家族の転換
 作:ふゆ

(1)

 僕の家、高橋家は看護師をやってる父さんの隆、医者をやってる母加奈、中三の妹の由美
そして高三の僕・義之の4人家族だ。
父と母は同じ職場で知り合って結婚した。結婚するとき
母の両親には反対されたそうだが、なんとか押し切って結婚したそうだ。

 その日両親は仕事で妹は友達と出掛けていて、家には僕一人だった。僕は女装するのが趣味でその日もコッソリ妹の服を借りて女装していた。
妹は背が高く163もあり、反対に僕は164と小柄で妹の服は僕にピッタリだった
「こうして女装すると由美そっくりだな」
洗面所の鏡に写った自分をみていると、ガチャと玄関を開ける音がした。
まずい、だれか帰ってきた。
僕の部屋に戻るには、一度廊下に出て玄関のわきの階段に行かなければならない。
どうしよう、おろおろしてると足音は僕のいる洗面所に近づいてきた。
帰ってきたのは父さんで、洗面所にいる僕を見て
「なんだ由美いたのか。今日は友達と約束があるといってなかったか?」
父さんは僕を見て妹の由美と勘違いしている。
「どうしたんだ、そんな驚いた顔をして」
「ううん、なんでもない」
僕は思わずそう男の声で答えてしまったと思った。
父さんはびっくりした顔で
「義之、お前そうか、そうだったのか・・・」
そういうと黙って自分達の部屋に行ってしまった。
僕は化粧を落とし服を着替え自分の部屋にもどると
父さんはどうするんだろうと考えていた。

30分位してドアをノックする音が聞こえた。
身構えながらドアを開けると、見たことのない40代くらいの奇麗な女性が立っていた。
えっ? 誰? 
戸惑っていると「入っていいかな」と女性が話しかけた。
「父さん!」
声を聴くと、それは父さんだった。
「さっきはびっくりした」
「義之も私と同じだったなんて」
父さんは女言葉で声も少し低いけど、女性らしい声で話しはじめた。
父さんは若い頃から女装をしていて、結婚してからは控えていたがストレスがたまると女装して発散していたそうだ。
「母さんは知ってるの?」
僕がそう尋ねると
「実はそのことなんだが、女装が母さんにばれて離婚を切り出されているんだ」
「母さんの服着ていることが分かってしまい」
「そういうことは生理的に受け付けないと言われた」
「母さんのことは好きだし別れたくはないが」
「そういうことなら仕方がないと思い離婚することになりそうだ」
父さんは言葉をひとつひとつ押し出すように話す。
僕は二人に別れてほしくないと思い
「そんな、なんとかならないの」
と聞くと
「なに悪いことばかりじゃない」
「これを機にフルタイム女性で過ごそうと思うんだ」
「看護師なら女性になっても続けていけるし」
と、父さんは言葉を続けた。
「そうなんだ、そういうのも悪くないかもね」


その後離婚が決まり、父さんは家を出て行くと
女性看護師として働きはじめた。
僕はたまに父さんの住んでいるマンションに行き、女装を楽しんだ。
女装して二人で街に出かけることもある。
マンションの住人には、夫と別れて一人暮らし。子供は夫が引き取ったと説明してあるらしい。
一度隣の住人に会った時
「あら、娘さん?」
「娘の由美です」
「母がいつもお世話になっております」
「まあ、お母さんに似て可愛らしいお嬢さんね」
そう言われてうれしかった。
ある日父さんさんのマンションを訪ねインターホンのボタンを押すと、出てきた人を見て驚いた。
「お母さん!」
「どうしてここにいるの?」
母さんは微笑みながら
「いらっしゃい」
と言う。その声は父さんの声でした。
「さあ入って」
戸惑いながら部屋に入り
「どういうこと?」
僕がそう尋ねると
父さんは女性に見えるがより女性に近づくために整形をすることにしたと答えた。
「母さんと別れたが、まだ母さんのことは愛してる」
「母さんに初めて会った時、とても綺麗で」
「ああ、こんな女性になりたいと思ったんだ」
母さんそっくりの顔に整形した理由を、そう話してくれた。



