「ふふふ、おねえちゃん、元の姿に戻りたい?」
「……わん」

「元に戻ったら、あたしのことを妹の渚として扱うのよ。
 もしあたしに逆らおうとしたらまた犬にしちゃうからね」

「……わんわん」
「ふふふ」

 俺は子犬の姿のままの美波さんを、美波さんの皮の中に放り込んだ。
 ひしゃげていたその姿がぶくぶくと膨れていく。
 しばらく後、美波さんは元に姿に戻っていた。

「はぁはぁはぁ」
「うふふふふ、お帰りなさい、おねえちゃん」

 両手と膝をついた四つんばいの格好のまま立ち上がろうともせずに、美波さんは荒い息をしている。

「……渚を、妹を返して」
「何言ってるの、おねえちゃん、あたしならここにいるじゃない」
「あんたなんか、妹じゃない!」
「あたしが渚だよ。
 あたし以外の渚はもうどこにもいないよ。
 そうでしょう、おねえちゃん。
 それとも違うって言うの?」