我々 作:Necro 24歳、羽夜未羽(はねやみう)。 マッサージ師の免許を持っていて、現在はマッサージ師として働いてる。 でも、マッサージ師が心底やりたかったわけではない。 そんな彼女は東京都内のダンススクールに通いながら、ダンサー、モデルを目指している。 その為の資金稼ぎが、マッサージ師。 そんな未羽は帰り道、男と出会った。 髪の毛はぼさぼさで、夏なのに暑苦しい毛糸の上着を着ている。 下はどう見てもジャージ。 男は未羽を見つけると頬を緩ませながら近付いてきた。 「ひ、ひひふひ・・・へへ・・えへへ・・・」 未羽は無視をしてさっと通り過ぎようとした。 ガシッ 男の手が未羽の腕を掴んだ。 「ひっ!」 未羽が男の手を振り払おうとしても、まるで接着剤でくっつけたかのようにピッタリとくっつく。 男の力が強いわけじゃない。 『吸着している』そんな感覚。 男が薄気味悪い笑顔を見せながら、口を開いた。 「ジャ・・ジャンケンしようよ・・・・うへ・・へ・・へへえへ・・・」 「い、嫌!離して!!誰かー!!」 深夜、公園の中。 誰も来る気配は無い。 「じゃあ・・・ジャンケン・・・・するよ・・・」 「離して!!離して!!」 「ジャーンケーン・・・・ポン!!」 男がそう叫ぶと、ぱっと未羽の腕から男の手が離れた。 男の手はパーを作っている。 「な・・・何・・・」 未羽は男から直ぐ離れた。 それを見て、男はニヤニヤ言った。 「へ・・うへへ・・・・グ、グーだね・・・グーを出したね・・・僕は・・・パーだ・・・うへへ・・・」 言われて未羽は自分の右手を見る。 確かに自分の右手はグーだった。 ふと未羽は考え直す。 ダメ、あの男の話を聞いちゃダメ。 逃げなきゃ、今直ぐ逃げなきゃ。 未羽は男から逃げようと、走り出した。 すると、未羽はつんのめって地面に倒れた。 「い、いたっ!!」 何かを踏んづけた転んだ感覚。 ズボンの裾を踏んづけて転んだ感覚。 ふと自分の足を見ると、ぶくぶくと膨らんだ自分の足があった。 「ひ、ひい・・・な、何これ・・・・」 男も歩き難そうに近寄ってくる。 「うへ・・うへへ・・・・ジャンケンに負けた・・・・代償だよ・・・・」 「ち、近寄ったら殺すわよ!!」 「ひ・・ひひひ・・・」 「本気だからね!!お前の首を絞め殺してやるから!!」 男が暴れる未羽の足を両手で掴んで持ち上げた。 するとビリビリィっと千切れる音がした。 「ひい!?何!?」 未羽のぶくぶくに膨らんだ足が千切れたと思ったら、千切れたのは皮膚だった。 その下から、別の足が出てくる。 ただ、その足は毛むくじゃらで、どう見ても男の足。 男は目を輝かせて、口からヨダレをぼたぼたと落とした。 「ひ・・・ひひひ・・・」 「いや・・・何これ・・・何これ・・・」 未羽は腰に力が入らない。 匍匐前進をして泣きながら男から逃げる。 「だ・・だめだよ・・・まだ終わってないよ・・・」 男が未羽の体を押さえ付け、服を脱がせた。 「いやああああ!!死ね!死ね!!!死ねええええ!!!いやあああ!!!」 「ひ・・ひひひ・・・・も、もう一回ジャンケンだ・・・ジャンケンだよ・・・・」 ゆっくりと男が言う。 「ジャーンケーン・・・」 未羽は叫びながらも、冷静に右手はパーの形を作った。 男は横目でそれを見て、ニヤっと笑った。 「ポーン!!」 男がチョキを出す。 しかし、未羽はパーを直前でグーに変えた。 「ひ・・ひいいいいい」 今度は男が叫びだした。 「ま、負けた。負けたよぅ・・・・・」 未羽の体から男は離れ、頭を抱えながらフラフラと何処かへ消えていった。 「ひいい・・・・負けた・・・・負けたよぅ・・・・・・」 男の姿が見えなくなり、男の声が聞こえなくなって、未羽はようやく恐怖から解放された。 