「うふふふふふ・・・・・・」 先輩がなにか楽しそうな様子で準備をしている。 今日はお客さん予約なかったはずだけどなぁ? 「先輩〜、何しているんですかぁ?」 あたしがそう言うと、先輩は楽しそうな素振りで答えてくれた。 「今日は楽しいことになるわよー。 俊行さんが彼には何をしても良いって言っていたし、楽しみだわ〜。 今からわくわくしちゃう」 今日誰かが来るんだろうか? どちらにしても、その人は可哀想なことになるんだろうなぁ。 楽しげに準備している先輩をみて、あたしは思った。 【TSショップ、山本の日常6】 作:リイエ 「ここか・・・」 駅から降りて、公園の裏通りを入った雑居ビルにその看板は立て掛けられていた。 -クリニック・YUKI- 俺は看板を確認しビルに入ろうとしたが、入り口の前で立ち止まった。 入ろうと思ったが若干躊躇してしまった。 やはり経営している人物は一癖も二癖もあるのだろうか。 この手の商売をやっている人はこういう裏通りの雑居ビルや、ビルとビルの間にある地下みたいなところに構えるのが好きだな。 判りにくいのはいいが、客の収益とかはどうなっているのか・・・・ いやいやいや、もう商売はやめたんだ、そういうことを考えるのはよそう。 しかし、ここに来れば大野やこの前の少女、奈々ちゃんの家族を治すことが出来るかもしれない言うのはどういうことなんだろうか? 疑問を持ちながらもビルの中に入っていった。 ビルに入り、階段を上がった側の扉を開けると、白い清潔感のある受付が見えた。 「あ、すいません〜、今日はやってないんですよぉ」 「い、いえ、えっと、小野さんの紹介でやってきた、山本と言いますが。 あの柳沢さんがこちらに居られると思うんですが」 「先輩ですかぁ? ちょっと〜、待っててくださいねぇ」 語尾を伸ばして、妙に甘ったるい喋り方をする女の子は奥のドアへ入っていった。 数分後、扉から金髪の女性と一緒に出てきた。 「あなたが山本さんね」 「あ、はい。 柳沢さんでしょうか? 私は小野さんに・・・・」 「あー、もう判ってるから大丈夫。 じゃあ一緒に奥に入ってきてくれる?」 そういうと奥の部屋に促される。 俺は部屋にはいると、なかを見渡した。 診察室だろうか、部屋の内装はよくある病院の診察室みたいな感じだった。 そこの脇に応接用のテーブルがあった。 「じゃあ、そこに座ってくださいね」 金髪の女性、柳沢さんにそう言われ椅子に座る。 向かいにはなにか、カルテの様なものを持った柳沢さんが向かいに座った。 すらっとしたボディに、目立つ金色の髪の毛、目の下に泣きホクロがあるな。 「うふふ、どうしました? じっと私の事をみて、何かついています?」 「あ、いえそんな事ないです」 俺はあわてて顔を背ける。 どうも、ペースがつかみにくい。 「コーヒーどうぞぉ」 「あ、どうもありがとうございます」 さっきのナース服を着た女の子がコーヒーを置いてくれた。 俺はそれを一口飲んだ後、今日来た本題を切り出した。 「で、あの今日訪れた理由なんですが」 「俊行さんから、聞いています。 何でもご友人を元に戻したいそうですね」 パラパラとカルテに書かれているものをめくりながら、柳沢さんは答えた。 小野さんから話は行っているのか? それなら話は早そうだな。 「これがその薬です、あとゼリージュースからの回復方法とかもあったら教えていただけないでしょうか」 俺はそう言うと、薬の効果の説明や少女から聞いた話を柳沢さんに伝えた。 「なるほど・・・・。 黒のゼリージュースですか、皮状になってしまった人のゼリー自体がないとどうにもならなさそうですね」 「やはりそうですか・・・・」 「ご友人の件は、薬の方から成分分析をして見ます」 「あ、ありがとうございます!!」 俺は大きく頭を下げた。 これでなんとか面目躍如かな・・・・。 なんか安心したら眠気が・・・・・。 こんなとこで寝ちゃ迷惑・・・・・・・。 バタン! 俺は睡魔に耐えられなく、テーブルの上に伏せるように眠ってしまった。 「先輩〜、本当にいいんですかぁ?」 あたしは不安そうに、先輩を見上げた。 先輩はさっきまでの営業用の顔とは違い、高原ビューティクリニックに勤めてた頃の顔になっていた。 「さて、どうしようかしらね」 先輩が取り出したのは、白のゼリージュースだった。 「まさか、先輩・・・。 この人の体を作り変えるんですかぁ?」 