イラスト:◎◎◎さん

   
    
 黒い夏

  作:toshi9


「ごめん、遅くなった。待ったかい?」
「大丈夫だ……よ。それより外は暑かったでしょう。
はいこれ、よく冷えてるよ」
「お、おう、ありがとう。あれ、お前は」
「うん、あたしは飲んじゃったから。美味しいよ」
「そうか、じゃあ早速」

 ガタッ

「あれ? 何か音が」
「ネズミでしょう?」
「それにしてはやけに大きな音だったなあ。ドレッサーのほうだったぞ」
「大きなネズミなんでしょう。さあ、早く飲んで」
「コーラかい? ん? やけにドロドロしてるな
……うぐぅ」





「これでここを切って……ふふふ、出てきて出てきた。すっかりゼリーになっちゃって。どうだいあいつは僕のことを君だと思い込んで全く疑わない。君が信じてたあいつの愛なんてそんなものさ」

 そう言いながら女がドレッサーを開けると、中から子犬が飛び出してきた。

「きゃん、きゃんきゃん」
「うるさいなあ、体を返せとでも言ってるのかい? 駄目だよ。これはもう僕のものだ。君は愛する彼と一緒になるがいいさ。一つの体にね」

 そう言うと、女は子犬を中身を無くした男の皮の中に放り込んだ。
 膨らみ始める男の体。そして女は男に服を着せる。

「か、かえして……」
「あらあら、声もすっかり男になっちゃって。さてと」

 女は男の体から出てきたゼリーを無理やり男の姿へと化した彼女に飲ませ始めた。 

 ごくっ、ごくっ

「うふふ、これでいい。この美しい体は僕だけのもの。君はそいつに成りきってしまうんだ。そしてせいぜい僕のことを愛してくれよ。元の自分の姿をした僕のことをね」


(了)