二階に上がって由紀さんと二人で研究室に入ると、部屋の中には摩耶ちゃんがいた。

「あ! 先輩、社長の用件って何だったんですかあ。あれ? その娘は」

「ああ、紹介するわ。今度研究室で働くことになった小田みゆきちゃんよ」

「そうなんですか、生駒摩耶ですぅ、よろしくみゆきちゃん……ってあれ? あたしあなたと何処かで会ったかなぁ」

 僕を見て何かを感じたらしく、摩耶ちゃんが僕の目をじっと見詰めながら言った。

 由紀さんは右手を唇に当て、肩を震わせながら笑いをかみ殺している。

 くっ、くっくっくっ

「由紀さん、もぉ、何とか言ってくださいよ」

「え?」

 摩耶ちゃんがきょとんとしている。

「摩耶、この娘って俊行さんなのよ」

「え? ええ? そんな、うそぉ」