あたしがそう言うと先輩は笑顔でこちらを向いた。 「その通りよ摩耶、一度やってみたかったけどそんなこと出来る相手なんていなかったじゃない? こんなチャンスもう二度とないのよ」 「それはそうですけどぉ。 面識もない人ですよぉ?」 「いいのいいの、俊行さんだって 『彼に覚悟があるのか見極めたい、そこで大騒ぎするような人だったら協力もできない。 その場合は由紀さんの方で、彼を好きにしちゃってかまわないですよ』 とかいってたし。 私もやってみたいこと他にも色々あるのよ、今からわくわくしちゃう」 「そんなぁ、無茶苦茶ですよぉ」 ひぇ〜、俊行さんってそんな人だったっけ。 この人が何をしたって言うんだろうか、もう元に戻れなさそうな・・・・。 先輩と俊行さんが何を考えてるのか判らなくなってきたよぉ。 「摩耶、ちょっと彼を診察用のベッドに運ぶのを手伝って」 「はい〜、わかりましたぁ」 先輩と一緒にベッドの方へ運ぶ。 お、重い・・・・。 先輩はそのまま彼が着ている服を脱がせていった。 「さて、眠っている彼に飲ますのは心がちょっと引けるけど・・・・」 先輩は、うつぶせになった彼・・・えっと山本さんに白のゼリージュースを飲ませた。 数分後先輩は彼の体をいじり始めた。 肩をぎゅっと抑えると、肩幅が小さくなっていった。 続いて首を細くしていき、山本さんの喉仏をぐいっと首に押し込んだ。 その後先輩は上半身を整えて、筋肉だった山本さんの体が徐々に丸みを帯びていく。 胸にはCかDくらいかな、そのくらいの大きさの乳房が盛り上がっていた。 「うんん・・・・んふ・・・」 「あら、この子感じているのかしら。 かわいい♪」 寝ている、山本さんから艶のある声が時折聞こえてくる。 体の変化に感じているのかなぁ。 先輩は上半身を整え終えると、下半身の方に目をやった。 腰を絞るような感じで、手を動かしていた。 スリムになっている腰を見て、先輩はその余った部分を別の部分にたしていった。 お尻にボリュームをつけていった様だった、その後も足首や太ももなどの部分をどんどん作り変えていく。 改めてみたけど、先輩の技術はすごかった。 一連の動作に無駄がなく、まるでショーを見ているようだった。 「さてと、女の子にはこんなのはいらないわね」 そう言うと先輩は股間についていた、そのモノをそのまま押し込んでいた。 山本さんのモノは、まるで最初からなかったかの用に何もなくなった。 そのまま股間の部分をいじって、先輩の手が離れたときには一本の筋があるだけになってしまった。 最後に先輩は、山本さんの顔を捏ねくり始めた。 四角い男性的な顔が徐々に丸みを帯びた、女性的なものへ変わっていくのが良くわかった。 「ふぅー、こんなものかしらね」 先輩がそう言い、ベッドから離れると。 男だった面影はなく、きれいな女性、いや美少女と言うべきなのか。 山本さんを見ていると、どこか俊行さんが女性になっていた時の感じを思い出させてくれた。 白くて瑞々しい肌に、スリムな手首足首。 ウェストは細く、顔もすごく可愛い顔になっている。 下半身についていたものは無く、かわりに一つの筋が出来ていた。 女性のあたしから見ても、惚れ惚れするくらい可愛い姿になっている。 時計を見ると、白のゼリージュースを山本さんに飲ませてから30分が経とうとしていた。 ん・・・・、いつの間にか俺は眠っていたみたいだ。 体がだるい、俺は頭を抑え軽く振る。 思考がだんだんクリアになってきた、どうやら俺はベッドに寝かされていたみたいだ。 急に寝てしまったのに、親切な人達だ。 二人はどこだろうと、上半身を上げたら妙な違和感が。 その違和感はともかく、まずは二人に礼を言わないといけないな。 えっと・・・・、あたりを見回すが誰もいない、どこかに出かけたのだろうか? 「んー、どこに言ったんだろう・・・・ん? んん!?ええええ!!!」 はっと、俺は喉に手をあてる。 声がおかしい、高いまるで女性のような感じになってしまっている。 な、何故だ!? 同時に上半身の違和感の正体も判った、胸があるのだ。 下をみても、全部を見通せなくなってしまっている。 というか、なんで裸なんだ!? 「あ、起きたのね」 ガチャと、俺が入ってきた扉が開く。 柳沢さんと受付の女の子だった。 手には大量の袋を持っている。 「こ、これは一体、ど、どういうことです?」 