「どきどき表裏不同《Ver.2》」
(この作品を怪人福助氏に捧ぐ)


2.イリュージョン・スーツ
   作:貴人福助
   日本語訳:toshi9、夏目彩香


動画を全部見終えた私は、呆然としていた。
それは本当に衝撃的な内容だった。
人があんなにも変わることができるとはとても信じられなかった。
自分よりもがっちりした体格の西洋人の男が、清楚な東洋の美人に変身する場面は、CGで精巧に作られた映画を見ているかのようだった。
だが、その動画は全く編集された様子がなくロングカット方式で一度に撮影したもののようだ。
ただカメラを置いて撮った映像のようで、CG処理されているようには見えない。
そうは言っても、その内容はすんなりとは信じらるものではなかった。

私はキャリーバッグから中身を全部出してみた。
映像で女が説明していた通りのものが、一つの漏れなく入っていた。
さらにカバンの内側の隠し財布には、確かに真新しい5万ウォン札紙幣が溢れるように入っていた。
きちんと数えはしていないが、ざっと見ただけで少なくとも1千万ウォンはあるように見える。

なぜ彼女は私にこのカバンを渡したのだろうか?
思い当たることはある。それは、彼女が女装趣味を持っているということだ。

私は、インターネットで女装サイトに登録し、毎日のように他人の女装した姿や女装小説を見ては、そこにコメントを入れたりしていた。
若い時には直接そのような人々と交流もしていた。
だが年を取るにつれ、直接的な交流はほとんど無くなり、今はインターネットを通じて見て楽しむ程度になっていた。
多分あの女は、そんな私の嗜好を知っていたのだろう。

だが、彼女は誰なんだろう?
こんな道具と大金を何の条件も無しに他人に渡すような人間など、私の頭の中には簡単に浮かんで来なかった。

何人か、以前交流のあった仲間の顔が思い浮かんだりしたが、どう考えてもこんなものをくれるような人物はその中にいないように思える。
実際、その仲間もすでに10年以上、何の連絡もしなくなっていた。
だから、わざわざ私を訪ねてきて、こういうものを譲り渡す人物がいるとはとても考えられない。

だが、彼女は映像の中で近々会うことになるだろうと、そして一度自分自身で探してみろと言っていた。
それは即ち、今この瞬間にも私の身近に彼女がいるかもしれないという事だ。

いったい誰なのか?

私は自分の身の回りの女性たちを思い浮かべてみたが、彼女だろうと思える人物はなかった。
そもそもあれほど完璧な変装であれば、たとえ話をしたとしても、相手が変装なのかどうか見分けるのは難しいように思えた。

突然、疲労がどっと押し寄せてきた。
普段ならば、とっくに熟睡している時間だ。
私は床に広げたものをひとまとめにして、再びキャリーバッグに入れた。
女物の服も、薬箱も、かつらも入れたところで、さっきの映像で西洋人の男がかぶっていたものと同じ外見のマスクを手に取ったところで、私は手を止めた。
そしてそのマスクをしげしげと眺めた。
そのマスクは本当にまるで生きているかのような出来だった。

私もこれをかぶれば、あの男のように変身することができるんだろうか?

そう思いながらベッドに横になった。
さっきからどっと疲労が押し寄せていたが、結局すぐに寝ることができなかった。
映像で見た、男が女に変わっていく様子が、目の裏にありありと焼きついているからだ。
私は何度も寝返りを打ちながら、眠る為の努力をするしかなかった。


翌朝、私は起き上がって顔を洗うと、鏡に映る自分の顔をじっと見た。
汚らしく、ぶくぶくしたその顔が無性に嫌な感じがした。
お湯で顔を洗い、スキンローションをいくら塗っても、大して見栄えの変わることもない顔。
そんな自分の顔を見ているうちに、昨日見た映像が思い出されてきた。
この顔と比較したら、あの西洋人の男が変身した女の姿は何と美しかったことか。
私もあの道具を使えば、本当に同じようにあの美しい女性に変身できるのだろうか?
はっきり言って、私は自分の顔、体が気に入らなかった。
ぶくぶく太ったごつい顔、もうたるみ切ったお腹のぜい肉。
一時はかっこいい体格になろうとフィットネスクラブ通いもしたが、ほとんどこの体型が変わることは無かった。

そして、私は未だに女装することに対する憧れを持っていた。
そう、あの道具は女装を楽しみたい人間にとって、それこそ夢のような道具ではないか!
カバンの中には今、女性に変身できるその道具がたくさん入っている。
服だって全部可愛くて素敵なものばかりだった。
あの服が似合う姿になって、堂々と外に出てみたいという思いが堪えようもなく湧き上がってくる。
女になって、女として街を歩き、コーヒーショップに入って女としてコーヒーを飲んでみたかった。

