ダイエット宣言

作:夏目彩香(2000年11月24日初公開)


 


ここは都内にあるごくごく普通の家庭、脱衣室から悲鳴のようなものが聞こえてくる。「あれっ?この体重計壊れてるんじゃないの〜!?うっそ〜まじやばくない?」どうやらこの声はうちの姉貴らしい・・・チラッと気になったので覗いてみるとやっぱり^^;いたいた姉貴こと矢崎明美の姿が・・・俺、隆弘から見たら太ってるようには見えないが、それでも年頃(笑)の娘には気になることらしい。どうみたってうちの姉貴は普通の体系か痩せすぎってところ、たまにうちに来る友達の中には姉貴より太った奴のほうが多いくらいだ。これには俺も頭を悩ませている。毎日毎日あの悲鳴を聞かされていてはもう堪忍袋が切れそうだ。姉弟そろっていかれたように見えては困るが、怒ってやるのもそろそろ仕方がない。そこで、俺はあることを思いついた。

ダイエット宣言

これぞ、俺の見つけた究極の方法、このプログラムを完成させるために俺はどれほど徹夜をしてきたものか(たしか、2日とちょっとぐらい・・・)、引きこもりのごとく部屋から一歩も出ずにいたため、久しぶりに部屋を出てみると例によっていつもの声に出遭ってしまった。まぁ、これを聞くのも最後になると思うとちょっと名残惜しいくらいだ。プログラムの完成まであと少し・・・もう一踏ん張りで完成する。そんな思いを感じながら、ちょっとだけ目に潤いを蓄えながら姉貴にいつものちょっかいをかけてきた。なんだか虚しい気持ちのまま俺は引きこもりに戻る(何か違う^^;)最後のプログラムを打ち込む前に寝るべきか、寝てから打ち込むかここで悩むが結局眠くないので(なら悩むなって^^;)打ち込みを始めた。

できた、ついにできた

これが、夢にまで見た究極のダイエットプログラム、その名も「ダイエット宣言」ここでダイエット宣言をした者は絶対に目標を到達するまで諦めてしまうことはなくなるはずだ。まだバグチェックはしていないが、たぶん大丈夫なのでとりあえずベータ版の冠をつける。だから、正式には「ダイエット宣言Ver0.90β」自信がないのでバージョン1を名乗るには恐れ多い、完成まであと少しという意味にはちょうどいい感じだ。とりあえず、このプログラムを作動させるために必要なものを撮りにいく。それは、姉貴の写真だ。わざわざこのためにとは言わないが、最近買った334万画素のデジタルカメラを使って、姉貴の写真を撮りにいく。姉貴は小さい頃から撮られるのが好きだし、簡単なものだろう。

あっ!!

あたりまえのことだが、脱衣所にはもう姉貴はいないはずなので、俺は姉貴の部屋を開けてみた。ノックもしないで入ってみる(姉貴もノックしないからお互い様)、開けたとたんに姉貴のクッションが俺に目掛けて飛んでくる。見事に顔面命中!なかなかのコントロールを持ってる、さすが俺の姉貴^^;やっぱり裸のままだった。自分の部屋とはいえずいぶんと大胆な姉貴がいるもんだ。そうこうしているうちに下着だけは身に着けていた。さすがに姉弟の間では気恥ずかしさが薄い。姉貴は機嫌がいいのか、何枚も下着姿の写真を撮らせてくれた。しまいには俺の写真まで、姉貴に写真を撮られるのはこれがはじめてのことだ。とりあえず素材の準備はできた。さっさと姉貴の部屋を飛び出し、引きこもり部屋へと戻っていく。

さて

次は撮ってきた写真をパソコンに読み込ませてあげる。これをしないとプログラムで使えない、面倒だったのでメモリーに蓄えられたすべての画像がパソコンの中に吸い込まれていく。これで準備万端。あとは、ダイエット宣言プログラムを起動させて、姉貴の画像の入ったフォルダを読み込み・・・実行をかける準備をする。そうそう、忘れてならないのが、USB対応の簡易アンテナを接続させておくこと、このプログラムを実行すると、このアンテナからの電波によって姉貴をダイエットさせることができるって寸法だ。少なくとも一晩くらいの時間はかかるので今夜にならないと実行できない。ひとまず俺は一眠りすることにした。寝る寸前にカチッと実行ボタンが押されたような気がしたが気にしないで眠りについた。

・・・

ずっと寝ないでいたためか、目覚めようとしてもなかなか体が思うように動かない。なんだかいつもと違う体の感覚がする。目をゆっくりと開けると目の前はぼやけて見えない、俺の目って視力2.0あるはずなのに、かすみ目なのか・・・?腕で目をこするが、その腕は白くて華奢なことそれに冷やっとした感じ。何かがおかしい、明らかにおかしい。俺は一体どうなってるんだ?掛け布団を押しのけようとすると手にやわらかものの感触が・・・なんだこれ?プニプニとしていてなんか気持ちが(・・;)いいぞ?これってもしかして、おっぱい?いつのまに膨らんだんだ(ーー;)寝てる間にか?もしかして、勝手にプログラムが作動してプログラムミスでこんなことに・・・そして、いろいろとおかしなことになってしまったのか?念のため股先まで手を伸ばしてみるとやっぱりあるものがなくなっていた。ん〜やっぱり(^_^;)

