第四幕 その5
JuJu


 俺は真緒の目の前まで歩き、その場にしゃがみ込んだ。
「真緒……」
 彼女のスカートを見つめながら催促をする。
 真緒は俺の望みを察し、スカートの裾をつかんだ。
「どうぞ」
 真緒の声と共に、修道服がゆっくりと捲り上がる。
 かすかな衣擦れ(きぬずれ)の音とともに、真緒の脚が少しずつあらわになってゆく。淫魔は匂いにも敏感なのだろうか、スカートの中にこもっていた甘い女の香りが、あたりに漂っていくのを感じた。
 ついに、真緒の脚があらわれた。
 今まで遠くから盗み見る事しか出来なかった、楚々(そそ)とした真緒の脚。その脚が、いま、俺の目の前にある。
 俺は指をワシの様に広げて、指先でふとももに触れた。
「あっ……」
 触れられた途端、真緒がビクッと震える。だが、驚きの声を上げただけで、俺の手を避けようとはしない。
 そうだ。何をしてもこの脚は逃げない。この脚は俺の物だ。自在にしていいのだ。
 指先だけでは我慢ができなくなり、手のひらを押しつけた。手のひらを通して、肌の感触が伝わって来た。味わうように手を這わせる。
「真緒、もっと上まで捲るんだ」
「はい……」
 真緒が小さく頷く。スカートを握る手に、力がこもる。
 ふと、こんな二人の姿を誰かが見ていたら、なんと思うだろうかと考えた。
 スカートを捲って脚を差し出し、足元にいる淫魔にされるがままになっている修道服姿のシスター。一方、そのシスターの脚を夢中で触っている、ボンデージに身を包んだ女の淫魔。
 だが、そんな考えはすぐに捨てた。ここには二人だけしかいない。真緒の願いで、礼拝堂の明かりは消してある。すべての扉は鍵が掛けられ、すべての窓はカーテンが閉まっている。聖像に灯されているロウソクの光はここから遠く、明かりとしての役割は果たしていない。
 明かりは唯一、雲から抜けて再び照らし始めた満月だけだった。天井に近いステンドグラスから、月の光が入って来る。それだけだった。ここで何をしても、真緒と俺だけの秘密なのだ。
 暗闇に目が慣れたためか、大気が冷たく澄んで月が輝いているのか、あるいは淫魔の特性で夜目が利くのか。ステンドグラス越しの月明かりだけで、俺にとっての照明は充分だった。
 真緒はパンツが丸見えになるほどスカートをまくった。
 俺は真緒の左脚を両手で掴むと、ふとももに口を寄せた。キスをし、吸い付き、舌でなめ回す。
 突然、真緒の事が気になって来た。顔を上げて、真緒の顔をさがす。だがそこには、真緒の後ろ姿しかなかった。夢中になっていたために、いつの間にか彼女の後ろに回っていたのだ。
 真緒の視線がない。俺の行動を彼女は見ていない。その事が、俺を大胆にさせた。
 真緒に触れている手を、上に向かって滑るように這わせた。手は真緒のパンツに当たった。
 俺は膝をついて中腰になると、彼女のお尻の感触を、パンツの布越しに確かめる。
 俺は立ち上がると、さらに手を上に滑らせた。腰まで捲り上がっていた修道服の中に腕を入れた。
「服が皺になるが許せ。なるべく汚さないようにするから」
 真緒の修道服はワンピースのように、上下が一体につながっていた。
 その服の奥まで、腕を押し込んでゆく。
 背後から手を回し、真緒を抱きしめる。
 俺の胸が、真緒の背中に当たる。真緒の胸まで腕を伸ばそうとすると、どうしても俺の胸が当たってしまうのだ。
 指先に布の感触を感じる。これがブラジャーだと言うことはすぐに分かった。
 ブラジャーごしに真緒の胸を触る。
 俺は手探りで真緒の胸の下に指を置いた。一気にブラジャーをずりあげる。
 真緒の胸が出てきたのが、手に当たる感触で分かった。暖かくて、柔らかくて、それでいて弾力がある。今まで触ったことのない、不思議な感触がする。その感触は心地よかった。
 真緒の胸をもっと味わうために、俺は真緒に寄り添った。彼女の肩に顎を載せて、俺の胸をいっぱいまで彼女の背中に押しつける。
 とつぜん、指が突起に当たった。乳首だ。俺は手探りで乳首をつまんだ。乳房より若干かための感触がある。
「あっ……」
 真緒の声が出る。
 それはいつもの真緒からは想像も付かない、女の吐息だった。
 それが引き金になる。もう、手で感触を味わうだけでは我慢が出来なくなっていた。
 俺はすばやく真緒の正面に回った。
 真緒は律儀に、まだスカートの端を両手で掴んでいた。
 俺は真緒の手からスカートを奪うと、修道服を一気に胸までまくり上げた。
 真緒の胸は大きくもなく小さくもなく、真緒の体にちょうど合った大きさだった。
 俺は真緒の胸に向かって手を伸ばした。
 細くて長い、女の指が目に入った。
 この女の指が、今の俺の指だ。
 この指で、これから真緒を犯すんだ。
 それは、今の俺の体が女だと言うことを思い出させた。
 女同士で、嫌らしいことをしているのだ。
 その背徳感が、俺の情熱を加速させる。
 俺は、おそるおそる真緒の胸に手を近づけた。
