テ・ン・コ・ウ・セ・ヰ……サヤカ編?


作:つるりんどう


この作品は、インクエストのシェアワールド「TSウィルス……感染すると、精神が異性に変わってしまうウィルス」に投稿された、シャイニングフィンガー5さんの作品「テ・ン・コ・ウ・セ・ヰ」をサヤカの立場から書かれた作品です。

ある日クラスに転校してきた男子転校生アキラが、実はこのウィルスに感染した女性だとヒロシに知られた場面から、つるりんどうさんの作品は始まります。



とうとう秘密を知られてしまったアキラだったが、特に動揺はしていなかった。
いや、逆にこうなった事態にほくそえんでいたくらいだ。
そして、どうやってこの事態を楽しむかと色々と考えていた。
放課後、アキラは秘密を知られた相手……ヒロシと付き合うことになったらしいと噂になっている西基サヤカを校舎の裏に呼び出した。


「どうしたの? アキラくん」


むろん、サヤカはアキラが女であるということも、ウイルスに感染しているということも知らない。
ただ呼び出されたので、人のいい彼女は時間通りにきただけだ。
ほとんどの運動部が練習を終えている時間ということもあって、周りには誰もいない。


「ああ、ちょっと用事があってね」
「用事? 何なの?」


サヤカがそう答えた途端、アキラはサヤカの腕を引っ張るとそのまま抱きしめ、


ブチュ


いきなりディープキスをかました。


「うぐっ!?」


当然そんなことを予想だにしていなかったサヤカは、目を見開いて驚くが、その後すぐに慌てて抵抗し始めた。


チュォ


そんな音がしてようやく二人の唇が離れるが、サヤカの唇からは抜き取られたアキラの舌先から伸びる唾のアーチができていた。


「ぶはっ、はぁっ……。
 や、やめてよ、何てことするのっ?」


サヤカは顔を真っ赤にして抗議する。


「いや、ちょっと明日手伝ってもらおうと思ってね」
「い、一体何をいってるの……。
 こんなことするなんて酷いっ。あたしがヒロシくんと付き合いだしたの知ってるんでしょ?」


サヤカは、自分の顎に垂れたアキラの唾を指で拭いながら涙目になった。


「ふふ、もしかしなくても、ファーストキスだったのか?
 安心しな、俺はホントは女だからよ」


しかしアキラは余裕の笑みでそういうと、サヤカの手を取り、自分の股間に当てさせた。
さわさわと触るうちに、サヤカの表情が急に変わる。


「ホントに……ホントにアキラくんって女の子なの……?
 どうして、そんな……」
「どうしてって、頭の中が男になっちまったからさ。
 それに体は女で、心は男ってすっごくいいんだぜ。
 さ、サヤカも同じ仲間になろうぜ。もうすぐ、お前も生まれ変わるんだ」
「やっ、やめてっ」


サヤカは、ドンッとアキラを突き飛ばすとふらふらと離れた。


「何怯えてんだよ、同じ女同士じゃねぇか?」
「まさか……もしかして、アキラくん、あのウイルスに感染してるの?」


サヤカは何に怯えているのか、震えだした。


「その通りだよ」
「じゃっ、じゃあ……」
「そうだな、さっきので直接感染って奴?
 サヤカもしっかり感染しちまってるよ。俺の唾しっかり飲ませてやっただろ?」
「な、なんてことしてくれたのよっ、あたし、女の子として好き人がいるのよっ。
 それに女の子としての青春、しっかり楽しみたいのに…あんなウイルスに感染させるなんて!」
「感染したかどうかなんて分かんねぇよ。
 あのウイルスって空気感染はあまりないみたいだしな。元々弱いウイルスらしいし」
「それは……そうかもしれないけど…」
「それより、このウイルスって感染するとじわじわってくるんだぜ。
 それがたまねぇのよ。サヤカ、なんかおかしくなってきてねぇか?」


その不気味さを含んだ笑みにサヤカは、全身に鳥肌が立つのを感じた。


「や、やめて、なんでこんなことしたのっ?
 あたし、あんなウイルスに感染なんてしたくないっ」
「ふふ、残念だけどさあ、俺の秘密、ヒロシに知られちまったんだな、これが。
 だから代わりにあんたにも感染してもらうことにしたんだ。
 そうすりゃ、あいつも俺の秘密をバラまく気にもなれねぇだろうしな。
 俺さ、普段はこのまま男として振舞っていたいんだ、だからそのための口封じさ。
 サヤカ、お前が感染することになったのは全てヒロシのせい、分かったか?」
「そんな……」


サヤカは顔を真っ青にしていった。

 

