「うわぁあ……すっごーい、和也ったらほんとに祐美ちゃんになっている」
「これでいいのか、麻美」、
「うーん、その声何とかならないの?」
「あ、こ――こほん……これでいいか? 麻美」

 声も祐美ちゃんの声に変える。

「『麻美』なんて呼び捨てしないっ。あたしのことは、必ず『おねえちゃん』って呼ぶのよっ」
「わ、わかったよ……」
「『わかったわ、おねえちゃん』、でしょ?」
「わ、わかったわ……お、おねえ、ちゃんっ」
「いや〜んか〜わいいっ! 本物の祐美ちゃんも、こんなだったらいいのになぁ」

 ……くううっ、今から麻美のことを『おねえちゃん』って呼ばなきゃいけないのか……何だか尾てい骨の辺りがむずむずする。

 顔を赤らめてたどたどしく返事した祐美ちゃんの姿の俺に、麻美は身悶えして喜んだ。

「祐美ちゃんって、お前んちによく来るのか?」
「うん、たまに遊びにくるんだけど、いつもぶすっとしててちっとも愛想よくないし、ケータイばっかり眺めているし……面白くないったりゃありゃしない。それにね――」

 くどくどと、自分が無視されていることを話し始める麻美。
 麻美の奴、話が何か愚痴っぽくなってきたな。でも、ほんとはこの子と仲良くなりたくて、仕方ないみたいだ……

「うふふ、でも和也ったらほんとにかわいい。そうしていても全然違和感ないじゃない」
「そ、そう……?」

 俺は、今の俺よりもはるかに背が高くなった――いや、俺のほうが小さくなったんだが――麻美を見上げると、祐美ちゃんの声でそう問いかけた。

「……っていうか、なんか本物よりずっとかわいく見えるし…………えいっ!」
「え……? きゃあっ!!」

 掛け声とともに、麻美の右手が閃光のように動いた。同時に俺のはいているスカートが、ぱっとめくれ上がる。
 俺は反射的にスカートの裾をおさえ、その場にしゃがみ込んだ。

「な、何すんだよっ!」
「か〜わいいっ、ほんとにかわいいっ!」

 抗議の目で睨み返したが、麻美は笑いながら、小さくなった俺を抱きしめた。