「危険な遊具」
 作:みのむー


「ちーちゃん、見ててよ。今滑るから」
「危ないから、やめてよー。あっちゃん」
散歩がてら、近くの公園に立ち寄った時の事。
 何気なく声のする方を覗いてみると、滑り棒で遊んでる子供がいた。
(滑り棒とは懐かしいなー。あれ危ないんだよね)
と思いながら、眺めていたら何だか様子がおかしい。
 二人とも登って後は滑るだけなのに…。と、突然大声が。
「うわわ。おちるー」
「あ、あっちゃんー。手を。誰か助けてー」
見ると、二人とも滑り棒からおちる所だった。
 急いで駆け寄ったけど、間に合わなくて、二人が重なる形で倒れていた。
「ねえ、君、大丈夫?」
先にちーちゃんと呼ばれてた子を起こすと、
「ううーん。うん。大丈夫、大丈夫」

「そう、女の子なんだから気を付けろよ」
「えっ、誰が?」
「君だよ。スカートが汚れてるじゃないか」
と微妙に噛み合わない会話をしてると
「うーん」
と男の子の方も目を覚ましたらしい。
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です。ちょっと身体中が痛いですが」
「なら、よかったけど。こら、危ないことに女の子を巻き込むんじゃないの!」
と言うと、女の子の方が謝った。
「ごめんなさい」
「何で君が謝るの?」
と言いながら、心の中では
(あれ、もしかして、この子たち……)
「お兄さん、ありがとうございます」
と言いながら、女の子が男の子の手を引っ張りながら、この場から立ち去っていった。

「ねぇ、何で私が二人いるのよー(泣)」
「泣くなってば、ちーちゃん、僕だよ」
「あっちゃん?」

 二人の会話が耳に入ってきた僕は、懐かしい気持ちにかられてしまった。
 そうだ。この出来事をあいつに話してやろう。

……

「ただいまー。さっき、そこの滑り棒でさー……」
「へぇ、そうなんだ。その子たちも、私たちみたいになったんだ。大変だろうなー」
「うん。そうだね、うふふ」
「おい、何だよ。気持ち悪いなー。その顔で笑うな。何年経っても慣れねぇなー。はぁ」
「それはお互い様でしょ。でも、あの滑り棒まだ残っていたとはね。
 あれで、私たちも入れ替わったんだよね」
「おい、女言葉に戻ってるぞ」
「いいじゃないのよ。あなただって男言葉になってるし」


おわり