ガンガールズ

 作:JuJu




■第二章「ミクとマユ」

 次の日曜日。

 美久(みく)と麻由莉(まゆり)はガンスポの試合会場に来ていた。ローカル線が走る山に囲まれた場所にあり、鳥たちの声が聞こえるのどかなところだ。

 試合会場であるフィールドは、入口をはいるとすぐに大きな木組みの建物がある。そこには受付などが入っていた。建物のそばにはキャンプ場のロッジのような丸太小屋や、大きめのウッドハウスもいくつか並んでいて、更衣室やシャワー室などになっているらしい。

 初めてのガンスポ。美久も最初は興味を持っていなかったが、こうして試合会場に来れば期待が高まってくるのを感じずにはいられなかった。

 受付で利用料金をはらい、銃など必要な物のレンタルの申し込みをしたふたりは、更衣室で服を着替えたあと、ウッドハウスに向かった。そこでガンスポに使う銃などを借りられるのだそうだ。

 他の参加者は全員自前で装備をととのえているらしく、銃を借りにウッドハウスに向かうのは美久と麻由莉だけだった。


    ◇


「それでは、銃はどれにしますか?」

 ウッドハウスに着くと係員のお兄さんがたずねた。お兄さんがさししめした棚には、さまざまな拳銃が並んでいた。

「銃ってこんなにたくさんの種類があるんだ? マユ、どれにする?」

 拳銃の知識がなかった美久は、麻由莉にたずねる。

「んー、わたしもわからないよ。どれがいいかなー。わぁ、これなんて大きい!」

 麻由莉はひときわ大きな銃を手にとる。

 美久も真似して同じ形をした銃を手に取った。ずっしりとした重量感と冷たい金属(メタル)の手触りに驚く。。

「すごい! 強そう! でもわたしたちの手には大きすぎるかな」

 麻由莉が興奮気味にいう。

「好みで選んでいいんですよ」

 ふたりのうしろから、お兄さんが助言をする。

「ちなみにそれはデザートイーグルですね。四十四口径のと五十口径です。でもそれは見た目だけのことで、弾の形状は違っても、ガンスポはルールで威力の上限が決まっていますから、強さはどの銃を選んでもそれほど差はありません。

 なので、好みとか扱いやすさで選べばいいんですよ」

 そういってお兄さんは、棚に並んだ主だった拳銃の名前と特徴をひとつひとつ説明してくれた。

「そうですねぇ。初めてならばこのベレッタか、こっちのガバメントあたりが握りやすくていいんじゃないかな」

「じゃあ、わたしはそのベレッタで」

「わたしも」

 とふたりはベレッタを選ぶ。

「銃が決まったら、こちらの射的場に来てくださいね。試し撃ちができます」

 お兄さんに言われてとなりの部屋に移動すると、そこには人の形をした板に四十センチほどの円形の紙が張られた標的が置いてあった。あのカカシに弾を当てるのだということは、ガンスポが初めての美久にもすぐに推測がついた。

 お兄さんから簡単に弾の込め方と銃の構え方を教わった後、美久と麻由莉は並んで十五メートルくらい離れた先にに置かれた標的を狙い打ちした。

「わっ!」

「あっ!」

 弾が標的に当たった途端、美久と麻由莉のふたりが驚く。

 と言うのは、的(まと)に当たった途端弾がはじけて薄青いインクが飛び散ったからだ。

「ガンスポは当たった印になるように、インクの入った弾を使うんですよ。これならば当たった当たらないのトラブルになることはないですからね」

 お兄さんが言う。

「でも服にインクが付くのは、ちょっといやだなあ」

 美久が言う。

「その点なら心配ご無用。公式の弾に使われているのは特殊なインクで、水で洗えばすぐに落ちます。それに放っておいても三十分から一時間くらいすれば自然に色が消えますから。

 それにしても君はすじがいいですね。初めてなのにほぼ的の中心に当てていますよ」

 お兄さんは美久を褒めた。

「えへへ……、偶然ですよ」

 美久はまんざらでもなさそうに照れながら言う。

 そのあと美久と麻由莉は、的に向かってベレッタを撃った。

 おもちゃの銃といっても見た目は本物の拳銃そのものだし、中に入れる弾の形も本物を模したものだ。撃ったあとはちゃんと弾丸が空になった薬莢が排莢されるというこりようだ。ちなみに薬莢は土に還るプラスチックを使っていて自然にも優しい。

 おもちゃとはいえ初めて拳銃を撃って、その感触に感動するふたり。

「なにこれ! 楽しい!」

「はまるよね!」

 的に当たるたびに、美久と麻由莉が歓喜の声をあげる。特に美久の命中率は高い。

「ミクってガンスポ初めてなんでしょう? それでこの命中率はすごいよ」

 さっきお兄さんが褒めていた腕を麻由莉も褒める。

「うん。おもちゃの銃を握ったのも初めて」

 美久は嬉しそうに返事をした。

 その後何発か試し撃ちをしたが、美久は確実に的の中心に当てつづけた。