ふゆさん総合



兄の妻

作 ふゆ



第二章

都会のタワーマンション、今日からここが僕の家なんだ。窓から見える夜景が綺麗で田舎の家とは大違いだ。

朝早く起きて家族の食事を作る。そろそろ時間だ、お兄ちゃんを起こさないと

「あなた時間よ、起きて」

「うーん、もう朝か」

ふふ、お兄ちゃんは子供の頃から寝起きが悪かったね

「正隆さん、今日は少し涼しいからこっちのスーツを着てってね」

「お、珍しいな。何時もは、朝は忙しいんだから自分の服は自分で出しって言うのに」

酷いな、紗枝さんたらそんなこと言うんだ

「貴方が頑張ってくれてるから、私たちはこうして暮らしていけるんだから」

「そうか、ありがとう」

「いってらしゃい、あなた」

そう言ってお兄ちゃんを送り出す。次は美樹を幼稚園に送っていかないと

「美樹、幼稚園に行くわよ」

「うん」

幼稚園に着くと先生にご挨拶する。

「おはようございます先生、今日もよろしくお願いします」

「おはようございます、実家に帰っていらしゃったんですよね」

「ええ、美樹も楽しかったって喜んでくれたんですよ」

「よかったね、美樹ちゃん」

「うん」

他の園児のママとにこやかに挨拶しても、誰も不審に思わない

そうそう隣の人に帰省のお土産持って行かないとね

隣の奥さんはマンションのボスで、紗枝さんもだいぶ泣かされたって言っていた

「ごめんください、隣の白石です」

「あら、白石さんの奥さん、おはようございます」

「主人の実家に帰省したので。お口に合うかどうかわかりませんが、召し上がって下さい」

「まあ、結構な物をありがとうございます。せっかですからお茶でもどうぞ」

お誘いを断ると機嫌が悪くなるって言ってたな。相手をしないと

「すいません。お言葉に甘えて、おじゃまします」

その後すっかり話し込んで、隣の奥さんを上手く懐柔してしまった

なんだ、あの程度の人に手こずっていたの。紗枝さんもだらしないな

スマホでスケジュールを確認すると、今日のお昼はママ友とランチ

どんな服を着て行こうかな。派手にならず、かといって地味な恰好じゃ陰で馬鹿にされるから

クローゼットを開けると、素敵な服が沢山並んでいた。

それにしても高そうな服を沢山もってるね。一緒に外食する時なんて絶対払おうとしないくせに

あ、このバッグヴィトンだ、こっちはシャネル、家に来るときは持ってこないのに、隠してたんだ

ホント頭にくる女だ

ふふ、でもいいや

趣味のいいオシャレな服

高価なアクセサリー

上品なバッグ

今はこれ全部僕の物だもの

街できれいな服を着る女性を羨ましいと思ってたけど

僕も、女性のファッションが楽しめるようになって嬉しいな

ボーダーニットにミモレ丈のスカートを履いて、鏡を見ると
奇麗な女性が映っていた。

今年で30のはずだけど、25くらいにしか見えないね

あの女、性格は悪いけど顔とスタイルはいいよね

お兄ちゃんもそれに騙されたんだ

可哀想なお兄ちゃん。これからは僕がお兄ちゃんを大事にしてあげるからね


ランチに出かけると、ママ友は皆揃っていた。

「美樹ちゃんのママ、いらしゃい」

早く来て1対1になるとボロが出やすいので、わざと遅く来て正解だ

「皆さん早いわね、遅れてすいません」

「ううん、皆が早すぎるのよ」

最初は顔と名前が分からないから、自分から発言することは控えていた。

皆の会話から名前と顔が分かり始めてから会話に加わりはじめて、最後には場の会話をリード出来るようになった。

ふふ、僕にはこの人達を仕切るなんて簡単だ。僕から見たら、皆世間知らずのお嬢さん

それにしても、みんな都会の女性だから華やかだな。田舎の男の集まりとは大違い

僕も周りからはそう見られてるんだ、嬉しいな

あ、そろそろ美樹を幼稚園に迎えに行く時間だ。そうだ、帰りにマックに寄ってみよう

もうずっと行ったことがない。いつか美樹と一緒に行ってみたいと思ってたけど、あの女がいつもジャマをしていたからな

「ママー」

幼稚園に美樹を迎えに行くと嬉しそうに、僕の所に走ってくる。

すっかり僕を母親と信じて疑わない。

「美樹今日は幼稚園でいい子にしていた?」

「うん」

「そう、じゃ今日はマックに寄って行こうか」

「え、いいの、いつもダメっていうのに」

「ふふ、いいのよたまにはね」