突然、また未羽の足が膨らみだす。 「うっ・・・」 足が圧迫される感覚。 思わず足の皮膚を引っ張るとビリビリと毛むくじゃらの男の足の皮膚が破れ、その下から未羽の細い白い足がまた出てきた。 「あ・・・あああ・・・」 わけがわからない。 未羽はとりあえず脱がされた服をかき集め、急いで家に帰った。 「はぁ・・・はぁ・・・・け、警察。警察に電話しないと・・・」 「はい、こちら・・・」 「変質者です!変質者が出ました!!」 「落ち着いて、冷静に。場所はどこですか・・・?」 「場所は・・・・」 深夜、警察が家まで来て未羽から話を伺った。 警察は近辺を調べたが、怪しい男は見つらなかったし。 千切れてそこらに散らばっていたはずの皮膚も、発見できなかった。 「か・・・彼の電話番号・・・」 警察が帰った後、未羽はごそごそとメモ帳を探した。 今、未羽が付き合っている辻(つじ)と言う男の電話番号。 プルル・・・プルル・・・・ガチャッ 「はい、辻です・・・」 「辻くん・・・こ、怖いよぅ・・・・」 「・・・・え?未羽?未羽か?」 「変な人に襲われた・・・・警察も呼んだけど・・・見つからなくて怖くて・・・」 「ほ、ホントか?」 「うん・・・辻・・・・家に・・・家に来て・・・」 「分かった。直ぐ行くよ。10分待っててくれ。自転車かっ飛ばしてくから」 「うん・・うん・・・」 「家から絶対出るんじゃないぞ!!ちゃんと窓や戸締り確認しとけよ!!じゃあ直ぐ仕度するからな!これで切るぞ!」 「うん・・・うん・・・・」 ガチャッ・・・ 「はぁ・・・はぁ・・・」 未羽は今頃になって、体がガクガクと震えて怖くて涙が出てきた。 涙を流しながら未羽は戸締りを確認する。 玄関はチェーンも掛けてる。窓も閉めてるし、全てにロックが掛かってる。 直ぐに警察に電話できるように、コードレスフォンを右手に持つ。 「はぁ・・・はぁ・・・」 水・・・・。 冷蔵庫に行って、水を飲んだ。 ごくごくごく・・・・。 「はぁ・・・大丈夫、大丈夫だからね・・・未羽・・・私頑張ったよ・・・・」 自分の体をぎゅっと抱きしめる。 「暖かい・・・私・・・ここにいる・・・・」 はぁ・・・・はぁ・・・・ ピンポーン 玄関に誰か来た。 身構えて、コードレスフォンの 110を押す準備をする。 「だ・・・誰・・・」 扉の向こうから声が聞こえた。 「僕だよ」 「辻くん・・・・辻くん!!」 コードレスフォンを置いて、玄関に走った。 チェーンを外して、がちゃがちゃと鍵を鳴らす。 ガチッ・・・ ドアを開けると、そこには辻がいた。 「大丈夫か?」 「辻・・・辻くん・・・」 未羽は辻の胸に飛び込んだ。 辻は未羽の背中に手を回して、部屋の中に入る。 「辻くん・・・辻くん・・・」 後ろ手で、辻はドアの鍵を閉める。 「来てくれて、ありがとう・・・辻くん・・・・」 未羽がぱっと顔を見上げて辻を見ると、薄気味悪い笑顔の辻がいた。 「未羽・・・」 「・・・・え・・・」 「ジャンケンしようぜ」 ジャンケンに負けた未羽は意識を失って倒れた。 するとぶくぶくと体が膨らみだし、未羽の皮が千切れ始める。 逆に辻の方は、体のあちこちに弛みが出来て、自分から皮膚を引き千切った。 すると、辻の中から未羽の体が出てきた。 そして、未羽の皮の下からは、辻が出てきた。 未羽の体になった奴は、元未羽の体から未羽の服や下着を取って自分で着た。 逆に自分の男物の服と下着を元未羽の、今は辻になった体に着せていった。 「イヒヒヒ・・・お前の体・・・貰ったぜ・・・」 「・・・・ん・・・くそ・・・何だ・・・」 「おはよ、辻」 「ああ・・・未羽・・・おはよう・・・・、あ、あれ?