家族の転換
 作:ふゆ

(2)

高校進学も決まり、後は卒業を待つばかりだ。
由美の親友の美香ちゃんから誘いがあって、会うことになった。
ホントは会いたくなかったが、だれも友達と会わないわけにもいかないと思い、
当日は由美のオレンジのセーター、ツィードのチェックスカートに白のダッフルコートを着て出かけた。
女性ばかりのオシャレなスイーツのお店で二人でファションや好きな芸能人の話をしても
僕が由美じゃないと少しも疑ってもいなかった。
こういうお店で美味しいスイーツを食べながらのおしゃべりって、女の子ならではの楽しみだよねと思いながら楽しくすごせた。

夜になると
「ただいま、あー疲れた」
と言いながら父さんが帰ってきた。
「おかえりなさい、どうだった?」
僕が聞くと
「うん、色々戸惑ったけど」
「なんでも自信たっぷりにやってるように見せると、結構上手くいっちゃうみたい」
笑いながらそう言った。
「あ、そうそう、明日休みだから由美の高校の制服買いにいくわよ」
そうか今度は女子の制服着て高校に通うんだ。
そう思うとすごく嬉しかった。

次の日、僕はボーダーニットにフレアスカートと昨日着ていたダッフルコートを着て
父さんは母さんのカシミアコートを着て出かけた。
「こんな高いコート看護師の給料じゃ買えないわ」
「やっぱり医者は違うわね」
そうつぶやく姿は上品な母親に見えて、とても綺麗だった。
デパートの制服売り場は僕たちのような親子連れで賑っていた。
ほとんどが母親と一緒で、こういう時はやっぱり母親がいるといいなと思った。
制服はブレザータイプでチェックスカートに濃紺のリボン。
セミオーダーなので、試着して店員のお姉さんに寸法を測ってもらうと
「お嬢様はスタイルがいいのでお似合いですよ。
お母様もお美しいし、美人母娘ですね」
と言われて嬉しかった。
ホントは父親と息子なんだよと言ったらどう思うだろう。

用事を済ませるとトイレに行きたくなった。
「お母さんトイレ行ってくるね」
僕がそういうと
「じゃあ私もいくわ」
父さんもそういって2人で行くことなった。
デパートの女子トイレに入るのは初めてで、父さんと一緒じゃなければ緊張したと思う。
入った最初の印象は、奇麗だ・・そう思った。男子トイレと違い上品なベージュの内装
パウダールームも付いていて、若い女性がそこでイスに座って化粧直しをしていた。
すれ違って行く人も僕たちに関心を払うことなく出て行き
見た目は母と娘でも、実は父と息子。そう考えてると下半身が反応してしまう。
ベージュのコートにグレーのスカートを履いた若い女性が出てきたばかりの個室に入った。
今の人がここに座っていたんだ、そう思うとますます感じて思い切り吐き出してしまった。
その後2人で婦人服売り場を見てると、デパートの店員が
「高橋様いつもお世話になっております。今日はどういった物をお探しですか」
と聞いてきた。
「今日は娘の制服を作りに来たんです」
「せっかくだから入学祝いになにか買ってあげるわ」
色々見てレッセパッセのワンピースを買ってもらった。
華やかな服を選びながら、女性ってホントに楽しい、そう思った。
母はこのデパートの上得意らしく、買い物を済ませてから
お得意様専用ラウンジに案内されて、丁重なおもてなしを受けた。
紅茶を飲みながら父さんが小声で囁いた。
「由美さっきトイレでしてたでしょう」
「え、わかっちゃた」
「わかるわよ、若いからでしょうけどドアの所にあれ付いていたわよ」
「だめじゃない、ちゃんと拭き取っておかないと、ばれたらどうするの」
「ごめんなさい」
床の上は拭き取っていたけどドアに付いていたんだ。
「私も女装を初めたころは、よく女子トイレで自慰をしたんだけどね」
そう言って笑っていた。

制服が出来上がって着てみると
父さんが羨ましそうに
「あらカワイイわね」
と言う。僕はそれを聞いて
「父さんも着てみたら」
そう言うと
「ええ? いいの?」
と、嬉しそうに答えた。
女子高生の制服を着た父さんさんは嬉しそうに
「女子高生の制服を着るのは夢だった」
そう話してくれた。

そうこうするうちに中学の卒業式の日が近づいてきた。
「由美卒業式出席するの?」
「あ、うん出席するよ、欠席しようかと思ったけど、セーラー服を着て卒業式に出てみたいし」
「由美も卒業式出たかっただろうから、僕が代わり出て上げないと」
「卒業アルバムに自分が出てないといやでしょ」
「父さんも母親として卒業式出てみたいとおもってるよね」
「まあ、由美ったらよくわかってるのわね」
2度も同じ中学を卒業するなんて思いもしなかったけど
今度はセーラー服を着て出席してるのでちょと緊張する。
全員で集合写真をとったあと、教室で由美の友達と
写真をとって卒業式はおわった。
由美のテニス部の後輩とか泣いて僕の卒業を悲しがってくれたので
出席してよかったと思った。
校門のところでセーラー服を着て卒業証書を持ち父さんと母娘として
写っている写真を見て卒業の思い出が作れて嬉しかった。