 つばを飲み込む。
 そして、一気に真緒の胸を鷲掴みにした。
 一本一本の指が、真緒の胸にのめり込む。
「痛いっ……」
「す、すまん!」
 あわてて手を離す。どうやら強く掴みすぎたようだ。
 今度は、やさしくなでるように胸を触った。
 本当は、鷲掴みにして乱暴に揉みしだきたいのだが、真緒が痛がるのではしかたがない。
 真緒は顎を引き、目を閉じ、わずかに眉を寄せ、唇を噛んで、羞恥心に堪えている。
 真緒の胸を触っているうちに、次第に乳首が立って来た。
「乳首が立ってきたぞ?」
「……。敏洋さん、意地悪です……」
 俺は、真緒の乳首を唇でくわえた。舌先で乳首を突っつく。
 しばらく胸を弄んだ後、未練を残しつつ乳首から口を離す。ずっと触っていたいが、本当の目標はさらに先にある。
 俺は両ひざを床についた。
 ひざ立ちの姿勢で、真緒の腰に両手を伸ばし、彼女のパンツに手を掛ける。
 再び真緒の体が、ビクッと震えた。
「そこは……。駄目です、敏洋さん……」
 俺は手を止めた。
(やはりな、これ以上は真緒がかわいそうだ)
 俺は真緒のパンツから手を離した。
 そんな俺の心を見透かしたのか、真緒が小さくつぶやく。
「違うんです。続けてください」
 やめろと言ったり、続けろと言ったり、真緒の言葉は釈然としない。
 俺は、問いただすように真緒を見上げた。
 真緒はしばらく、俺の顔を見つめ返していた。だがやがて、俺の視線に耐えきれなくなった様に視線を斜め下に外す。
 頬がますます赤くなる。
「決めてますから! この体は、敏洋さんの物だって。だから、続けてください。
 ただ……。
 笑いませんか?」
「笑う?」
 真緒は黙って頷く。
 俺は、真相を確かめるために、真緒のパンツを下ろす。
 そこには、綺麗な真緒の姿があった。つまり、真緒のあそこに、毛が生えていないのだ。
「大丈夫だ。真緒のあそこがよく見られて都合がいいくらいだ」
「……敏洋さん、スケベです」
「俺は客観的な利点を言ってなぐさめたつもりだが?」
「敏洋さんはスケベ過ぎです……――あんっ!」
 真緒がしゃべり終わる前に、俺は真緒のあそこに指でふれた。
 彼女のそれは、彼女が一番大切にする場所を守るように、堅く閉じられていた。
 さっき胸を触った時は、いきなり欲望をぶつけすぎて真緒を痛がらせてしまった。だから今度は慎重に、丁寧に触った。
 やがて、真緒のあそこの裂け目が濡れて来た。
 女となった俺の細い指で、真緒の女をいじる。
 肉体が女になったせいだろうか。男の時と比べ、指の感度が高い気がする。
 俺が指を動かすたびに、真緒の脚が震える。俺の指の動きに合わせて、真緒の体がよがる。そのために、自分の指で真緒の体を操っているような気分になって来る。
 俺は真緒の顔を見上げた。
 そこには、修道服を胸の上までまくり上げておっぱいをさらし出し、頬を紅潮させ、切ないため息をはく、真緒の姿があった。
 時折、俺の指から発する快感に、脚が崩れ落ちそうになる。それを必死に堪えている。
 今まではただの妹の様な存在だと思い。さきほど脚を見た時は彼女に欲情した。そして今、俺がもたらす快感に堪えている真緒を見て、心から可愛いと思った。
 俺は立ち上がると、再び乳首に口を近づけた。唇で乳首を弄る。そして、左手を伸ばし、真緒のもう片方の胸を掴んだ。さらに右手を再び真緒の股間に伸ばし、あそこをまさぐる。
「ああんっ、そ、そんな! 一度にそんなにされたらっ! わたしっ……だ、駄目です! やめてください! わたし、変になっちゃいますっ!」
 真緒はそう言っていたが、体は避ける様子はなかった。
 俺の中の男の心が暴走する。
 指を入れないように注意しながら、真緒のあそこをなぞり続けた。あそこからあふれ出た粘液が指にからみつく。
「本当にだめです! わ、わたしっ!! ……もう……!!」
 真緒の体が崩れ落ちる。
 俺は、慌てて真緒を抱きかかえた。
 真緒は俺の胸の中で、体を反らせながら震えていた。激しい息をしている。
「大丈夫か真緒!? すまん。俺としたことが、つい夢中になってしまい、おまえの事を考えられなくなっていた」
「……」
「大丈夫か?」
 俺は真緒を離すと、肩に手を当てながら訊ねた。
 真緒は真っ赤な顔をうつむかせて立っていた。なんとか息を整えているようだが、まだ息が激しい。
「おい。しっかりしろ、真緒」
 俺の声を聞いて、真緒がわずかに顔を上げる。うつろな上目遣いで、俺を見上げる真緒。
 その目には涙が溜まっていた。
「真緒?」
 彼女の涙を見て、俺は固まってしまう。
「……敏洋さん……」
 真緒は、潤んだ甘える瞳で俺を見つめた。その唇は、何かを訴えるように、細かく震えている。
 そして、真緒はいきなり抱きついて来ると、俺の大きく膨らんだ女の胸に顔をうずめながら、うれしそうでいて、それでいて恥ずかしそうに叫んだ。
「敏洋さんっ!! 愛してますっ!!」


第四幕その6へ