ここは?」 「どうしたの?」 「未羽・・・・?」 「ん?どうしたの?ここ、私の家だよ」 辻は頭を振り回した。 「あー、くそ。昨日の記憶が無ねえや・・・・もしかして迷惑かけたか?」 「ううん、そんな事無いよ。辻くんが来てくれてすっごい助かった」 「そ・・・そうか?それならいいが・・・」 「私、これから早朝の仕事あるから行くね。ゆっくりしてっていいから」 「あ、そうだ。未羽。言い忘れてたことあるんだ」 「え?」 「確か、お前今度芸能事務所に所属するんだろ?だから今の仕事は辞めることになるよな」 「うん」 「だから色々お金掛かるだろ?だから、同棲しようぜ。俺の家から仕事場まで近いだろ?」 「いいの?」 「当たり前だろ。お前の夢、応援したいんだよ」 「ありがとう!」 「ああ・・それから・・・」 「あ!ごめん!もう仕事に遅刻するから!冷蔵庫の中の食べ物、勝手に食べていいよ!」 「あ・・・ああ・・・・、分かったよ・・・。車とか、気をつけてな」 「うん。戸締りよろしくね!」 ガチャン・・・・ 未羽が外出すると、辻は頭をぽりぽりとかいた。 「なんか・・・昨日まで未羽だった夢を見たような・・・・変な夢だったな・・・」 家から出ると、未羽は小学生の女の子が早朝登校する姿を見つけた。 女の子がポケットからポロっとハンカチを落とす。 「あ、ねえ。ハンカチ落としたよ」 女の子は最初、自分に言われていると気付かなくてそのまま歩いていた。 未羽は女の子の前まで行って、ハンカチを見せた。 「ね。今、ハンカチ落としたよね?」 「あ・・・」 女の子は小さく口を開けて、 「おねーちゃん。ありがとう」 すると、ハンカチを取ろうとした女の子の手を避けるように未羽はハンカチを高く掲げた。 「ねえ、私とジャンケンしない?」 「え・・・?」 「ジャンケンして勝ったらハンカチ返してあげる。負けても何回でも挑戦していいよ」 「おねーちゃんと、ジャンケン?」 「うん。ジャンケンしよ」 ジャンケンで負けた少女は眠るように倒れる。 それをそっと抱えて、未羽は公園の公衆トイレの中に連れて行く。 未羽は少女が背負っていたランドセルを地面に置き、下着から服まで脱がして全裸にした。 すると、少女の体が膨らみ始め、びりびりと少女の皮膚が破ける。 そして、少女の皮膚の中から未羽の体が出てきた。 逆に未羽の体は空気の抜けた風船のようにぐにゃぐにゃになり、 皮になった未羽の口が大きく開いたかと思うと、そこから少女が出てきた。 少女は、さっきまで少女だった子が着ていた下着や服を着てランドセルを背負った。 そして未羽の服や下着を、今未羽になった体に着せていった。 千切れた少女の皮膚はトイレに流し、だぶだぶになった未羽の皮は少女のランドセルの中に押し込んだ。 「ん・・・あ・・・あれ?わ・・私・・・」 「おねーちゃん、ハンカチ拾ってくれてありがとう」 「あ・・・あれ?」 「おねーちゃん。大丈夫?」 「私・・・どうして・・・」 「さっき転んで頭を打ったんだよ」 「あ、そうなの・・・うん。ありがとう・・・」 「じゃあ、またねー。おねーちゃーん」 「あ、うん。またねー」 未羽の姿が見えなくなるまで、少女は手を振った。 未羽の行く方向と反対の方向を向いて、少女は歩き出した。 「えへ・・・えへへ・・・うひ・・うひひひひ・・・・」 少女は薄気味悪い声を漏らす。 突然、少女は両手で自分の体をべたべた触り始めた。 満足そうに、ふぅっと息を吐く。 「ジャンケンは・・・・楽しいなぁ・・・・うひ・・ひひひ・・・・」 少女は自分が通う学校を視界に捉えると、ますます笑みを広げた。 |