【TSショップ、山本の日常8】 作:リイエ 「うーん、ここら辺でいいと思うんだけど」 由紀さんがキョロキョロと、あたりを見回す。 小野さんに電話した後、すぐにクリニックをでてこの場所に来たのだが・・・ 「あの・・・、由紀さん・・・・?」 「んー、まだ来ないわねー、なに?アキラちゃん?」 「待ち合わせは百歩譲ってもいいでしょう、けどなんでプールなんですか!!!」 そうなのである、なぜか俺の手を取った由紀さんは摩耶さんを仕事場に残し、待ち合わせ場所と言っている屋内プールへと来たのであった。 もちろん、女の姿なので水着を着ないといけない・・・ 「んー!!アキラちゃん!!とっても似合ってるわよ!!!」 そういいながら、白地に花柄模様のワンピース型の水着を着せられた。 どこで用意していたのだろうか・・・? 体にぴったりとついている感覚は下着を着るとき以上に恥ずかしかった。 小野さんを探している由紀さんを尻目に、俺はほかのところを見回した。 今流行の、屋内プールということで流れるプールや、波のプールなどいろいろなものがそろっているみたいだ。 ふと、綺麗な女性が眼に入る・・・ 肩よりちょっと長いサラサラなストレートヘアー、整った顔立ち、そしてグラビアアイドルにも負けず劣らずのスレンダーなボディ、その体をより強調させるようなビキニも似合っている。 男性だけではなく、ほかの女性もその人に目を奪われている、それくらいに綺麗な人だった。 どこかのモデルさんなのかな? と思ってみていると、こっちの方向へやってくる。 その女性をみて由紀さんが言った言葉は、俺の想像の斜め上を行く予想外な言葉だった。 「あー、きたきたー!先についていると思ったのに、結構待ったわよ」 「ごめんごめん、ちょっと大事な用事があって」 「ってことはあの人もここに来てるの!?」 「うん、こっちに来るのは物凄い久しぶりだとか言ってたよ」 二人は仲がよさそうに話しているが・・・・ 「あの・・・・」 「あぁそうね、くくっ。 アキラちゃんはそういえばわからないわよね、ぷっ」 俺がそういうと、笑いながら由紀さんがポンと手を叩く。 しかも何かたくらんでいるような、いやな笑顔で。 由紀さんの隣にいる、美女はクスクスと笑っている。 「僕だよ、僕」 「え?」 「僕は小野俊行さ、いや小田みゆきと言った方がいいかな」 「え?ええええええええええええええええ!!!」 俺の様子をみて、由紀さんは盛大に笑っていた。 この美人の女性が・・・・・小野さん!? 「摩耶ちゃんの時もそうだったけど、由紀さんはまったく人が悪いね」 小野さんと名乗った女性は、由紀さんのほうを向き苦笑している。 「この姿に成り立てのときはあんなに恥ずかしがってたのに、こんなスタイルを強調している水着なんて着ちゃって、おねーさん悲しいわ」 といいながら、小野さんに由紀さんは抱きつく。 その由紀さんの言葉にも動揺しないで、軽く受け流している。 な、何がなんだか・・・・、俺にちゃんとわかるように説明してくれ おれは驚き、呆れ、色々混じったような感覚で、大きくため息をついた。 「ははは、ごめんね山本君驚かすつもりはなかったんだ。 この姿はね、由紀さんの元上司にあたる人に無理やり変えられた時の姿なんだ、ほら君も由紀さんに白のゼリージュース飲まされただろう?」 「えぇ、けど白の効果はほぼ不可逆じゃ・・・・・」 そういうと、小野さんはニヤリとした顔で持っているバックに手をかけた。 「そう、不可逆なんだ。 けど大野君を治せる方法がないかと探しているうちに、面白い効能のゼリージュースを開発することに成功したんだ。 覚えてないかな?大野君が作った金色のゼリージュース」 そういって、少女とのやり取りを思い出す・・・・ たしか表三種の効能を発揮できるって感じの奴だったっけ。 俺がわかったと判断したのか、小野さんはさらに話を進め始めた 「僕が作ったのはその裏版といった感じかな。 金色のゼリージュースを分析していたら、たまたまこういうのができたんだ」 そういうと、小野さんはバックから二つのペットボトルを取り出した。 両方とも色は銀色に輝いていて、とても綺麗だった。 「銀色の・・・・ゼリージュース?」 俺がつぶやくと、小野さんはうなずいて説明をしてくれた 「このゼリージュースは特殊で、『一度ゼリージュースを用いて変身した姿に変身できる』という効能があるんだ」 ん?一度変身した姿に変身できる・・・・? 「ええーっとね、つまりはほかの色のゼリージュースの効能はわかるよね?」 「えぇ、はい。一応は・・・・」 「それらの効能は色々あるけど、結局は別人物になることが最終的な効能だよね」 俺はうなずく。 