ハンバーガーを美味しそうに食べる美樹を見て、やっぱり姪は可愛いと思った。ううん、もうこの子は僕の娘。可愛いのは当然だよね



「ただいま」

帰ってきたお兄ちゃんを玄関まで出迎える。

「おかえりなさい、あなた。先に夕飯にする、それともお風呂?」

「うん、夕飯を先にする」

「わかったわ、着替え出しておいたから着換えてきて」

ご飯をよそって待っていると、やがてお兄ちゃんが入ってきた。

「珍しいね、最近玄関まで迎えに出るなんて無くなっていたし、美樹が生まれてから身の回りのことは自分でやってねって、言っていたのに」

「それはね、こないだ帰省した時にお義母さんのお話を聞いて、私も妻としてもっと頑張らないといけないなって思ったの」

「そうか、母さんが生きてた頃の思い出話か」

「そうよ、いいお義母さんね」

そういうとお兄ちゃんはとても嬉しそう顔をする。

「そうか、帰省してよかったな」

美樹を寝かしつけて、二人きりになった。

紗枝さんは子供は1人で十分と言っていたみたいだけど、僕もお兄ちゃんの子供を産んでみたい

大好きなお兄ちゃんに抱かれる

そう思うと自然と濡れてきた

お兄ちゃんをベットに誘い、裸になった

きめの細かい白い肌

柔らかい二つの胸の膨らみ

ああ、僕は女性になったんだ

久し振りに見るお兄ちゃんの物

僕の物より立派だ

それが僕の中に入ってきた

その瞬間、強烈な快感が僕を襲った

大好きなお兄ちゃんを、あの女から取り戻した

その思いが今まで味わったことのない、快感をもたらしている

固くて、愛おしく感じる

お兄ちゃんのほうも

「ああ紗枝、今日はいつもよりいいよ」

そう言って何度も僕の中で果てた



お兄ちゃんの妻としての幸せな毎日。

ママ友とランチを一緒にしても、誰も不審に思う人はいない。

隣の奥さんに気に入られたおかげで、近所付き合いも上手くいっている。
マンションの住人から頼りにされて、紗枝さんの時より良好になったみたいだ。

美樹も、紗枝さんの時より好きって言ってくれる。

「ママ、前より優しくなった」

美樹にそう言われて、姪から自分の娘になって可愛くてしかたないから、そう思うのかなと思った。僕の初めて子供だから。

お兄ちゃんも、前より感じが良くなったと言ってくれている。

夜のほうも、紗枝さんはあまり積極的ではなかったみたいだけど
僕の方から、もう一人作りたいと積極的に誘うようになった。

最近紗枝との夜が楽しみになった。そうお兄ちゃんはそう言って、以前より早く帰って来ることが多くなった。

なにもかも順調だ

どう紗枝さん、お兄ちゃんの妻には貴方より僕の方が相応しいでしょ



卓也が東京に遊びに来るというので、その日、美樹のことはお兄ちゃんに見てもらって会いに行った。

僕と卓也は女性に人気な、オシャレなカフェに入ることにした。

「ここって女性誌やTVで取り上げられる、人気カフェだよね。
 さすが、みんな華やかなファッションに身を包んだ女性ばかりだね」

「そうだね女性しかいないね、男の頃だったら絶対に入れないよね」

僕たちは席につくと、周りを見て感想を言った後で、改めておしゃべりを始めた。

「卓也、久しぶりだね」

卓也は僕の事をしげしげと眺めた。

「ふーん、その娘がお兄さんのお嫁さんなんだ。ずいぶん奇麗な娘だね」

「そうなんだ、お兄ちゃんもこの外見に惑わされちゃったの。もう何でもこの娘の言いなり」

「そうそう、男は、結婚しちゃえば、なんでも嫁の言いなりだから。
 僕も何度この嫁に不愉快な思いをさせられたことか」

「ふふ、でもいいじゃない。好きな人を奪い返して相手の全てを奪ったんだから」

「そうだね。うちの兄嫁なんかうつ病になっちゃって、病院に通ってるよ。いい気味だよ」

「うちのほうは、なんとか1人でやってるみたい。気が強い娘だからね」

「そうなんだ。でもお嫁さんさすがに都会の女性だね。垢抜けて、着てる物もセンスいいよ」

「うん、そうだね、この娘とってもお洒落なんだ。この服とか、僕すごく気に入ってるよ、
 でも卓也だって、その服いいじゃない自分で買ったの?」

「ううん、兄嫁の服だよ、兄嫁が着てるの見て、いいな僕も着て見たいて思ってたから、
 今日着てきたんだ」

「そうなんだ、良かったね、自分も着られるようになって」

僕がそういうと卓也は小さく笑う。