それから三十分。
サヤカは体育用具室にアキラによって連れ込まれていた。
男子を軽くのしてしまうほどの腕であったから、女子一人を連れ込むのは簡単だったようだ。


「うぷぁ、はぁはぁ……。
 もうやめてよ、いいでしょう?」


サヤカは顔を真っ赤にして口を離した。
あれから、何度もディープキスをきめられ、サヤカは呼吸が荒くなっていた。


「ふふ、そろそろウイルスの影響が出てきてもいいころなんじゃねーか?」
「そ、そんな……」


サヤカは、心配そうにアキラを見つめる。
すると、アキラは意地悪そうな表情で、ついとサヤカの胸を突いた。


「あ、あんっ」


サヤカは、たまらなそうな声を上げるとふらっとマットに倒れこむ。
そして、サヤカの胸が揺れた。


「あ、あれ……あ、あはっ」


サヤカの表情に妙な変化があった。


「何これ……なんか胸が変……。
 こ、こんなに存在感あったっけ」


サヤカは倒れたまま首だけ起こすとブラウスの突起を見つめる。


「胸……こんなに大きかったっけ……?
 不思議……なんか、自分の胸じゃないみたい………」
「ふふ、効いてきたようだな」


アキラは、にやりとする。


「どうしたのかしら、あたし……。
 すごい違和感が全身を……ああっ」


サヤカは身を起こしただけで、揺れる胸の存在感に目を瞑って喘いだ。


「む、胸が揺れちゃったよ……はは」


サヤカは一瞬人が変わったような声が呟いた。


「くくっ、どうだい、サヤカ?
 男性化が始まった気持ちは?」
「だ、男性化って……そんな、まさか、あたし……」


まだ女の子のままの意識が強いのか、サヤカは戸惑いを隠せない。


「しっかり直接感染させてやったんだ、お前は絶対に免れないぜ。
 精神の男性化は……そうだなぁ、明日の昼には完璧に変わってるぜ、お前」
「いやっ、そんな怖いこといわないで!
 あたしは、こ、このままでいたいのにっ」
「体はこのままさ、変わるのは気持ちだけ。
 気持ちいいぜ、心は男、体は女。最高さ、自分だけで興奮できるんだからな」
「そんな……」


サヤカは呆然として呟いた。


「俺のときもそうだったぜ。
 最初は嫌悪感が……途中からは気持ちがまぜこぜになってたまらねぇんだ。
 今夜、しっかりと楽しむんだな、サヤカ。女としての最後の夜を……な。
 明日は朝から俺のところにくるといい、女同士のよさっていうのを教えてやるよ。
 キス以外にもな」


そういうとアキラは体育用具室から出ていった。

 

