妄想族さん総合



代用ラバー
 作:妄想族


「待った? 秀一くん」
「いいんですか? はるかさん、この時期…」

 佐藤秀一は浦野はるかと付き合うことになった。
 彼女は長身でボーイッシュなのに巨乳なのだが、それ以外にも特徴がある。
 同性にばかり注目されるのが嫌で、思い切って処女を捨てようと弟の智幸に迫ったが、彼は男性的な要素が弱いこともあり、形式的にその童貞を奪ってからは智幸とのプレイは彼に女物の服を着せ、カラミはレズ風スタイルとなっていた。
 秀一の初体験も、はるかと女装した智幸との3Pだった。はるかと関係を持つには智幸とも親密になる事が条件付けられたのだが、唯一の救いは秀一が小柄な割に男性器は平均を軽く上回るサイズであり、姉弟を満足させれるという事である。

「大丈夫、ボク、ユキだから」
「やっぱり」

 彼女との年齢差以外にも、接近していくと『私のことが好きなんでしょ?』と心の中を見透かされたあげくに、同性に自分はノンケとアピールするといった理由で付き合ってもいいと言われた位に修一の立場は弱かった。しかも、今でもはるかに惚れている女達の嫉妬に起因する罠に警戒する必要があったし、彼女が生理の時はメール以上の交流はできない取り決めだった。
 ユキと自称するはるかの弟も美形で顔立ちは姉に似ていた。身長は彼女より低くて華奢なものの、底の厚い靴や肩パット入りの上着を着ていると、はるかと見分けがつかないほどであった。
 メイクに始まって喉仏もよほど顎を上げない限り突き出る事もないし、声も探究心の賜物か少し低音に聞こえる程度の女声なので、自ら明かさない限り騙し通すことも可能かもしれなかった。

「がっかりしないで、デートだから当然お楽しみもあるよ。ボクも年上だから奢るし」
「それには感謝してます」
「じゃあ、いこっか」

 智幸は秀一より一歳年上で、答案に名前を書けば合格すると言われる秀一とはるかが通う学校よりもずっといい所に通っていた。しかも理系なので異性との接点も薄く、倒錯してるなりに突き詰めていくところがあって、短小というコンプレックスを完全に補える程に姉になりきって女を演じれた。
 プロでない以上は整形もホルモンも使わずに高みを目指すことが重要で、姉の特徴であり女らしさの象徴である胸も、それが智幸とわかっていてもつい服の上からでもガン見するレベルに仕込んでいる。二人が闊歩するファッションビル内でも、ぽっちゃりとした見かけも美しさも備えた巨乳はフロアに一人いるかいないであった。

「ランジェリー興味あるの?」
「巨乳を際だたせるアイテムとして重要だけど、見方を知らないし、そもそも男が入れないよ」
「恋人同士なら行けるさ」

 進学する前はモテる方に入っていた智幸も、女性が外見だけでなく性的にも魅了されないと気がすまないのだと姉を通して知ったのと、女なのに胸が小さくても堂々としているのは恥ずかしい事と考えていたので、貧乳の店員に遠慮することなく秀一を店に引き入れて店内のランジェリーを見て回る。
 だが、色やデザインは派手でもカップの無駄な厚みや寄せて上げる効果で中身も貧相な女の巨乳願望を満たすものばかりで、大きなバストを美しく見せるブラは発見できなかった。

「ところでさ、その胸って」
「姉さんと同じサイズよ」
「やっぱり大きいのに限るよ。小さいと恥ずかしいね。子供みたいだ」
「派手な下着を買うお金があったら、牛乳飲んだりキャベツ食べたほうがいいのよ」

 二人が軽口を叩くと、智幸より歳上であろう二人組の胸に膨らみのない女性がドン引きする。だが、気にしない様子で通り過ぎる。

「結局買わなかったんだ」
「だって、あの店には義理もないじゃない」
「イメージではセクシーな店長とかいると思ったのにつまらなかった。巨乳の客もいないし、残念」
「やっぱり、実際にこの胸見てみたい?」
「んー…」
「見るだけじゃ嫌だよね。パイズリもしなきゃ。姉さんとの時も絶対そうだし。いいよ、簡単さ」
「どこで?外に出ても路地裏とかないぜ。ここは都会だし」
「多目的トイレがあったよ。多目的だからね」
「でも、通路にカメラもあるかもしれないし、一度に二人で入ると露骨に怪しいよね」
「ちょっと工夫すれば平気さ、ボクが歩いてる女の影に紛れている間に入れば目立たないし、後から来て一度扉を引いてくれたら静かに鍵を開けるから」

 智幸の繊細にして入念な発想は感覚的な姉と正反対で、立ち振る舞い以外でも男と露見するのを防ぐのに余念がなく、姉が愛する秀一にリスクを追わせることもない。

「さっき予想してたんだけど、外はシリコンで中に水をいれるようになってて、触り心地までリアルとか」
「はずれ、ああいうのは地肌と色が違ったり繋ぎ目が見える。そんな妥協はできない。君の巨根は本物なのに、ボクがそんな安易な手で向き合っていいか?いいはずがない!原理はわからなくても、より完璧を目指す。この通り」
「どうやったらこんなに完璧に…」
「そのランジェリーショップでは男でもブラができるようにって特定の関係のペアで来たら、ブラとセットで売ってくれるジュースがあるの。1本飲めば93センチになれる」
「はるかさんとおんなじだ」
「君の本物も見せて、秀一くん」

 智幸は個室で椅子に転用できる便座に秀一を浅く座らせると、いつの間にか持ち込んでた通販カタログを破ってタイルの床の上に撒いてその上に膝をついた。そして、僥倖がめぐって男に生まれたのに得ることが出来た巨乳で、顔は少年らしさが抜け切れてなくても股間は歴戦の男並の秀一の分身を挟み込むと、楽しそうに全体で包み込んで揺らし始める。

「なんでトイレでしてくれたか分かったよ」
「戻れるってのが素晴らしいでしょ。手術したら取り返しがつかないし、いつもぶら下げてたら肩こりでしょうがないわ。ヒロインから完全なモブキャラになっちゃうけど、それはそれで気楽ね」


 多目的トイレをわずかに時間差を持たせて後にした。
 二人は完全には通じあっていなくても、智幸は姉が会得した前戯を実行できた達成感と自分のを上回る一物を絶頂に導けた充足で満たされ、秀一は最初に騙されていたのも忘れて実験に付き合わされた形であっても、最終的にはヌケたので素直に喜んでいた。

「ユキさんありがとう、今日は楽しかった」
「もう帰っちゃうの? 焼肉食べに行くのに」
「ユキさん食べる時は男丸出しなのに、大丈夫?」
「最近の女は言葉遣いも悪いしガサツだから平気よ」

 二人はファッションビルを出て繁華街に向かった。