「でもね、兄嫁は僕が自分の服着るの快く思ってなくて、この服も兄嫁のお気に入りだったから、これ着て出かけるの見て睨んでいたよ」

「ふふ、悔しかったんだろうね。その服卓也にとっても似合ってるから奇麗だよ」

その言葉を聞いた卓也は、僕の手を触りながら羨ましそうに呟いた。

「ううん、浩介には負けるよ、肌なんてすべすべで凄く綺麗だね」

「これはお義姉さんがエステの会員になってたから、そこで手入れしてるからかな」

「へえ、浩介もエステに通ってるんだ」

「うん。男だった頃は、エステなんて高いお金払ってまでどうして行くんだろうて思ってたけど、女性になるとやっぱり好きな人の前では奇麗でいたいって思うから、エステに通う女性の気持ちが分かったよ」

「そうだね。僕も女性になってから、いつも綺麗でいたいって思うようになったよ」

「うん。それに僕の行ってるエステって高級な所らしくて、接客とか良くてもう至れり尽くせりだよ」

卓也はからかうような表情を浮かべた。

「浩介はセレブの奥様みたいだね」

「あはは、そうだね中身は男なのにね」

「そのバッグも、ヴィトンだろ」

「そう、ヴィトンの他にシャネルも持っていたの。僕の前では使ったことないのに、小賢しい女だよ」

「じゃあ、今度帰省する時、そのバッグ使ってるの見せつけてやればいいんじゃない」

「あはは、それはいい気味だね、きっとスカッとするね」


その後二人であちこち見て回り、ふと時計を見ると、大分時間が経っていた。

「あ、ごめん卓也そろそろ帰ってお兄ちゃんと美樹の夕飯の支度しないと」

「ふふ、そうだね、女は夫と子供の世話があるから。浩介もすっかり主婦になったね」

「そっちは、今日お兄さんの世話どうしたの」

「兄さんの世話は、お母さんに頼んだから」

「ああそうなんだ、こういう時は親と同居してるといいね。いくら遅くなってもいいし」

「ううん、田舎の嫁だとそうもいかないよ。あんまり遅くなると近所の目もあるし
 お母さんに嫌みも言われるから。兄嫁なんかいつもねちねち言われてたよ」

「そうなんだ。男だった頃は気にしなかったけど、女だとそういうのあるよね」

「でも凄く生活変わったよね。数か月前までは、よく男二人で朝まで遊びまわっていたのに、
 今じゃ主婦になって、夫の夕飯の心配してるんだから。
 浩介は男のままだったら、この後東京の本社戻ることになっていたんだろう。
 それってエリートコースだろ。もったいなくなかった?」

「ううん、仕事に未練はないよ。家事をするのは好きだし、主婦やってるの楽しいから。愛してる人の世話が出来るの幸せだよ」

「そうなんだ、浩介はいいお嫁さんだね」

そう言われて、僕はちょと恥ずかしくなってしまった。

「そうなのかな、卓也はまだ働いているんだろ」

「うん、僕は親と同居だから家事の大半はお母さんがやってくれるし、兄嫁と同じ銀行だったから、仕事も大丈夫だし、でも今は女子の制服着て窓口業務だけどね」

「いいね、女子の制服着てOLやってるって。女子更衣室で、女の子たちといっしょに着替えるんだ」
 
僕がそう言うと、卓也はからかうように聞いてきた。

「どう、羨ましい」

「ふふ、そうだね僕も女子の制服着てOLやりたかったな。入れ替わって戸惑う事なかった?」

「うん、最初の頃は、女子はみんな男だった時からの顔見知りだから、
 一緒に着換えるの恥ずかしくて、何おどおどしてるのって言われたり、
 変に思われる事もあったよ」

「そうなんだ、卓也も女子更衣室で噂話とかしちゃうの?」

「そうだね、初めは緊張してたからほとんど喋らなかったけど、今は女子のみんなと
 上司の悪口とか社内の噂話しとかしてるよ。話してみるとおとなしそうな娘が、
 こんな大胆なこと言っちゃうのって感じで、女は見かけじゃ分からないことばかり。
 女子更衣室でのおしゃべりて面白いよ。OL生活も楽しいね」

「あはは、僕もママ友の付き合いで女子会とかするから分かるよ。
 夫との夜の話とか、女だけだと顔が赤くなっちゃうようなこと平気で言うよね。
 男だった頃には分からない事だね」

「ふふ、プライベートは男より女性の方が楽しいことが多いよね。
 こうして奇麗な服着てオシャレなお店行ったり、また今度浩介と東京で遊びたいね」

「うん、そうだね、またこっちにも遊びに来てね」

そう言って卓也は田舎に戻っていった。



三章に続く