「見たとおりよ、白のゼリージュースを飲ませてあなたを女の子にしちゃったの」 「なな・・・ななな・・・なんで、そんなことを!!!」 「なんででしょうかね、うふふふふ・・・。 そうそう、洋服と下着を買ってきたから。 いつまでも裸のままじゃいやでしょう?」 その言葉に、俺は怒りを覚えた。 きっ、と柳沢の方を睨み付ける。 「おぉ怖い、けど着ないとずーっと裸のままよ。 一人じゃ着れないなら、手伝ってあげるわよ?」 「くっ・・・ぜ」 「なーに?」 「何故、俺をこんな目にあわす必要がある!!!」 「あー、俊行さんがあなたのことを好きにして良いっていったからよ。 私も久しぶりに、こういう実験が出来てわくわくしちゃうわ。 あなたもこの事は了承済みなんじゃないの?」 白々しく柳沢は、俺にそう言った。 となりのナース服を着た女の子は、俺たちのやり取りを不安げに見ている。 冷静になれ・・・、感情に任せて行動したらこの後良い事もない。 柳沢に不利なことをすれば、それこそ元に戻れなくなってしまう。 落ち着け・・・、深呼吸をするんだ。 俺は落ち着きを取り戻すために、深呼吸をした。 「小野・・・・さんからは何も聞いていません・・・・。 服の着方は判らないので・・・・教えてください・・・・。」 「あら、妙に素直になったわね。 そういう、頭の良い子は好きよ。 摩耶、彼に服を着せるのを手伝ってあげて」 「はいー、わかりましたぁ。 山本さん、ちょっと失礼しますねぇ」 俺は摩耶というナース服の子に服を着させられていく。 ショーツから、ブラジャー。 チェックのスカートにブラウスと、なすがままの着せ替え人形になっていた。 着るのを終えると、今度は俺の顔に化粧を施していった。 「はい、これで完成ですよぉ」 そう言うと摩耶は手鏡をこっちに向けて見せてくれた。 そこに映っていた姿は俺の想像をはるかに超えるものであった。 「こ・・・れが・・・俺・・・?」 「そうよ、今のあなたは可愛い女の子。 ウフ、食べちゃいたいくらいに可愛いわ」 改めて、ゼリージュースの怖さを思い知った。 自分が自分ではなくなる喪失感、今はもう感じない自分の証であったものがあった場所を見つめながらそう思った。 先ほどまでの激情がなんとやら、着替えているうちに冷静になってきた俺は疑問を柳沢にぶつけてみた。 「で・・・・」 「え?」 「で、俺は何をすれば良い? ただ、体を作りかえるためだけに、俺をこうしたわけじゃないんだろう?」 「あら・・・」 そう言うと柳沢は少し驚いた表情をした。 が、すぐに先ほどの笑顔に顔を戻し。 「ここで、しばらく働いてもらうわ」 「しばらくとは、どのくらいだ?」 「そうねぇ、私が飽きるまでかしら。 それと、その格好じゃ家に帰れないでしょうし。 今日から、うちに住んでね」 「何!?なんでそこまでしないと!!!」 「住んでくれるわよね?」 「うぐ・・・・、わ、判った」 柳沢に強く念を押されると何故か、逆らう気にはなれなくなった。 まぁいい、どうせあの店も営業する事も無いし、暇つぶしくらい付き合ってやる。 「いい子ね、それじゃあ今日はもう帰りましょうか。 摩耶明日から、アキラちゃんが働くからよろしくね。 何も判らないと思うから、お仕事教えてあげて」 「はーい、わかりましたぁ。 アキラさんよろしくお願いしますぅ」 「ああ、・・・・よろしく」 あまり納得はいっていないが、こうして俺はクリニック・YUKIで少しの間仕事をすることになった。 --------------------------------------------------------------- ドンドンドン!! ガチャーン! 「いたか!?」 「いえ、いません」 「くそ、もう逃げられた後か・・・。 こいつの知人関係はどうなっている?」 「はい、うちの会社の社員で開発部署にいる女性が一人と、他会社に勤めているOL一人。 この二人が特に親しい模様です。 開発部署の女性にはすでに、質疑質問等をしましたが。 この店にいるはずだとのことでした。 もう片方のOLの方にも当たって見ますか?」 「そうだな、よろしく頼むぞ」 「あと、この二人に関しては処分はどうされますか?」 「社員の方は機密を守る制約をしているはずだ、ほおっておいても大丈夫だろう。 OLのほうは質疑質問等しだいでは拘束するように」 「はい!わかりました」 -続く- |