「はぁはぁ……」


それからサヤカは全速力で家に帰った。
だんだん全身の違和感が強まってくる。
スカートが妙に頼りなくて、ブラジャーの感覚が今日初めて付けたかのように落ち着かない。


「どうなっちゃってるの? あたし……」


ヒロシに相談しようかと迷うサヤカだが、まさかアキラにウイルスをうつされたかもしれないなどとはいえず、そのまま着替えることにした。


「なっ、なんだ、この格好……。
 だっ、誰だ、この女っ!?」


タンスを開けて、いつも通り鏡を覗き込んだサヤカだったが、突如映った自分の姿に叫んでしまった。
それは……いつも通りの自分なのに…


「って……あ、あたしじゃない。
 あ、あれ………あたし、こんなにかわいかったっけ……?
 なんか、自分が自分じゃないみたい……」


サヤカは、自分好みの女がそこにいるような気がしてうっとりとする。


「って、違うっ。
 何やってるのよ、あたしっ。
 まさか………これって、あのウイルスの影響なのっ!?」


その歪んだ自分の表情に我に帰るサヤカ。


「やだ……やだ、だんだんおかしくなってきてるの、あたし?
 こんなの嫌よ。あたしが男性化するなんて……」


サヤカは不安にかられながらも、鏡を見ないようにして着替え始めた。
最初は当たり前のように外していったボタンだが、途中から指が絡まったようになって外せなくなる。


「何これ……ボタンって、こんなだっけ?
 あれ、あれっ!?」


やることやる度に感覚の違いが浮き出てきてサヤカは混乱し始めた。


「あれ…胸が……。
 ブラジャー……やんっ、あたし……。
 むっ、胸がある!」


そして、上半身がブラジャーになったところで、サヤカの目は十分過ぎる大きさをもった胸に釘付けになった。


「あはぁ、や、柔らかい……。
 こんな感じなのか、女の胸は……。
 あた、し……に、女の胸が……」


サヤカは上気したまま、胸をブラジャーの上から確かめるように揉んでいく。


「んふぁ、こんなの初めて……だ。
 気持ちいい〜」


サヤカは少し蟹股になりながら、鏡を振り返って、胸を揉む自分の姿に惚れ惚れした表情になる。


「ああ、もうたっちまいそう……」


そして、股間の何か探すようにスカートに手を突っ込んだ瞬間……


「おあっ、ない、なくなってるっ!
 オレの、あれが……ないぞっ」


あるはずの逸物を探すように股間をショーツ越しに撫で、驚く。


「そっか、へへへ……。
 オレ、今は女だっけ……」


そして、その手の動きが納得のいったように、味わい確かめるような手つきになると、サヤカは鼻の下を伸ばして笑った。


「ああ、オレ、女なんだ……」


といいながら、スカート+上半身ブラジャーだけで胸と股間を触りまくるサヤカ。
その姿は当に普段のサヤカとは別人だった。


「ああ、こんないいものだなんて……」


といったとき、サヤカの携帯のメール着信音が響く。


「ちっ、こんなときにメールか……。
 あ、あれ……?」


いつも聞きなれた着信音にようやく自分を取り戻し、サヤカは自分がやっていたことに戦慄した。


「オ、オレ……じゃねぇ……じゃないでしょ!?
 あ、あたし、一体何してるんだ……何してるの……?
 ウソ、ウソよ……そんな……。
 あたし、西基サヤカよね? なのに、なんであたし、他人になったみたいな気分になるのっ、怖い、怖いよ。
 あたし、ウイルスに冒されちゃった……」


サヤカは、メールも見ず、鏡に映る乱れた自分の姿に震えていた。

 

その後もどんどんおかしくなってくる自分に打ち震え喜ぶサヤカ。
スカートのまま胡座をかき、長い髪を落ち着かなさそうに触る姿は女になりたての男のようだ。


「オレ………うっ、あ、あたし、変だよ。
 ここに、チ○コ……うっ、男の子のモノがあったような気がしてきちゃう……。
 あたし、生まれつきの女の子のはずなのに……どうしちゃったのよ、あたし!?」


サヤカは、がくがくと震えながら、携帯を握る。
そのときだった、携帯の着信音がしたのは、


「だ、誰?」


サヤカが恐る恐る覗くと何時の間に登録したのか、李居アキラだった。


「そんな……アキラくん!?」


だが、動揺とは裏腹に電話に出てしまうサヤカ。


「……もし、もし?」
「よっ、サヤカ?
 ふふ……そろそろ大分男性化が進んできたんじゃねぇ? もしかして、完璧男性化しちまったかぁ?」
「う、うるせぇっ、そんなこと、あるわけないだろっ!」
「ははは、口調も既に男だな」
「あ、いや………こ、これは…………。
 う、ううん、ち、違うのっ! オレ、ち、違っ、あたし………」
「いやー、うれしいぜ。仲間ができてよ!
 お前には俺のウイルスを感染(うつ)したんだ。同じ株だから、サヤカ、お前も俺みたいになるんだぜ」
「そんな……ウソ、でしょ……?」
「ウソなんかじゃねぇよ! 俺も、俺に感染させた奴そっくりになっちまってる自覚はあるからなあ。だから、サヤカもさあ、もうすぐ俺みたいなオトコ女になっちまうのさ」
「オレ………あ、あたしも……頭の中がアキラくんと同じになっちま……なっちゃうっていうの?」
「いや、頭ん中まで全く同じになるわけじゃねぇって。
 俺も『李居アキラ』として記憶はそのまま残ってるみてぇだしさあ。ただ、女だったときの記憶がすっかり色褪せちまって、なんつーか、まるで他人の記憶みたいに感じるようになっちまうだけだって!」


今まさに、身に覚えのあるサヤカは、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「そ、それで、どうなっちゃうんだよ……?」
「でな、他人の記憶に書き換えられるっつー感覚はねぇんだけど、自分は男だっていう自覚ができてきてよぉ、好みとか性格とかは完璧に変わっちまうんだよ!」
「やめてよ、そんなこいというなっ!」
「ふふっ、お前も、もうすぐそうなるのさ。
 西基サヤカとしての記憶がどうでもよくなってきて、新しい自分に生まれ変わるんだ!
 気持ちいいぜぇ、好きだった男のことも、女だったときの趣味もどうでもよくなって、自分が他人みたいに思えるようになっちまうんだ。
 そう、まるで、自分の体を乗っ取ったような征服感に満たされるのさ」
「オレ、俺が……そんな……」
「なあ、今から電話越しエッチゲームしないか? サヤカ」
「えっ!?」
「イっちまったときにはもう生まれ変わっちまってるっていうゲーム。
 いいだろ? 俺も最初にイっちまった瞬間に、全ての感覚がオトコ女になっちまってたんだぜぇ?」
「やめろ……や、やめて………そんなの、いやっ!」
「そんなこといって、本当は俺の音聞きたいんだろ?」


そういうアキラの言葉に、サヤカは思わずごくりと唾を飲み込んでしまったのだった……。