小野さんは満足したように、続きを喋り始めた。 「つまり、自分が使用して赤ならコピーした体、黄色なら入れ替わった体、青なら憑依した体、ほかの各色のでもいいけど、ゼリージュースを用いて別人になったことがある姿に変身できる力があるんだ」 「それをつかって、以前白のゼリージュースで作り変えられた、その姿に変身したわけですね」 「その通り、物分りがよくて助かるよ。 けど、難点もあってね、解除条件がないんだ。 つまり、自分にゼリージュースを用いて変身したことある人ならともかく、普通はそんなことはないから元に戻れないんだ、それと連想しただけで変身してしまうから戻れたとしても厄介なことになってしまう」 「え・・・、じゃあ小野さんはどうするんですか?」 「それも考えてるよ、うーんそろそろ来るとは思うんだけど・・・・」 小野さんはそういうと、あたりをきょろきょろと見回した。 ほかに誰かが来るのか? 「えっと、誰かまだ来るんですか?」 「うん、ちょっとそれを解決するものを頼んでいたんだ」 ????? 由紀さんのほうを見るが、両手をあげて『私もわからないわ』といった感じだった。 「くればわかるさ、山本君は来てもわからないけど」 と、そこまで言ったところで、小野さんは目的の人物を発見したのか大きく手を振り上げてアピールした。 「こっちでーす」 「はっはは、やぁお待たせ」 全身体を鍛えている感じの、中年男性の風貌の人がこっちに向かってくる。 浅黒い肌と笑った時に見える白い歯が特徴的だった。 由紀さんの方を見ると、その男性を見てとても驚いている様子だった。 「まぁ!虹男さん!!なんでこんなところに」 「いや、ちょっとね、小野君にあるものを届けて欲しいって言われてね」 虹男と呼ばれる人は、脇に抱えていた魔法瓶のポットを小野さんに手渡した。 「すいません、虹男さん前以上に無理なことを言ってしまいまして」 「いやいやいいさ君の決めた道だろう、僕もそのアイディアに乗っかろうと決めたんだから協力は惜しまないさ」 小野さんは俺のほうに向きかえり、ポットを渡した。 「えっと・・・これは・・・?」 そういうと、虹男さんと呼ばれる人が、説明してくれた。 「その中に入っているのは、ゼリージュースの効果を打ち消す効能があるハーブティが入っているのさ」 小野さんが続けて、俺に話しかける。 「それを飲めば、君は元の姿に戻ることはできるよ。 一応ポットには3杯分入っているから、分けて飲んでね。 飲むタイミングと、ほかの二杯を使うタイミングは君に任せるよ」 小野さんは虹男さんの方に向き直した。 「これでハーブティは私の手元には残らなくなってしまったよ、君自身の分は大丈夫なのかい?」 「まだ1杯分だけ持っています、研究で大きく役に立ちましたし、本当にありがとうございます」 「いや、ここまで来た甲斐があったよ。 折角だから顛末までちゃんと見届けさせてもらうよ、君たちにいい結果が起ころうと起こらなかろうと見ているだけなのは申し訳ないけどね」 「いえいえ、ハーブティを持ってきていただいただけでも本当に感謝していますよ。 僕の持っている分だけじゃまかないきれなかったんで、本当に助かりました」 「ねぇねぇ、話が見えないんだけどどういうこと? なんで虹男さんがここにいるのよ」 二人の間に、由紀さんが割って入ってきた。 どうやらなにも聞かされていなかったみたいで、相当驚いているらしい。 虹男さんは由紀さんの方をみると、笑顔で挨拶をした。 「本当に会うのは久しぶりだね、元気にしていたかい?」 「えぇ、お久しぶりです、オルガさんは元気ですか?」 親密そうに、二人は話している様子だった。 どんな間柄だったのだろうか・・・・? 「あぁ、元気にしているよ。 今回はもうちょっと滞在していることにしたから、また会うことになると思うよ」 「え?今日はもう帰っちゃうんですか?」 「うん、残念だけどね。 また会えることを期待しているよ、じゃあね!!」 そういうと、虹男さんは手をあげながら、去っていった。 あ・・・俺自己紹介すらしてなかったよ・・・・ 「行っちゃった、ってどういうことなの!!!」 由紀さんは小野さんに詰め寄る。 小野さんはそれに動じずに、ゆっくりと由紀さんの肩に手を置いた。 「まぁまぁ、ここから詳しい話は別の場所で話そう」 俺ら4人はプールから、出て近くの喫茶店に移った。 隣に小野さん、正面に摩耶さん、由紀さんと言う形で座っている 旗から見たら、女性4人でわいわい話しているように見えるのかな 「それで、僕からの提案なんだけど・・・・・」 「「「えええ!!!!」」」 そこで俺は小野さんから衝撃の提案を聞かされることになった。 - 続く - |