よく、美しい女性は、例えどんな場所であっても、そこに居るだけで絵になると言う。
自分自身がそんな絵になる存在になれるということは、考えただけでもすばらしいことだった。

私はカバンを置いた部屋に入ると、パソコンの電源を入れ、カメラを繋いだ。そして昨日見た映像とは違うファイルも見てみた。
そこには変身スーツの使い方と注意事項が詳しく記されていた。
それは冒頭部分を読むだけで十分に理解できるものだった。
そう、意外と難しくないように思った。

自分がなりたい特定の人物になる方法も記されていた。
映像の中には、フィギュアスケート選手のキム・ヨナと全く同じ顔と体に変身してしまうシーンもあった。
それは本当に凄いとしか言いようのない場面だった。
勿論、ある特定の人物と全く同じ姿に変身するには、かなりの熟練した訓練が必要だろうと思われた。
だが、単に女になることならそれほど難しくはなさそうだった。

着てみたい、これを着て女の姿に……
胸の奥からこみ上げる衝動に捉われた私は、まずは収縮薬を使わず、そのまま全身スーツを着てみることにした。
まずバスタブにお湯を張ると、例の粉末薬を、映像通りの量を注いでかき回した。
しばらくかき回すと、お湯はスープのようにどろっとしてきた。
動画を見ただけでは気がつかないものだ。
とにかく、これが全身スーツの中に吸収されて人間の脂肪組織に変わるようだった。

バスタブの中の薬を作り終え、私はスーツを着る準備を始めた。
スーツを着た自分自身の姿がどのように変わることになるのか気になっていた。
ます錠剤を飲むと、映像に出ていた通り、全身スーツを取り出して着始めてみた。
だが全身スーツに体を入れてみて、すぐに全身スーツと自分の皮膚がくっついてしまい、思ったより着るのが難しかった。
少し体を入れた時点で、私は肌にオイルを塗っていないことに気がついた。
幸い、浴室にオイルを置いていたことに気づいた。
私は全身スーツを着るのを一旦止めて浴室からオイルを持ってくると、自分の体の至る所に塗り始めた。
オイルの香りが部屋の中いっぱいに広がる。
そしてオイルを十分に塗って全身スーツを着ると、今度はさっきと違って私の体は全身スーツの中に滑らかにすべり込んでいった。

用心深く全身スーツの指一本一本と自分の指をぴったりと合わせていった。
だがスーツの手は、自分の指のよりも短かった。
そこに無理やり入れると、全身スーツを広げながら手をぎゅっと握りしめた。
思っていたよりも、かなり窮屈だった。
だが、手の皮膚の色が変わったことだけでも、それは今までの自分のごつごつした手とは全く違うものになっていることを実感した。
自分の手が繊細でなめらかな女性の手になったように見える。
さらに本当の女性のように細く小さなものになったとしたら、いったいどれほどかわいいものになれるのだろうと、私は小さな興奮を覚えた。
私はもう一方手も全身スーツの中に入れた。

続いてマスクを手に取る。
頭からかぶると、まず唇の部分を合わせ、それからまぶたの部分を合わせた。
だが、まぶたの部分の位置を正確に合わせるのは、かなり難しい作業だった。
鏡を見ながら片方の目を閉じて、閉じた側のまぶたの上にマスクの目の部分にある薄い膜を付けて目を開いてみたが、ずれてしまっているのか歪んでいた。

確か、映像ではぴったりまつげの真上に正確に境目を合わせなければいけないと説明されていた。
私はかろうじて一方の目を合わせると、ようやくもう一方の目にとりかかった。
そわそわしながら根気強く皮をつけたり離したりという作業を繰り返していく。
そうこうするうちに、ようやく私は目元を整えることに成功した。
出来上がった目元は、本来の私の目よりも少し大きく、ぱっちりとしたものになった。

ようやくマスクと全身スーツを着た私は、次に女性の下腹部そっくりのガードルを取り出してはいた。
自分のジュニアをガードル内側の容器に入れ、ぴたっと密着するように引き上げた。
これで私のジュニアの形状は消え、少しだけ女らしい下腹部になった。
私の姿は、ここまでである程度女らしく見えるようになったと感じられた。
体全体のスタイル、輪郭はまだ男っぽいが、全身スーツとガードルを着用しただけでも少しだけ女性らしい曲線を持てたこと、そして肌の色が白くなったことで、十分女性の姿になれた気がした。

