無しだよ。

なつめ:大学受験に合格するってのは、言っちゃだめなの?それお願いしようと思ったんだけどなぁ。

早香:また、とぼけちゃって。観念しなさいよ!

なつめ:いくらなんでも、今は言えないの。ゴメン、早香。

早香:それだけ言うのならよっぽどの願いごとなんだね。それならそれでいいんだけど、あとで絶対教えてね。

なつめ:うん、オッケ〜。そうそう、早香。今日のお賽銭いくらだす?

早香:私は、ご縁があるように5円だね。

なつめ:早香ってやっぱり縁起もちなんだね。私は同じ丸の開いた50円にしよっと。

早香:あれ?あそこにいるのって大輔じゃない?いつの間に……

早香の指を差した先には大輔が賽銭箱の目の前に立っていた。まだ、お賽銭を入れていないらしく、二人をそこで待っている作戦らしい。

なつめ:あいつだって、悪い奴じゃないんだけど……お賽銭だけは一緒にやろうか。

早香:なつめったら。そんなのでほとぼり冷めちゃったってわけ?どうして?
なつめ:いいの、いいの。これ終わったら今日は別れちゃうから。最後くらいは付き合ってやろうよ。

そう言って、なつめは早香を連れて賽銭箱の前に立つ大輔の下へ駆け寄っていった。

大輔:おいおい、二人とも。何してたんだ?結局俺より遅くなったじゃないか?

早香:話に夢中になって、あなたが追い越していったの気づかなかったのよ。それに、なつめはまだ怒ってるんだからね。

なつめ:早香、とにかくお賽銭あげちゃいましょう?

チャリーン、チャリーン、チャリーンと3人のお賽銭が投げ込まれ、3人は手を合わせ目を瞑りそれぞれの願い事を思い始めた。10秒ほどたって、3人が目を開けると……

なつめ:よし、俺の願い事は済んだぞ。えっ。。。

大輔:なつめが俺なんてこと言ってる。どうしたのよ?あれっ、私……

早香:なんで、私がそこにいるのよ〜!それにこれって、早香の声じゃない?いつも聞いてるのとはちょっと違うけど、あれっ?

こうやって、3人がお参りをしているうちになぜだか人格が入替わってしまったようです。なつめは早香に、早香は大輔に、大輔はなつめになってしまいました。このあと一体どうなるのでしょうね。こんなことって一体あるものなんでしょうか?この続きは余裕のあるときにでもまた盗み聞きをしに行きたいと思います。それでは、今年もよろしく!





 

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