僕は大学受験も終わり、春から大学生になることになった。
父さんも喜んでくれて、女装して旅行に行かないかと誘われ、2人で行くことにした。
ところが旅行の3日前に急な用事で2人ともいけなくなってしまった。
どうしようか迷った末に母さん達に話したところ、
用事もないしキャンセル代ももったいないので、母と妹の二人で行くことになった。
当日TVを見ているとニュースで
「ただいま入ったニュースですAAL908便がトラブルを起こし墜落した模様です」
「空中分解を起こし生存者がいる可能性は絶望的です」
AAL908って母さん達が乗った飛行機だ。
僕はあまりの衝撃に呆然とした。
その後父さんが駆けつけてくれて
情報を集めていると、どうやら海流の流れが早いところに落ちたらしく
遺体が見つかることは絶望らしいことが分かった。
乗客名簿には父さんと僕の名前がのっており、死んだのは僕たちと報道されていた。
「僕たちが死んだことになってる。訂正しないと」
僕がそういうと
「いや待って、いい機会かもしれない」
そう父さんがつぶやいた
「どういうこと?」
僕がそういうと
「このまま私が死んだことにすれば、母さんとして暮らすことができる」
「そうすれば本物の女性として生きてゆけるし」
「ずっと母さんになれたらと思ってたから」
「仕事はどうするの?」
「一度女医やってみたいと思ってたの」
「父さん医者なんてできるの?」
「外科とかは無理だけど、内科医くらいなら看護師を20年やってれば大丈夫よ」
「そうなんだ」
その話を聞いて僕はあることを思いついた
「ねえ父さんさん僕も由美として生きちゃだめかな?」
「ええ!」
父さんはびっくりした顔で
「でもあなたせっかくいい大学受かったのに」
「大学は3年後また受けれるし」
「大学に行くより女子高生として高校通えるほうがずっといいよ」
「それに女の子になれば女子大もいけるし」
「それもそうね、私も女子の制服着て高校行きたかったな」
こうして僕たちは、父さんと息子から母と娘として生きていくことになった。

告別式を行うことになり、僕はなにを着ればいいんだろうと思っていると、父さんから
「貴方は由美になるんだから由美のセーラー服を着て出席しなさい」
と言われた。由美の部屋にいくと、いつも着ている制服が壁にかかっていた。
「由美ごめん君の服をもらうよ」
そういいながらそれを着て鏡を見ると、いつも見慣れてる妹の由美が立っていた。
裏地のスベスベ感、太ももに触れるプリーツスカートの感触
下半身が反応してしまい、こんな時にダメと思いながら自慰をしてしまった。
父さんも女性の喪服は持ってないので母のを使うことにしたらしい。
母の持っていた黒のワンピースにボレロの上着を着てパールのネックレスを付ける。
父さんは鏡に写った自分を見ながら
「やっぱり医者はいい服きてるわね」
と言いながら、満更でもない顔で鏡に写った自分を見ていた。

僕たちの告別式には、僕は由美のセーラー服を着て、父さんは母の喪服を着て出席した。
僕の同級生や親戚の人達も来てくれた。
でも父さんは母そっくりに整形してたし、僕は女装すると由美そっくりなので
だれも僕たちのなりすましに気がつかなかった。
孫の葬式なので父さんの実の親も来ていた。
「お義父さんさんお義母さんわざわざありがとうございます」
挨拶してもそれが実の息子だとは気がついていなかった。
「由美ちゃん、困ったことがあったらなんでもいってきなさい」
「うん、ありがとうおばあちゃん」
僕のこともすっかり由美だとおもってた。


葬儀も終わって父さんと二人きりになり、これからのことを話し合った。
「女性になったばかりだから、服を揃えるのが大変だったけど」
「これからは母さんの服を着ることができるから助かるわ」
「僕も女の子の物は由美のを使えばいいからよかった」
「ねえどんな物あるか見てみない」
そういって寝室に入ると、2人でクローゼットを開けた。
父さんはクローゼットの服を一つ一つ手に取っては、嬉しそうな顔をした。
「この服素敵」
「このスーツは僕のお受験の時着ていたスーツだ」
「ああそうね、父さんはそっちを着て受験の面接に行きたいと思ったの覚えてる」
「へえ? じゃあ着てみれば」
僕がそういうと父さんはちょっと迷った顔をした。
でも今着てる服を脱いで、ワンピースを着て紺のジャケットを羽織リパールのネックレスを付けると僕の方を向いた。
「どう?」
「あの時のお母さんそっくり」
「これからは母親として生きていけるのね」
奥の方に可愛らしい20代の女性が着るようなワンピースを見つける。
「あ、それ母さんと出会った頃よく着てたワンピースだ」
「懐かしいわね、まだとってあったんだ」
「由美に似合いそうね着てみたら」
そう言われて着てみた。
「若い頃の母さんそっくり」
そう言いながらアルバムを持ってきて見てみると
同じワンピースを着たお母さんの写真は、今の僕にそっくりだった。

父さんは住んでいたマンションを引き払う事にしたが、家財道具はこちらの物が
使えるので引っ越しはすぐ済みそうだった。
その日から父さんは母の使っていた部屋を使い、
僕は由美の使っていた部屋を使うことにした。
机を調べてみると、由美の使っていた日記を見つけたので読んでみることにした。
人の日記を見るのには抵抗があったけど、今の僕は由美なんだから自分の日記を読むだけなんだと言い聞かせて読んでみることにした。
付き合ってる彼とかはいないみたいだけど、僕のテニス部の後輩永山に気があるみたいだ。永山も由美のことは気にいってると言っていたので、上手くいけば二人は付き合っていたかもしれない。
その後スマホの履歴などを調べ、由美の交友関係は大体把握できた。
色々あったので疲れて由美のパジャマを着てベットに寝ると、由美の体臭が残っていて下半身が反応してしまった。