この体に女性服を着れば、多少おかしな箇所はあっても十分自己満足できる出来だと言える。
だが、全身スーツで覆われた体は所詮つくりものであり、それはあたかもよく作られたマネキンといった感じしかしないのも事実だった。
そう、ここに立っているのは動くマネキンでしかない。

そろそろバスタブの中に入ろうと思った。
全身スーツを着るのに時間がかかった為、バスタブに張った薬湯はすでにぬるく冷めてしまっていた。
私はお湯の蛇口を開いて熱いお湯を加えると、よくかき回し、それから自分の体を薬湯の中に沈み込ませた。

からだを浸していると心地よかった。
だが、それも束の間、少しずつ全身スーツが縮まり始め、全身に苦痛が押し寄せてきた。
無理やり体全体の関節という関節が圧迫されていく感じだ。
私は体を何度もひねって苦痛を耐えてみようとしたが、それは容易なことではなかった。
昨夜の映像で、こういう苦痛があることをあの女は十分に警告していたし、あらかじめ鎮痛剤も飲んでいたのだが、結局何の効き目もなかった。
私は動画に出てきた男のように、からだを弓のように曲げ、痙攣するように何度も体を動かした。
私が動くたびに浴槽の薬湯は外にこぼれ出ていく。
だが幸いに、苦痛を感じていた時間はそれほど長くはなかった。

少しずつ痛みは収まり私は静かにからだを浴槽の中に沈み込ませた。
ふーっと長いため息をつくと、温かみの残っている浴槽の中に体を浸し続けた。
少しして頭を下げてみると、自分の胸になじみのない膨らみができているのが見えた。
それは女の胸だった。
胸の先には、ほんのり赤い乳頭もついている。
私は静かにその胸に触り、乳頭にもそっと手を触れてみた。
それは昔つきあっていた女の胸を少しも違うところのない女の胸だった。
いや、彼女のものよりもはるかに可愛く見える胸だった。
そのやわらかい感触や形は本当に女の胸と一つも違いがなかった。

ただし、神経が繋がっている訳ではないので、胸を触っても、触られている感覚がないのが少し残念だった。
だが、私は本物の女になることを望んでいるわけではないので、関係ない。
外見だけが完ぺきな女になることができるということだけでも十分満足だった。
これなら女性の中に混じってまっ裸になったとしても全く感づかれることはないだろう。
この姿ならば女場に何の遠慮もなく入ることができそうだ。

私は浴槽から出ると、シャワーでからだの隅々まで洗った。
私の全身のところどころにはまだ収縮液が残っていた。
シャワーを浴びながら、私は浴室の中がいつもと違って見えることに気がついた。
全てのものが、さっきまで大きく見えるのだ。
よくみると、今の身長は10センチ以上低くなっているようであり、恐らくそのためだろうと思った。
シャワーを掛ける留め具の場所も高く感じられ、浴室の天井も高く見えた。
体が変わると、普段生活している自分の家であっても違って見え不思議に思った。

私は体をを洗いながら、排水溝に流れ出ていくお湯の流れを、珍しいものを見るかのように眺めていた。
ほんのりと赤く染まったやわらかい肌の上を流れていくお湯の流れが新鮮で、とても美しく見えた。

シャワーを浴びながら、胸の中に透けて見える血管に目がとまる。
それは明らかに自分の血管でない偽物の血管なはずなのに、全くそうは見えなかった。ここに傷を受ければすぐに真っ赤な血が吹き出てきそうだった。
それほど今の自分のこの胸は生々しく生命感があった。

シャワーを終えると、私は浴室の壁にかかった鏡に自分の姿を映し、じっくりと調べた。

完ぺきで、
そして本当に美しい。

その言葉以外に口からは何も出て来なかった。

それは今まで見てきた角張った体とは全く違う、小柄な体格だった。
ぎゅっと抱き締めてあげたくなるような華奢なスタイル.。
年を取ってたるんでしまった皮膚の跡形など全く無い。
あたかも10代の少女のような、はちきれそうな少し赤みを帯びた肌は、本当なのかつねってみたい程可愛く見えた。
体の隅々に贅肉ひとつない素晴らしいスタイルだった。
本当に心が引き込まれていくような魅力的な体だった。
そう、私はこういうスタイルになりたかったんだ。

