家族の転換
 作:ふゆ

(4)

今日から普通に授業が始まるけど、初日から体育があったので気が重いなと思いながら学校への道を歩いてると誰かが声をかけてきた。
「由美ちゃん」
声の方を見ると、深瀬が駆け寄ってきた。
僕は微笑みながら答えた。
「おはようございます」
「由美ちゃんも今の電車だったんだ」
「はいまだ朝練とかないのでゆっくりでいいんですよね」
後輩に敬語使うのも変な気分だけど、今の僕は新入生なのでしょうがないなと思いながら話した。
「永山に聞いたんだけど、由美ちゃんて中学時代強かったんだね」
「え、そんなことないですよ」
「新人戦期待してるよ」
「深瀬さんも地区大会がんばってください」
こいつは女子に気軽に話しかけるし話もうまい。モテのもわかるな。
そうしてるうちに学校についた。
「じゃまたね」

体育の時間になり僕は体操着を持って、優香達4人と女子更衣室に歩いていった。
他の3人は楽しそうに会話してるけど、僕は緊張して無口になった。
「どうしたの由美。元気ないね」
優香に心配されてしまった。
女子更衣室の前まで来ると一瞬躊躇したけど、ここで立ち止まっていても変に思われるから勇気をだして中に入った。
女子の匂いの充満するなか、上半身ブラだけとかブラウスを脱ごうとしてる女子の姿が目に入り、思わず顔が赤くなってしまった。
「由美顔赤いけど風邪でも引いたの?」
「ううん、なんでもない」
3年間ここに通ったけど、まさかここで女子として着替えるなんて思ってもみなかった。
僕はそう思いながらハーフパンツを履いて、上にジャージをはおるとグラウンドに出た。
準備体操していると、女子とは離れた場所で準備運動してる男子がこちらを見てる。
女子をチェックしてるようだ。
僕だって前はよく女子のことチエックしてたから、男子の気持ちはよくわかる。

最初の体育はソフトボール。
僕の番が回ってきたけど、目立っちゃだめだから手加減しようと打席に入った。
1球目はわざと空振りしたら、先生が
「あら、高橋さんいいスイングしてるわね、ソフトボールやってたの」
と声をかける。
僕は一瞬あせって
「いいえ、やってません」
と答えた。
「そう」
2球目は軽く合わせただけのつもりが、バットの芯に当たってしまいセンターを守っていた子の遙か上を越えてしまった。
「由美すごいー」
女の子達が口々に騒ぎたてた。
持久走をやっていた男子の方まで飛んでしまい、女子でこんなに飛ばすなんて誰だと騒がれてしまった。
「誰だよ女子でこんなに飛ばすなんて」
昼休みにみんなに散々騒がれたけど、テニス部なので玉を打つのが得意なのと言ってごまかした。

放課後テニス部の部室に行く。
「失礼します」
僕が声をかけて中に入ると、ざわついていた話し声がぴったと止まった。
変におもったけど誰もなにも言わないので体操着に着換えて外に出ると
続いて出てきた同じ新入部員の高岡茉莉が教えてくれた。
「高橋さんたいへんよ」
「昨日男子部室に入ったでしょ」
「それに今朝深瀬先輩と一緒に登校したところも見られてたみたいで」
「2年の前田さんて深瀬先輩のこと好きみたい」
「それで高橋さんのこと、なにあの子あざといんじゃないとか言ってた」
「広瀬さんが、由美はそんな子じゃないってかばってたけど」
「えーそんな、私そんなつもり全然ないのに」
「どうしよう・・・」
「高橋さんて広瀬さんと知り合いなの?」
「うん、昔お兄ちゃんとつきあってたの」
「そうなんだ、なら広瀬さんに相談してみたら」
「あ、そうだね。高岡さんありがとう」

部活が終わった後、残っていた真紀に声をかけた。
「真紀さん一緒に帰りませんか」
「うんいいよ」
途中でスタバに寄った。
「相談したいことがあるんですけど」
「今日深瀬先輩のことが噂になってたけど、なんでもないんです」
「うん、わかってるよ」
「前田さんには私から話しておくから心配しなくてもいいよ」
「ありがとうございます」
やっぱり真紀はいい子だな僕はそう思って、その後楽しくおしゃべりしながらすごした。
家に帰り、父さんさんにその日の出来事を話した。
「前田さんて何度か話したことあるけど」
「清楚でそんなこと言う子じゃなかったんだ。だけど変っちゃたのかな」
僕がそういうと、父さんが教えてくれた。
「それはあなたが女の子になったからよ」
「今は女の子として、その子のライバルになったからそういう態度をとるの」
「あなたも今は女の子なんだから、もっと女の子の気持ちをわからないと」
「そうなんだ、女ってこわいね。これからきをつけないと」


真紀がうまく言ってくれたみたいで、その後の部活はスムーズにいくようになった。
そしてテニスの新人戦が始まった。
女子更衣室での着換えも慣れてきて、おしゃべりしながら着換えもできるようになってきたけど、スコートを履いて試合にでるのは初めてなので始まる前はドキドキがとまらない。
試合中もスコートの感覚がなれなくて、体が思うように動かなかった。
試合が終わった後、真紀に
「由美ちゃん動きが硬かったね」
と言われてしまった。
スコート履いて試合するの初めてだからなんて言うわけにもいかず
「初めての試合なので緊張しちゃいました」
と言うのが精いっぱいだった。
「それでも勝てたんだからえらいよね」
僕は予選を勝ち抜いて本戦の準決勝まで進んだ。
優勝できそうだったけど、あまり目立っちゃうとよくないので
わざと負けて3位で終わることにした。
それでも男子だったときに、カワイイテニスウェアを着て試合に出たいと思ってたので
夢がかなったと思うと嬉しかった。

次の日昼休みいつものグループでお昼を食べてると
優香達が祝福してくれた。
「由美3位おめでとう」
「ありがとう」
「でもさ、うちらまた目立っちゃうよ」
「え、どういうこと?」
「由美知らないの?」
「うちら4人とも身長160以上あるし」
「顔もカワイイって目立ってるんだよ」
「自分でそれいうの」
僕はツッコミいれたけど、僕ら4人ともカワイイよなって思ってた。
美月もうなずく。
「そうだよね、4人でいるとチラチラこっち見てる人いるよ」
「でもその割には、誰も彼いないよね」
「なんかね、ハードル高いって思われてるみたいよ」
そう聞いて、可愛くってスタイルのいい子が4人もいたら学校内では
声掛けにくいよねって思った。
「ああ、そうなんだ」
「ダンス部て男女いっしょでしょ、そうすると男子の好きな子の話もでるんだけど」
「由美の人気高いよ」
僕は驚いてしまった。
「ええ、うそでしょ」
「うそじゃないよ、由美ってカワイイし、清楚なお嬢様っぽい雰囲気あるから」
「男子受けいいみたい」
そう言われて僕は思い当たるなって思った。
男子の理想の女性って清楚な子というのが多いし、僕もそうなので
自分も清楚な女の子になりたいと思い、そう演じてる?ところがあった。
「でも由美って見た目清楚だけど、中身は男っぽいところあるよね」
僕はギクとしたけど
「なにそれ、男っぽいてひどーい」
と受け流した。
「ごめんごめん、悪い意味じゃなくて」
「決断力あるとか、サバサバしてるとかそういう所」
「そうだよね、由美ってそういうところいいよね」
「そうかな・・」
自分では女の子に溶け込んだつもりでもみんなよく見てるんだ。