家族の転換
 作:ふゆ

(5)

最近父さんさんの様子がおかしい。ぼんやりして料理を焦がしたりするし
しょっちゅうスマホでメールのチェックをしてる。
「お母さん最近考え事してること多いね」
「え、そうかな?」
父さんさんは慌てた様子で答えた。
「なにか心配ごとでもあるの?」
僕が尋ねると、決心した顔で話しはじめた。
「実は交際を申し込まれてる人がいるの」
「ええ、その人って男性?女性?」
「男の人。事業をやってる人で、大学生の息子がいるの」
「母さんの日記を見たら」
「父さんと別れたあと親しくなって」
「身体の関係はなかったけど」
「母さんもその人のことを気になってたみたい」
「その人、お母さんが入れ替わったって知ってるの?」
「ううん、それは絶対に言えないでしょ」
「そうだね、今の生活がダメになっちゃうから」
「でも、悩んでるってことはその人のこと好きなんだね」
「そうかもしれない・・」
「でも・・戸籍上は高橋加奈だけど、中身は男だし、結婚は無理だから」
「お母さん手術を受けて女になったら?」
「ええ、それは・・・」
「そうすれば、男ってばれずに結婚できるから」
父さんは暫く考えこんで答えた。
「そうね、それもいいかも知れない」
こうして父さんは体も女になった。

父さんが手術をして落ち着いた頃
「ねえ、由美って女性経験あるの」
と尋ねてきた。
「え、ないよ。真紀とはそこまでいかないうちに別れたし」
「じゃあ、お母さんと初めてをやってみない?」
「でも、はじめては好きな人にあげなくていいの?」
「子供2人も生んだことになってるのに初めてもないわよ」
「それに結婚するなら年齢に相応しい経験を積んでおかないとだめでしょう」
「ああ、そうかそうだよね」
僕はシャワーを浴びて父さんとお母さんが使っていた寝室に向かった。
「お母さん奇麗な身体ね」
使われたことのない父さんの乳房は、形もよく張りもあった。
「由美のって普段は小さいけど随分大きくなるのね」
「うん、学校とかで大きくならないようにするの大変」
僕は初めてだったので父さんのリードにまかせ、うまく挿入できた。
気持ちいい締め付けの中で、僕の物から熱いものがほとばしりでた。
こうして僕の初めては終わった。
その後父さんが結婚するまで何度も身体を合わせた。


ある日、結婚相手と顔を合わせにホテルのレストランに出かけることになった。
「顔合わせ、なにを着ていこうかしら」
「迷うよね」
僕たちはお母さんのクローゼットを見ながら服を選びはじめた。
「これがいいんじゃないかしら」
そう言って取り出したのは黒の上品なワンピースだった。
「それって去年お母さんの誕生日に着ていた服じゃない」
「そうね」
「母さんもその人に好意をもってたから」
「母さんの代わりにそれ着ていくのもいいね」
そう決まったあと僕はどうしようかなと悩んでいたら
「あの日由美が着ていたベージュのワンピースがいいんじゃない」
と、父さんがアドバイスしてくれた。
黒のワンピースに金のネックレスシャネルのバックをもったお母さんはとても綺麗だった。
「お母さんそのネックレス素敵ね」
「これはね、母さんが結婚するとき母親(おばあちゃん)からもらったものなんだって」
「おばあちゃんも結婚するとき母親から貰ったみたいで、代々受け継がれているのね」
「わあ、そういう母から娘に受け継がれる愛情みたいなのって、いいね」
「ふふ、由美が結婚するときに渡してあげるわね」
僕は女性として結婚するのは無理とおもっていた。
「私が結婚なんて無理だよ」
「それはわかんないわよ。でも・・」
「お義母さんも、夫が娘になりすましてこのネックレス付けるとは思わなかったでしょうね」
「そうだね、いつの間にかすり替わってるなんて、だれも思わないよ」

それからホテルのレストランで相手の人に会った。
落ち着いた雰囲気の優しそうな人だった。
「娘の由美です」
「初めまして、由美です」
「やあ、お母さんに似て可愛いらしいお嬢さんだ」
僕は微笑みながら
「ありがとうございます」
と答えた。
お義兄さんになる人は、イケメンで理知的な人だった。
「息子の弘明です」
「初めまして、弘明です。これからよろしくお願いします」
「ハンサムな息子さんね、もてるでしょう」
「いや、こいつは家に彼女を連れて来た事が一度もないんですよ」
「父さん、なにもここでそんなこと言わなくても」
こうして顔合わせは和やかに終わり、父さんは女性として結婚することになった。