足を広げて、自分の股の間を調べてみた。
そこにあったのは、間違いなく女のモノだった。
尿道らしきものもちゃんとあった。
ひだを広げてその中を覗いてみても、そこは女性のモノと何一つ変わらなかった。
私は広げたひだの中にある膣の入り口から指を入れてみた。
柔らかいながらもぴったり吸い付くような膣の内側の感触がとても気持ち良かった。
その上、指はかなりの深さまで入っていく。
ただのガードルだったはずなのに、今どうしてこんな奥深くまで穴ができてしまうのか、さっぱりわからない。
だがここまで深い膣であれば、もっと太いモノであっても十分入りそうだった。
指で中をこねくり回してみても、膣の中からは快感どころか、特に感覚と言えるものが何も伝わってこない。
だが指から感じられる感触は、本物の膣の中に入れているかのようなものだった。
この感触であれば、確かに男の相手をしたとしても、絶対に感づかれることはないというあの言葉が納得できる。
ただし、膣の中にしっとりした湿り気が全く感じられないのには、少し変な感じがした。まあ、それはあらかじめ潤滑液を塗っておけば良いのであろう。
それで本物と何ら変わらなくなるのだ。

後はこの美しい体に似合う、長いストレートヘアのかつらをつければ、完ぺきな女の姿になることができるだろう。
私は部屋に戻ると、カバンの中にあるかつら中で最も髪の毛の長いかつらを取り出した。
髪の毛が一つもなくつるつるした頭にかつらを取り付けるのは簡単なことだった。
だがそのままかぶっただけでは、ずれ落ちそうだ。
私はかつらを取ると、その裏に接着剤を軽く塗った。
そして、もう一度かつらを頭に完全にくっつける。
すると今度は髪の毛を手で掴んで引っ張っても本物の髪の毛と同じように簡単に抜けることは無かった。

私は、ふと気になり別のかつらを手の取ると、その毛根の部分を調べてみた。
すると、そこには本物の人間の髪の毛と同じように毛嚢(もうのう)までもがついていた。
それは本物の本当に毛嚢かと思うほどに同じだった。
誰かがこの髪の毛を抜いたとしてもかつらだとは全く分からないだろう。
世の中にこんなかつらがあるなどど想像もできなかった。
毛嚢までもがついている程、精巧にできている髪の毛なのだ。
これなら本物の頭から髪の毛が生えているのと全く見分けがつかない。
実際に映像の中で女はこのかつらをかぶったまま美容室に行っても、美容師が絶対に本物と区別できないと言ったことを思い出した。
美容室はもちろんのこと、マッサージを受けたとしても全く支障がないとも言っていた。
それじゃ、今日このまま美容室に行ってみようかな?なんてこともつい考えてしまう。

次に、私は自分の声を女声に変換する準備をすることにした。
映像で見たように両側の空いたビニール袋がカバンから取り出した道具の中から取り出すと、私はそれを頭からすっぽりとかぶり首のところですっと引っ張った。
薄いビニールは、特別なことをせずに首にぴったりくっついたが、ほとんど圧迫感は感じない
そうしては私はおもむろに声を出してみた。

「あ、ア、こんにちは」

驚くべきことに、私の口から出てきた声は、清らかに澄んだ女性の声そのものだった。
それほど喉仏を響かせせることなく、声がすぐに喉を通過してくるといった感覚だった。

本当に不思議な感じだが、それは完ぺきに女の声であった。
私はわざと笑ってみた。
すると女性らしくはないのだが結構それらしい笑い声になった。
本物の女性のような笑い声にするためにはどうしても少し練習する必要があるようだ。

これで私は、完ぺきな女の姿と声を手に入れた。
目に入れても痛くない程、可愛らしい女の姿になったのだ。

私はカバンに入っていた服を取り出し、どれを着ようかと悩んだ。
しかし、初めて見た時にはかなり色々と服が入っていたよう見えたが、実際のところ今の姿に合わせようとすると選択する余地が無いほどしか入っていないことに気がついた。
セーター1枚とワンピース、そしてカジュアルな服が2着、下着はいろいろあるが、それが全部であった。
確かに小さなキャリーバッグに衣装ダンスのようにたくさんの服が入っているわけがなかった。

私は、ひとまず下着から着てみることにした。
選んだのはピンク色の水玉模様のパンティだった。
もっと派手な柄のパンティもあったが、最初なので少し落ち着いた感じのものにしようと思った。
なんと言ってもお金は十分にあるのだ。
今日にもショッピングに行って気に入ったものを買ってくればいいのだ。

続いて同じ柄のブラジャーをつけた。
ストラップの間に腕を入れ、手を後ろに回してホックを留めた。
そうしていると、自分の手がすんなりと背中に届いていることに気がついた。
今まで手が背中の真ん中に届くということは無かったというのに、今の私は無理をしなくても、すんなりと手が背中の真ん中に届くのだ。
体がとても柔らかくなっている。この全身スーツはこんなところまでも変えてしまうようだ。

