家族の転換
 作:ふゆ

(3)

由美は僕と同じ高校に合格していた。
高校入学式も2度目だけど今度は女子高生としてなのでどんな学生生活かなとワクワクした。
父さんもお母さんの淡いクリーム色のワンピースにノーカラージャケットのフォーマルウエアを着て鏡に写った自分を見ながら
「こんな服を着て母親として入学式に出れるなんて、1年前には思ってもみなかった」
そう嬉しそうにつぶやいていた。
僕も左ボタンのブレザー、白のシャツブラウスにネクタイの代わりのリボン、
パンツじゃなくてチェックのスカートを履いて、これで僕も女子高校生になれたんだと思った。
入学式は3年前と同じ体育館でやったけど、スカートを履いてるせいか前よりずっと寒く感じられた
僕が寒そうにしてると、隣に座った娘が
「寒いよねー、もっと女子のこと考えてくれるといいのに」
「そうだよね」
「貴方どこの中学?」
「XXX中学」
「私ダンス部に入ろうとおもってるけど、貴方背が高いから向いてると思う。一緒に入らない?」
「うーん、それも魅力的だけど私テニス部だったからテニス部に入ろうと思ってるんだ」
「あ、そうなんだ、気が変わったらいってね」
「私、西野優香。携帯交換しない?」
「うん、いいよ。私、高橋由美。よろしくね」
「由美ちゃん可愛いね。友達になれてよかった」
ちょっと勝気そうだけど、可愛い子だったから仲良くなれてよかったと思った。
入学式が終わった後、チア部の中山さんが僕のところに来て
「貴方背が高いしカワイイからチア部にピッタリだと思う。うちにこない?」
男子の頃は背が低いのがコンプレックスだったのに、女子になったとたん背が高いって言われだして戸惑ちゃうなと思いながらも、
高校の頃チア部の女の子を見ながら僕も女の子だったらチア部に入りたいと思ってたので悩んでいたら
「由美ちゃんお久しぶり」
そう声をかけてくる人がいた。
振り返ると、女子テニス部の部長をやってる広瀬真紀だった。
真紀とは昔付き合っていて、義之のことは好きだけど
同性と付き合ってるみたいでなんか違うのよね、と言われて別れることになったのだが
その後も友達としての付き合いは続いていたので、由美とも顔見知りだった。
後輩で元カノと同じ制服を着て会うのは恥ずかしかった。
「真紀さんお久しぶりです」
「由美ちゃんうちに来たんだ、入学おめでとう」
「ありがとうございます」
「由美ちゃん、当然うちに入ってくれるよね」
微笑みながらそう言ってきた
「広瀬さん、先に声かけたの私なんだけど」
中山さんが文句を言ってきた。
「そんなの関係ないわ、本人の意思が大事でしょ」
真紀はそう言い返して、間に入った僕は困ってしまった
チアの華やかさにも未練はあったけど、真紀の事はいまでも好きなので
真紀と一緒に部活をやるのもいいなと思った。
「私中学でテニス部だったので、テニスを続けたいと思います」
「そう残念ね、それならしょうがないわね」
そう言って中山さんは離れていった。
「由美ちゃんありがとう、楽しくやろうね」
「テニス部の部室はB棟の裏だから放課後まってるね」
そう言って真紀は離れていった。
一緒にいた西野さんは少し驚いているようだった。
「高橋さんすごいね、勧誘一杯来て人気者なんだ」
「ううん背が高いから目立つだけだよ」

担任の先生は、3年の時と同じ山口先生だった。
「お兄さん残念だったね」
と言われて、まさか本人なんだと思わないだろうなと思いながら丁寧にお礼をいった。
女子の中に僕より背の高い子がいて、その子のことみてたら視線に気が付いたらしく
僕の方にやってきて
「こんにちは、どこの中学からきたの」
「あ、うんxxx中学」
「そう。私、及川美月。よろしくね」
「私は高橋由美、よろしくね。及川さん背高いね、部活なにやってたの?」
「バレーやってたの。高橋さんも背高いよね」
そんな話をしながら携帯の番号を交換したりした。
昼休みは優香の連れてきた斉藤菜々美も加わって、4人でおしゃべりしてすごした。
放課後までに女子グループは出来上がり、僕は西野さん達と4人のグループになった。
女子はグループから外れると学校生活で困ることが多いので、
早いうちに西野さんと仲良くなれたのはラッキーだった。

放課後テニス部の部室に行こうとして今までの習慣で男子テニスの部室にいってしまい
中に入ったらみんなに驚かれた。なに驚いているんだろうと戸惑っていたら
今の僕は女子なんだと思いだした。慌てて
「ごめんなさい、部屋を間違えました」と謝り出ていこうとすると
「由美ちゃん」と呼ばれた。
そちらを見ると今年から部長になった永山だった。
「永山・さん・・」
「由美ちゃん入学おめでとう」
「ありがとうございます」
僕は微笑みながらそう答えた。
「みんな、高橋先輩の妹さんだよ」
「へえー、可愛いね」
「高校でもテニスを続けることにしたので、よろしくお願いします」
j女子によくもてていた深瀬が
「じゃあ、俺が教えてあげるよ」
と近寄ってくる。
こいつはいつも女の子の前では調子がいいなと思ったけど、この姿ではそんなことは言えない。
後輩女子らしく微笑みながら
「はい、よろしくお願いします」
と返した。
「ゆみちゃん彼氏いるの?」
「深瀬調子に乗りすぎ」
去年まで後輩だった部員に騒ぎ立てられ、僕はいたたまれなくなった。
「すいません、これから女子部に行かなきゃならないので失礼します」
そういって男子部員たちと別れて女子部の方に入りなおした。

さすがに男子と違い奇麗に整頓されていたけど、
むっとする女子独特の匂いがして、男の僕は中に入るを躊躇してしていた。
そんな僕に気が付いた真紀が声をかける。
「由美ちゃんいらっしゃい、まってたよ」
「そんなところにいないで中に入りなよ」
「失礼します」
そう言いながら中に入ると、新入部員らしい新顔と
去年まで後輩だった2〜3年生がいた。
「高橋先輩の妹の由美ちゃんうちにくることになりました」
「高橋由美です。中学でもテニス部でしたけど、ご指導宜しくお願い致します」
「可愛いー、高橋先輩も美形だったもんね」
一通り挨拶を終えると、今日は初日なのでこれで解散ということになった。
その後、1年女子だけでスタバによってお茶しながら連絡先の交換とかして帰宅した。

家に帰ると父さんが
「由美学校どうだった?」
と聞いてきた。
「うーん、疲れたけど、女子のグループに入れたしなんとかやっていけそう」
「そう、女子の付き合いは大変だからきをつけてね」
「うん、わかった」