むくっ☆

目が悪くなってしまったが眼鏡もあるはずがないので、とりあえず姉貴の部屋に行って見ることに、きっと姉貴にも変化が起こってるに違いない。そう期待して行って見た所、部屋には姉貴の姿はなかった。そういえば、ここに姿見があるな〜、今の俺ってどんな姿になってるんだろう?気になるぅ。そう思うやいなや姿見の前に立ったが、ぼやけてよくわからない、姉貴はコンタクトしていたことを思い出した俺は家の中でしか使わない眼鏡を探してみた。化粧台の上に乗っていたのを見つけ、度が違っても今よりは見えるだろうと思って、かけてみると目の前がはっきりと見えた。こんな偶然てあるのもんだな〜。そして、再び姿見へ。ちょっと怖いので目を瞑ってからゆっくりとまぶたをあげていく。

えっ!?(・・;)

目の前に見えたのは、俺のTシャツとトランクスを身に付けた姉貴の姿だった。それも、いつも見る姉貴よりもスタイルがいい、言い方を換えれば姉貴の理想の姿だろう。どうりで眼鏡がぴったりなわけだ。しかし、俺の服を身にまとってもおもしろくない、ここは姉貴の洋服をひっぱりだしてやろう。でも、普段の姉貴よりも痩せてるから今着ている服は大きいはず、ならば姉貴が高校の時に着ていた服を探してみよう。そう思うと俺は姉貴のクローゼットから洋服を探してみた。

あった☆Ξ

俺はクローゼットの中から最も小さい服を見つけた。それは、姉貴が女子高時代に着ていた制服で、オタクの間では憧れの制服ナンバーワンにも選ばれたことのあるほど有名なものだ。女子高時代の服はどうやらこれしかないらしく、それ以来ひとつ大きめのものに変わっている。姉貴の考えていることがよくわかったというものだ。俺はTシャツとトランクスを脱ぎ捨て、そこの棚にあったピンクのショーツを足にそっと通して、ピンクのブラはいつも姉貴がやってるのを見ていた(もちろんん覗き見)ので、そっくりそのままに身に付けることができた。下半身はピタッとした感覚に、上半身は落ち着いた感覚を感じていた。

う〜ん、これこれ

下着を身に着けた俺はブラウスを探し出し身につける、ワイシャツとさほど変わりないが、ボタンが逆なのでちょっと戸惑う。そして、淡い茶色に赤い線が入ったスカートを履いてみることにした。さすがにいつも見ているとはいえ、一歩を踏み出せない。足元にスカートを置いたまま時間は過ぎていく、俺って何やってるんだろう?なんか違うよな〜、たしか、プログラムのミスを・・・これもバグチェックの一環だ。姉貴に見せてやったらどうなるかな?そう思うと一気に腰までスカートを引き上げた。腰の位置を過ぎたあたりまで持っていってしまったが、ウエストの位置でどうやらホックを止めることができた。姉貴の時代はまだミニにできなかったらしく、膝上丈である。さらにリボンを胸に縛ってジャケットに袖を通す。女子高生のいっちょできあがり☆三度鏡を見てみる。少々この服を着るには年齢がいっているように思うが、まさに女子高に通っていた姉貴の姿だった(眼鏡と髪型が違うけど、そんなことはどうでもいい^^;)。そして、鏡の奥にもう一人の姉貴の姿が見えた・・・

げぇっ(・・;)

姉貴は部屋に入ってくるなり、ニコニコとした表情を蓄えている。何が嬉しいのだろうか、俺にはわからず・・・すると姉貴は、「実験は成功したのね、これで安心してあのソフト使えるわね。」そうやって不可解な微笑みを浮かべながら俺に話しかけてくる。俺が「実験って?」と聞き返すと「知らなかったの?姉貴の私にこっそりとプログラムつくっておいて・・・あれ、改造してたの。それで、写真にとった人物の理想の姿に変身するように作り変えてみたんだけど、自信がなくて弟のあなたに協力してもらったってわけ。どうやら変身うまくいったみたいね。」なんてことを言った。俺は、あっけにとられてしまった。姉貴がすべて知っていたなんて、考えたことがなかったからだ。「これで美人姉妹の誕生ね、よろしく隆美ちゃん☆」何を言ってるのかわからない俺は聞き返す「えっ?このプログラムってもとに・・・」「戻れないよ☆新しいプログラムを作らない限りはこのままの姿ってわけ。知り合いに頼んで戸籍も作り変えてきたから晴れて双子の姉妹ってわけね。」そう速答されてしまった。こうして、俺はいいかげんな姉貴のせいで隆美としての生活をし始めるのだった。めでたしめでたし(・・;)




 

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