それから私は、脚にぴたりとフィットするスリムジーンズをはいた。
太ももから膝付近にかけてわざとほつれさせたスキニージーンズであった。
こういうジーンズを前から着たかったんだ。
そう、私はスカートよりも、女になったらジーンズを着てみたいと思っていた。

脚にぴたっとくっついて、下半身の曲線をそのまま描いているジーンズを着た女性を見るたびにそんな思いにとらわれていた。
そして、そんなジーンズを着ることができたらどれくらい良いだろうと、心の中で思い描いていた。
ウエストが太い今までの私が着たとしても、スキニージーンズを格好良く着こなすということはできもしない芸当だった。
でも、今の私はこんなジーンズでさえもすんなりと格好良く着こなすことができるようになったのだ。

ジーンズを着て自分の脚を調べた。
自身の足は思ったよりはるかに小さく、そして細く見えた。
太かった足首も、すっかり変わってしまった。
すらりとまっすぐに伸びた脚は、申し分なく美しい。
私のもともとの脚は少し外に曲がったいわゆるO脚だった。
それが、こんなにも美しい脚の持ち主になったのだ。
私はジーンズに包まれた自分自身の太ももやふくらはぎを見ながら、すっかり心の中が満たされていた。
張りのあるきれいなラインを描く太ももから膝下にかけての曲線は、本当に美しかった。
それは、私が一番好きな女性のシルエットラインだった。

そしてお尻の部分もはちきれそうに膨らむラインは、その辺の女性よりもずっと美しかった。
多分この姿で外に出かけると、街を歩く女性たちの嫉妬の的になるのではないかと、つい心配になるほどだった。
事実、こんなに可愛くて目のやり所が無いヒップは写真でも見たことが無かった。
街には可愛くてスリムな女性が多いかもしれないが、こんなに完ぺきなスタイルを持った女性となるとなかなかいないことだろう。
私は早く着替えて外に出かけてみたくなった。

続けて、私は男の顔が幾つもプリントされている柄のTシャツを着た。
それは特に女性らしい服ではなかったけれど、鏡に映った自分の姿を見た時、私の口元はだらしなく緩んでしまった。
そう、可愛い女は何を着ても可愛いという言葉は、今の私にぴったりの言葉だったからだ。
特に女性らしくない服を着た今の私の姿は素朴ながらも妙なセクシーさに溢れていた。
どんな服であっても、何の問題もない。
今の私の顔と姿は、申し分なく美しかった。
まだ化粧をしていないスッピンのままだったが、それでも充分だった。

さて、次は化粧をしてみようか?
幸いカバンの中には、簡単な化粧品のセットまで入れられてあった。
本当に女に変身するために必要な道具が詰め込まれた完ぺきなカバンだった。

私はまだ若かった頃、少しだけ化粧してみたことがあった。
また幼い頃は体格も小さくかわいかったので、女装すればよく似合うと言われたりもした。
女装にはまっている頃は、自分で化粧していたので、化粧すること自体には不慣れではなかった。
だが、久し振りに化粧をしてみると、なかなか大変だ。

少しばかり悪戦苦闘し、クレンジングを使って何度もやり直しながら、ようやくそこそこ気に入った化粧顔が完成した。
慣れてくれば、もっと凝った化粧もできるようになるだろう。

これで全てが終わった。
いよいよこの姿で外に出かけることにした。

(続く)



toshi9より:
貴人福助さんからいただいた第2話です。
今回も第1話と同様、いただいた作品を@機械翻訳Atoshi9が意訳B夏目彩香さんが最終確認という流れで翻訳作業を進めております。今回は主人公が実際に着込んでいく展開ですね。どきどき読みながら作業していましたが、日本語訳を楽しんでもらえたら幸いです。
今回は、最終確認をお願いした夏目彩香さんからメッセージをいただきました。


夏目彩香より:
ご無沙汰しています。夏目彩香としての活動は凍結していたのですが、
toshi9さんから翻訳監修の依頼があり、このような機会を得られましたので、
翻訳文の最終確認を行うことを引き受けました。

かつてサイトを運営している頃に作品を翻訳したことがありますが、その時よりもさらに大量の文章ですので、
機械翻訳などで大まかに翻訳してあるものをできるだけ自然なものとなるようにしています。
韓国語の独特な言い回しや原文のニュアンスをできるだけ残すことを心がけ翻訳しています。

まだ届いている作品自体序盤ですので、かなりの連載になりそうです。
最後まで全うできますよう願っています。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。